用語「フランケンシュタイン・コンプレックス」について説明。自己意識を持つ機械(AI/ロボット)が暴走して人間に反逆するなど厄災をもたらすようになる可能性に対する根拠のない恐怖を指す。
人工知能(AI)やロボット工学の分野においてフランケンシュタイン・コンプレックス(Frankenstein Complex)とは、自己意識を持つ機械(AIやロボット)が暴走して人間に反逆するなど厄災をもたらすようになる可能性に対する根拠のない恐怖のことである。この恐怖感は、現在のAIに対する脅威認識の一部ともなっている。
この表現は、アメリカのSF作家であるアイザック・アシモフ(Isaac Asimov)氏が1947年に書いた短編小説『Little Lost Robot(迷子のロボット)』で初めて使用された。この小説は1950年に刊行された短編小説集『I, Robot(アイ・ロボット)』にも収録されている。
ご存じのように「フランケンシュタイン」とは、イギリスの作家であるメアリー・シェリー(Mary Shelley)氏が1818年に書いた小説『フランケンシュタイン』のことだ。小説中の「フランケンシュタイン」は、人造人間を作った科学者(博士)の名前である。その作り出した人造人間は醜くおぞましい容姿をしていたため、恐怖感を抱かれて人間に受け入れられないシーンがある。フランケンシュタイン・コンプレックスという表現は、そのシーンのコンセプトを借用している。
具体的な統計データがあるわけではないが、AIやロボットを考えるとき、欧米の文化では「フランケンシュタイン」や反逆するロボットが描かれた映画「ターミネーター」のようなイメージが頭に浮かび、恐怖を感じる人が多いようだ。一方、日本の文化では、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」のような親しみやすく信頼できるキャラクターがAIやロボットのイメージとして一般的ではないかと思う。従って、フランケンシュタイン・コンプレックスを感じる日本人は比較的少ないのではないかと筆者は考えている。そのためか、日本ではAI/ロボットの運用に対してより楽観的であり、その技術がより好意的に受け入れられている雰囲気が感じられる。
ちなみにアシモフ氏は、フランケンシュタイン・コンプレックスに対して、ロボットの安全装置として機能する「ロボット三原則」というロボットに従わせるべき行動原則も提示しており、用語としてはこちらの方が有名である。
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