最近、SDVという言葉を目にする機会が増えている。SDVはクルマを所有する個人や自動車企業、あるいはソフトウェア企業にどのような影響をもたらすのか。
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最近「SDV(ソフトウェアデファインドビークル)」という言葉を目にする機会が増えた。直訳すると「ソフトウェアで定義されたクルマ」だ。これまで、クルマの価値を決めてきたのは、エンジンやシャシーといった、ハードウェアの領域が大きかった。しかし、これからのクルマは、主にソフトウェアが価値を左右するようになる、という考え方だ。
例えると「クルマのスマートフォン化」という言い方もできる。iPhoneにおいて、ユーザー体験の多くがiOSや個々のアプリの利便性、操作性に支配されているように、ソフトウェアの良しあしがクルマの魅力を決定づける――それがSDVだ。
米国ラスベガスで開催されている「CES 2024」においても、SDV関連の発表が複数あった。後述するソニーホンダモビリティの電気自動車(EV)「AFEELA(アフィーラ)」は、Microsoftと協業して対話型パーソナルエージェントを提供するという。フォルクスワーゲンは「ChatGPT」をベースにした音声アシスタントを市販車に搭載すると発表した。
この他にも、韓国のLGエレクトロニクスがSDVのプラットフォーム(車載OS)提供に乗り出すなど、この領域へのビッグテックの進出が相次ぐ。レガシーなクルマメーカーとしては、ビッグテックの力を借りなければ、ソフトウェア分野の超速な進化に追いつけないということだろうか。
2023年末時点でSDVがどのようなクルマを指すのか例を挙げると、米国Tesla製EVのOTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートが分かりやすいだろう。筆者は、「スマホのようなクルマ」を体験すべく、2021年9月にTesla Model 3を購入した。購入後、20回のソフトウェアアップデートが降ってきた。
アップデート内容は、ADAS(高度運転支援機)の改善もあれば、スクリーンのUI改善、エンターテインメント系アプリの追加、安全機能の追加など、多岐にわたる。過去には車内に愛犬を留守番させたままクルマを離れることができる「ドッグモード」の追加もあった。停車中であってもエアコンをオンにしたままにできるEVの利点を生かすことで、愛犬は快適に車内で過ごせるという機能だ。
2年余の間、ソフトウェアアップデートのたびに愛車の魅力は増し、クルマとしての価値は向上している。ちなみに、ここで言う価値とは、査定時の下取り額のような金銭的価値ではなく、自己の内奥に宿るエモーショナルな価値のことだ。いうなれば「愛車精神」といったところか。
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