AIに仕事が奪われることをネガティブに捉えるのでなく、AIとどのように仕事に取り組んでいくのか、AIにどこまでやってもらえるかを、前向きに考えていく本連載。第1回は、データサイエンティストの未来像を探る。
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AIに仕事が奪われると言われ続けていましたが、2023年、ChatGPTをはじめとした急速な生成AIの進歩により本当に一部の業務がなくなってしまいそうです。そこで本連載では、仕事が奪われることをネガティブに捉えるのでなく、AIとどのように仕事に取り組んでいくのか、AIにどこまでやってもらえるかを、前向きに考えていきたいと思います。連載第1回は、筆者の職業、データサイエンティストの未来像を探ります。
データサイエンティストは、ビッグデータを活用して価値を創出する専門家です。データ収集、整理、分析、可視化など、さまざまな業務をこなす必要があります。そのため、データサイエンティストに求められるスキルは多岐にわたります。具体的には、プログラミング、統計学、機械学習、データビジュアライゼーションなどが挙げられます。
近年、データサイエンティストの業務を効率化し、創造性や協働性を向上させるプロンプトプログラミングという新しい技術が登場しました。特に、OpenAIがリリースした「GPT-4」によって、プロンプトプログラミングがさらに注目を集めています。プロンプトプログラミングは、AI技術を活用して自然言語で指示や質問を行い、データを扱う作業を効率化するものです。この技術が登場した背景には、AI技術の発展、特にGPT-4のような強力な自然言語処理モデルの登場と、データサイエンティストの業務効率化や創造性向上のニーズがあります。
プロンプトプログラミングは、従来のプログラミング言語を使った開発とは異なり、自然言語でAIに指示や質問を行うことができます。これにより、データサイエンティストはより直感的に業務を行うことが可能になり、効率化だけでなく創造性や協働性も向上します。また、プロンプトプログラミングを活用することで、データサイエンティストのスキルや知識をより広範囲に活用することができるようになります。
では、プロンプトプログラミングがどのようにデータサイエンティストの業務効率化に寄与するのでしょうか。
プロンプトプログラミングの導入により、データサイエンティストの業務は大きく効率化されます。具体的な業務例を通じて、プロンプトプログラミングがどのようにデータサイエンティストの業務を効率化するのかを解説していきます。
プロンプトプログラミングを利用することで、データソースや条件を指定すればAIが自動的に必要なデータを抽出、加工することが可能になります。これにより、データ収集や整理の作業が大幅に省力化され、データサイエンティストはより分析に専念することができます。
従来のプログラミングでは、データ分析に必要なコードを手動で書く必要がありましたが、プロンプトプログラミングでは、自然言語でAIに指示を出すことで、それに準ずるプログラムを自動的に生成することができます。これにより、データ分析作業の効率化が図られます。現在は自然言語からデータを直接分析できずプログラミングの支援となっていますが、今後はデータ分析さえも自然言語で指示できるようになると期待されます。
分析結果と、クライアントビジネスの特徴をインプットすると、AIが自動的にクライアントが注目すべき内容を強調し、分かりやすくレポートします。これにより、データサイエンティストは手間をかけずに効果的なレポーティングが可能になります。さらに、プロンプトプログラミングでは、言語の指示で画像なども生成できるため、デザインの体裁まで整えた最終版の出力も今後は可能になってくると考えられます。これにより、データサイエンティストの業務がさらに効率化され、クライアントに対するレポーティング品質も向上することが期待されます。
プロンプトプログラミングによって、データ収集・整理、データ分析のプログラミング、レポーティングといったデータサイエンティストの主要業務が効率化されます。自然言語でAIに指示、質問、対話ができるようになったことで、業務の簡素化が実現し、データサイエンティストはより高度な分析や戦略立案に時間を割くことができるようになります。
プロンプトプログラミングを活用することで、データサイエンティストの創造性や協働性が高まる業務が実現されます。従来、社内に蓄積された知見やデータは散在しており、効率的にアクセスすることが困難でした。しかし、プロンプトプログラミングによって、人に話し掛けるかのように簡単に社内の知識を収集し、活用することが可能になります。
例えば、過去の消費者の反応や購買データ、店頭販促物など制作物の評価など、さまざまなデータが社内に蓄積されていると思います。プロンプトプログラミングを活用することで、データサイエンティストはこれらのデータに簡単にアクセスし、新たな戦略の立案や効果的なターゲティング、制作物のアイデア生成など、創造性を高める業務に取り組むことができます。
続いて協働性の観点です。データサイエンティストの業務内容は専門性が高く、他の職種の人への説明も専門用語が多くなるなど、難しくなってしまうことが課題でした。しかし、プロンプトプログラミングの導入により、AIがデータサイエンティストの専門知識を理解し、質問者の理解度や背景に合わせて丁寧に説明することが可能となります。これにより、他部署やチームとの協働がスムーズに進むだけでなく、企業全体のデータ活用が促進され、より効果的な意思決定が可能になります。
さらに、プロンプトプログラミングを活用することで、データサイエンティストが他部署からの質問や要望にもスピーディーに対応できるようになり、企業内での情報共有や協業がスムーズに進むでしょう。これにより、データサイエンティストはより高度な分析や戦略立案に専念できる時間が増え、企業全体の競争力が向上することが期待できます。
このように、プロンプトプログラミングを活用したデータサイエンティストの創造性、協働性の向上は、企業全体のデータ活用力を高め、イノベーションを加速させることにつながります。今後も、プロンプトプログラミングの技術が進化し、データサイエンティストの業務効率化や新たな価値創出が期待されています。
これまで記載した通り、プロンプトプログラミングの登場により、データサイエンティストの業務効率化や創造性、協働性の向上が期待されています。
プロンプトプログラミングに精通することは必須条件です。これにより、AIと自然言語で効率的に対話し、業務を推進することが可能になります。また、AIから出力された内容を理解し、適切に活用するためのデータサイエンスの基礎力が重要です。
ただし、それだけでは不十分です。データサイエンティストが今後さらに価値を発揮するためには、以下のようなスキルや姿勢が求められます。
ビジネスと技術の融合力がますます重要となっています。業界知識の習得やビジネス戦略の理解、技術ロードマップとの整合性、さらに技術選定と活用方法の見極める能力も不可欠といえます。しかしこの能力を身に付けることにより、データ解析の方向性を決定し、ソリューション開発におけるデータ活用やAIの組み込み優先順位を設定することができます。データサイエンティストには、技術の進化とビジネス戦略のバランスを取ることが求められるのです。
コミュニケーション力も重要なスキルの一つです。データサイエンティストは、他の部署やチームと連携して業務を遂行するため、円滑なコミュニケーションが不可欠です。特に、技術的な内容を分かりやすく伝えるプレゼンテーション力や、異なる専門分野のメンバーと協働する能力、さらには人をリードしプロジェクトを推進していく力が求められます。
前向きな姿勢で挑戦し続けることが大切です。データサイエンスの分野は日進月歩で進化し続けており、新しい技術や手法が次々と登場しています。そのため、データサイエンティストは自ら進んで新しい知識を学び、実践することが求められます。
筆者自身もデータサイエンティストです。AIの高度化に日々驚かされますが、新しいスキルを身に付け、業界の変化にうまく対応していくことで、今まで以上に価値のある仕事ができると信じています。データサイエンティストの皆さん、一緒にポジティブな気持ちで頑張りましょう!
株式会社電通デジタル 執行役員 データ&AI部門 部門長
東京大学松尾豊教授のもと人工知能(AI)を専攻
AIとビッグデータを活用し、広告の自動生成、視聴率の予測など、多数のマーケティングソリューションを開発。「ワールドビジネスサテライト」「NHK ワールド」など多数メディアに出演。主な著書『売れるロジックの作り方』(宣伝会議)『AI×ビッグデータマーケティング』(マイナビ出版)など。
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