衛星インターネットのStarlinkがサービスを開始した。通信速度は? 遅延は? 設置場所の最適解は? アンテナの方角は? 気になる点について、早速導入した筆者の使用レポートをお届けする。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
以前、本連載で、日本版GPS衛星の「みちびき」を取材した。衛星の宇宙ネタというだけでワクワクしながら取材や執筆したのはいい思い出だ。その模様は、「『日本版GPS“みちびき”本格始動で数センチ級精度の位置情報取得が可能』は本当か」で詳しく紹介している。
そんな宇宙に対するワクワク感が現実のものになった。自宅に「Starlink」を導入したのだ。Starlinkは、イーロン・マスク氏が率いるSpaceXが運用する衛星コンステレーションを利用したインターネット接続サービス。市井の市民であっても、衛星通信を利用してインターネットに接続する時代がやってきたのだ。2022年10〜11月にかけて、離島を除く日本全域を対象にサービスが始まった。
Starlinkの名を一躍有名にしたのは、ウクライナ戦争だった。物理的攻撃やサイバー攻撃により通信インフラの一部が機能しなくなった同国政府からの要請に応える形で、SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏が即座に提供を開始した。
イーロン・マスクという人のビジネスセンスには感服する。このニュースが拡散するやStarlinkの名声が一気に高まり、通信インフラの整備が遅れている複数の国から引き合いが来ているらしい。
SpaceXがどれだけ衛星を打ち上げても、電波(周波数)の主権は各国政府が握っているので、その国でStarlinkを提供するためには、周波数免許を取得しなければならない。ウクライナの一件で、安全保障の観点からStarlinkへの関心が高まっている今、平時よりも免許の取得ハードルが低くなっているのではないだろうか。
日本では、2022年9月29日付で、14〜14.4GHzのアップリンク(地球から宇宙)周波数が指定無線局数10万局という包括免許として割り当てられている。輻輳(ふくそう)防止のためのユーザー数上限が10万ということであろうか。ダウンリンク周波数は、10.7〜12.7GHz。
現在、Starlink衛星は2022年6月時点で4408機が高度約540〜570キロの低軌道上を周回しており、低軌道であることが遅延を抑えた高速インターネットを可能にしているという。ちなみに、スループットの理論値は、下り350Mbps、上り130Mbpsである。2018年2月の最初の打ち上げから、よくもまあこれだけの数をそろえたものだと感心する。
それもそのはず、「ファルコン9」などのロケットを利用して商業衛星打ち上げを請け負う傍ら、Starlink衛星も搭載して軌道へ投入していたという。2022年10月6日の打ち上げでは、52機のStarlink衛星が宇宙へ放たれた。最終的には約4万2000機のStarlink衛星の投入を計画しているそうだ。
次の動画は、ファルコン9からStarlink衛星が軌道へ投入される様子を映したもの。11分30秒あたりから、太陽光パネルを折りたたんだタブレット形状の数十機の衛星が母船を離れて宇宙空間へと放たれる様子が映し出されている。
放たれた数十機のStarlink衛星は、しばらくの間、列になって飛行するが、イオンスラスターを噴射して、それぞれ決められた軌道に移動し散らばっていくそうだ。神奈川県平塚市在住の日本人が、列になって飛行するStarlink衛星の様子を映像に捉えて、Twitterに投稿している。銀河鉄道999を見ているようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.