Microsoftは、「Azure Quantum Development Kit」のプレビュー版の提供を開始したと発表した。
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Microsoftは2023年9月19日(米国時間)、「Microsoft Azure」で提供する量子コンピューティングクラウドサービス「Azure Quantum」向けの開発キット「Azure Quantum Development Kit」(以後、QDK)のプレビュー版を提供開始すると発表した。
QDKは2017年後半に初めてリリースされ、以降進化を続けたが、複雑さと依存性のために複数の課題に直面していたという。これらの課題に対処するため、開発チームは次の目標を設定し、プレビュー版のQDKを開発した。
プレビュー版としてリリースされた新たなQDKは、以下の原則に基づいて設計されている。
新しいQDKは主にRustで記述されている。この選択により、コードベースはさまざまなプラットフォーム向けのネイティブバイナリに対応できるほか、Webブラウザで実行するためのWebAssembly用にビルドすることもできる。コードベースを小さくし、高速なバイナリを作成できるとした。
開発チームは、学習、インストール、メンテナンス、最終的な製品サイズに関連するコストを削減するために、依存関係を最小限に抑えた。
QDKを用いた開発環境の構築は迅速で容易になったという。製品の開発を効率的に進めることができ、ビルド/インフラストラクチャのメンテナンスも容易になるとした。
QDKに追加される機能は、明確な目的を持ち、大きな価値を提供するものでなければならない。このアプローチにより、製品はより合理化され、将来の開発のための複雑なコードベースは少なくなる。
従来のQDKは、ローカルで180MBを超えるバイナリを作成していた。新しいQDKのVS Code拡張パッケージは約700KBで、VS Code用のQ#開発ツールが含まれている。
Microsoftによると、従来のQDKでは、特定のプログラムのコンパイルに数分かかっていたが、新しいQDKではミリ秒単位まで短縮された。言語サービスはほとんど瞬時に動作し、ほとんどの操作はキー入力と同時に実行される。シミュレーターは、標準的なノートPCで、多くの一般的なアルゴリズムについて、1秒間に何千もの「ショット」が実行可能だという。新しいQDKのビルドパイプラインははるかに高速で、メインブランチへの各コミットにかかる時間は約10分とした。
新しいQDKはVS Code for the Webをサポートしており、ユーザーはローカルにインストールすることなく、ブラウザ上でQDKを含むIDEを実行可能だ。全ての機能が、VS Codeデスクトップでもブラウザでも同じように動作する。ユーザーは、Q#ファイルの編集、量子シミュレーターの実行、Azure Quantum Workspacesでの作業を、全てWebブラウザ上で完結させられる。
Microsoftは、QDKの安定版リリースまでに以下の機能追加や改善を実施予定としている。
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