SACの廃止から15カ月、Windows Serverの新しい年間チャネルが開始Microsoft Azure最新機能フォローアップ(208)

Windows Serverの新しいサービスチャネル「Windows Server Annual Channel(AC)」がスタートしました。「Windows Server Annual Channel for Containers」とも呼ばれる、主にWindowsコンテナにポータビリティを提供するためのサーバOSです。

» 2023年11月10日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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Windows Server ACの最初のバージョン「23H2」がリリース

 Microsoftは、「Windows Server 2016」以降、Windows Serverを「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel、LTSC)」と「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」の2つのサービスチャネルで提供してきました。

 Windows Server SACは、最新の機能やイノベーションを素早く利用可能にするもので、「Server Core」ベースのインストールオプションと、コンテナイメージおよび「Nano Server」のコンテナイメージで提供されました。Windows Server SACの利用は、ソフトウェアアシュアランス(SA)契約のあるWindows Serverのライセンスでカバーされましたが、その後、SACの廃止が発表され、最後のバージョン20H2のサポートが2022年8月に終了しました。

 その後、Microsoftは2023年7月に「Windows Server Annual Channel for Containers」を発表し、2023年後半のリリースを予告していました。

 Windows Server LTSCの方は、今後も2〜3年ごとにリリースされ、固定ライフサイクルポリシーの下で、5年のメインストリームサポートとその後5年の延長サポートが提供されることに変更はありません。現在の最新バージョンは「Windows Server 2022」です。

 SACとは異なり(SACにもその役割はありましたが)、「年間チャネル(Annual Channel、AC)」は、プロセス分離モードのWindowsコンテナ(Windows Serverコンテナ)をホストするためのオペレーティングシステムとして提供されます。

 年間チャネルは、SACと同様にSA契約のあるWindows Serverライセンスでカバーされ、12カ月ごとに新バージョンがリリースされます。モダンライフサイクルポリシーの下、24カ月(18カ月のメインストリームサポートと6カ月の延長サポート)が提供されます。インストールオプションは、コンテナホスト専用のServer Coreインストール(英語版)のみで、同OSのコンテナイメージは提供されません。

 本稿執筆時点で公式なアナウンスはありませんが、Windows Server ACの最初のバージョンが「Windows Server, version 23H2」のISOイメージとして、2023年10月末(米国時間)までに公式ドキュメントおよび製品ライフサイクルの情報が公開され、ボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)および「Visual Studioサブスクリプション」で利用可能になりました(画面1)。今後、「Azure Kubernetes Service(AKS)」での対応時に何かしらの発表があるでしょう。

画面1 画面1 Windows Server ACである「Windows Server, version 23H2」は、ボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)およびVisual Studioサブスクリプションから入手できる

最新OSでLTSCバージョンのWindowsコンテナのポータビリティを実現

 Windows Server ACのWindows Server SACとの大きな違いは、Windowsコンテナ、特にプロセス分離モードのWindowsコンテナを実行するコンテナホスト専用のOSとして提供される点です。Hyper-Vの役割をサポートしているため、Hyper-V分離モードでコンテナを実行することも、もちろん可能です。

 Windowsコンテナはコンテナホストとカーネルを共有する関係で、ホストとコンテナのベースOSとのバージョンの互換性が制限されていました。プロセス分離モードで実行できるのは、同じビルドのベースOSイメージに制限されます。下位ビルドについては、Hyper-V分離モードでサポートされます。プロセス分離モードでもHyper-V分離モードでも、上位ビルドを実行することはできません。

 Windows Server 2022以降では、プロセス分離モードのバージョン制限が改善され、コンテナのポータビリティ(移植性)が高まりました。より新しいビルドを実行するホストで、Windows Server 2022のコンテナをプロセス分離モードで実行できるようになったのです。例えば、これまでは、「Windows 11」(ビルド22000以降)の「Docker Desktop」上でWindows Server 2022(ビルド20349)のコンテナをプロセス分離モードで実行することができました。

 つまり、Windows Server ACをコンテナホストのOSとして使用すると、ホストOSを1年という短いサイクルで新しい技術や新機能に対応した最新バージョンに更新しながら、LTSCバージョンのコンテナをプロセス分離モードで実行し続けることができるわけです(画面2)。

画面2 画面2 Windows Server, version 23H2上でWindows Server 2022ベースのコンテナ(nanoserver:ltsc2022)をプロセス分離モードで実行しているところ。この例ではコンテナエンジンとして「Docker Community」を使用

 Windows Server ACの登場は、特に、AKSやオンプレミスのAKSハイブリッド(AKS on Azure Stack HCI/Windows Server)のWindowsコンテナの実行環境で迅速なイノベーションを期待できます。

 現状、AKSやAKSハイブリッドでは、Windowsコンテナ用のノードプール(ワークロードクラスタのWindowsワーカーノード)で「OSSKU」として「Windows2019」と「Windows2022」を選択できますが、AKSではプロセス分離モードのみサポートされるため、ノードプールとコンテナのバージョンを一致させる必要がありました。

 AKSでWindows Server ACのOSSKUが利用可能になれば、Linuxベースのアップグレードプロセスと同じような運用に近づけることができるでしょう。以下の公式ブログで説明されているように、Windows Server ACの最新リリースは、Windows Server 2022および次のLTSCバージョンのコンテナをプロセス分離モードで実行可能です。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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