「マイクロサービスアーキテクチャ」と「ヘッドレスアーキテクチャ」の共通点と違いは? どちらを選べばよいのかマイクロサービスはオーバーヘッドが生まれやすい?

アプリケーション開発や運用に柔軟性を与えるマイクロサービスアーキテクチャやヘッドレスアーキテクチャはどこが違うのか? アプリケーションを構築する際、どちらを採用すべきなのか。

» 2023年08月03日 08時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

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 「ヘッドレスアーキテクチャ」と「マイクロサービスアーキテクチャ」は、アプリケーション開発や運用の柔軟性を高める上で共通点を持っているが、それぞれの開発手法は、異なるユースケースに適している。

 ヘッドレスアーキテクチャとマイクロサービスアーキテクチャはどこが似ていて、何が違うのか。アプリケーションのアーキテクチャを検討する際、どちらを採用すべきなのか。

ヘッドレスアーキテクチャとマイクロサービスアーキテクチャの違いは?

 ヘッドレスアーキテクチャは、アプリケーション開発においてアプリケーションのフロントエンドとバックエンドを分離する設計、開発の手法だ。ヘッドレスCMSのようなアプリケーションの場合、ユーザーがログインして操作するインタフェースと、データストレージやコンテンツ公開フローのようなバックエンド部分を処理するインタフェースを分離して、別々に操作できる。

 ヘッドレスアーキテクチャはコードレベルでコンポーネントを分離するため、開発者がアプリケーションのフロントエンドやバックエンドに直接影響を与えず変更およびデプロイできる。アプリケーションの各コードは独立して動作するため、どちらかを中断することなくシステムを更新できる一方、フロントエンドとバックエンドの両方を別々に維持、管理する必要がある。

 マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なアプリケーションを機能ベースのコンポーネントとして独立したモジュールに分割する設計、開発の手法だ。データベースへの接続を担当するサービス、データベースから取得したデータを処理するサービス、処理されたデータをフロントエンドのUIに送信するサービスなどから構成されるようなイメージだ。

どちらを選択すべきか?

 ヘッドレスアーキテクチャとマイクロサービスアーキテクチャには、以下のような共通点とメリットがある。

  • 開発体験の単純化:アプリケーション全体を変更または再コンパイルすることなく、一部だけに変更を加えることができる
  • デプロイメントプロセスの簡易化:アプリケーションの個々の部分を個別にデプロイできる
  • 高いレジリエンスレベル:個々のコンポーネントの障害を隔離できるため、アプリケーションの他の部分が稼働し続けられる

 しかし、両方は異なるアーキテクチャであり、モジュール化の程度、分離の程度、設計と運用の課題が根本的に異なる。

アプリケーション内部のネットワーク構造はどうなるか

 マイクロサービスアーキテクチャは、ヘッドレスアーキテクチャが行うようにフロントエンドとバックエンドを分割するだけでなく、アプリケーションの多くを分割してモジュール化する。ヘッドレスアーキテクチャの設計よりもモジュールの粒度が細かくなり、柔軟性が高くなる。しかしその粒度は、より困難で複雑な運用の課題につながる。

 マイクロサービスアーキテクチャは通常、内部APIを利用してネットワーク上で相互作用している。同じアプリケーションに属するマイクロサービスが異なるサービス上にデプロイされることを意味する。ヘッドレスアーキテクチャの場合、フロントエンドとバックエンドの両方が通常は同じサーバ上で実行される必要がある。フロントエンドとバックエンドを内部APIで「マイクロサービス風」に相互作用するヘッドレスアーキテクチャを構築することも可能だが、そのアプローチは一般的ではないだろう。

設計の複雑さ、運用上の問題は?

 マイクロサービスアーキテクチャの場合、アーキテクトと開発者が正確にどのようなマイクロサービスアーキテクチャにするか決める必要があり、これも容易な作業ではない。組織は設計時点で、アプリケーションの複雑さとモジュール化の最適なバランスを見極める必要があるためだ。1つのアプリケーションでどの程度モジュールとして機能を切り出すべきか、指標となる業界標準やガイドラインもほとんどない。

 マイクロサービスアーキテクチャを過度に進めると、不必要な開発と運用のオーバーヘッドが増加し、アーキテクチャの柔軟性がむしろ損なわれる可能性もある。ヘッドレスアーキテクチャの場合、フロントエンドとバックエンドを分離するという明確な定義があるため、設計ははるかに容易だ。責任分界点も明確になり、アーキテクチャの変更時やアプリケーションに変更を加えた際、コンポーネント間の関係が失われる可能性も低くなる。

 マイクロサービスアプリケーションの場合、複雑なサーバクラスタ全体で数十のサービスが個別に実行されるような構成も簡単に実現できる。各サービスは、他のマイクロサービスに影響を及ぼす可能性があるため、個別にデプロイ、監視を可能にする必要がある。またアプリケーションが時間とともに成長して変化すると、これらを追跡するのは難しくなる可能性もある。

 その結果、マイクロサービスアーキテクチャは、ヘッドレスアーキテクチャよりも多くの実行サービスが存在することになる。ヘッドレスアーキテクチャはフロントエンドとバックエンドの機能を分離することを目的にしており、シンプルだ。

結論

 ヘッドレスアーキテクチャやマイクロサービスアーキテクチャのアプローチを採用するか決める際は、アプリケーションがどれだけモジュール化を必要とするか考慮すべきだ。需要が絶えず変動するために、アプリケーションに高いスケーリングが要求されるなら、マイクロサービスアーキテクチャを採用することは理にかなっている。一方、アプリケーションが頻繁にスケールアップ、ダウンする必要がなく、単に分離することでメリットを享受できる場合、ヘッドレスアーキテクチャが適しているだろう。

 組織に開発および運用リソースがどれだけあるか考慮することも重要だ。ヘッドレスアーキテクチャは、マイクロサービスよりも開発および運用が容易になるため、リソースを割くことができない組織に適している。マイクロサービスアーキテクチャの採用で得られるコンポーネントのセグメンテーションは洗練されているため、十分なリソースがあるのにマイクロサービスアーキテクチャを選択しない場合は、機会損失につながる可能性がある。

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