野村総合研究所は「情報・デジタル子会社を対象とした今後の方向性と課題に関する調査」の結果を発表した。人材不足は前回調査時よりも悪化しており、親会社との関係構築にも課題があることが分かった。
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野村総合研究所(NRI)は2024年4月26日、「情報・デジタル子会社を対象とした今後の方向性と課題に関する調査」の結果を発表した。この調査は、日本国内に本社を持つ売上高上位の企業(約350社)を対象に実施し、31社から有効回答を得た。なお、NRIが同調査を実施するのは、2021年に続いて今回が2回目。
自社の抱える問題について見ると「ITを活用した企画力不足」(67.7%、複数回答、以下同)や「プロジェクトマネジメント力の不足」(64.5%)、「人材数に対して案件過多」(54.8%)といった回答が上位に挙がった。
前回(2021年)の調査と比較すると、プロジェクトマネジメント力の不足が28.3ポイント増加している点が目立つ。また、案件過多の問題意識を持った企業が過半数を占めており、NRIは「親会社や外販先企業からITやデジタルサービスに対する要請や期待が高まっている」と分析している。
職種ごとの人材の過不足感について聞いたところ「プロジェクトマネジャー」(32.3%)や「ITストラテジスト」(25.8%)、「ITアーキテクト」(25.8%)の不足感が高かった。前回(2021年)調査と比べると、データサイエンティストへの不足感が19.0ポイント減少しているものの、プロジェクトマネジャーへの不足感は21.7ポイント増えている。また、企画力が求められるITストラテジストやITアーキテクトも獲得競争が厳しい。
NRIは「新たな人材の確保が難しい中、社内人材の企画力向上を図る対応としては親/グループ会社への異動を含めて抜本的な業務の見直しを経験することや、業務の上流工程シフトが有効だ」と提案している。
自社の抱える問題としてトップ3に入った“案件過多”について、効果的な対策を調べるため、同調査では親会社との案件情報を共有している企業にその取り組み内容をたずねている。親会社との案件情報の共有について、十分な効果が得られている取り組みでは「親会社から案件情報の共有(期中にも実施)」「親会社と共同で案件優先順位付けを行い、適正な案件数を調整」「親会社と共同で予算策定段階から入り込み、受注案件をコントロール」が上位を占めた。
また、親会社に対する問題意識では「業務要件が定まらないままシステム開発に着手」(46.4%、複数回答、以下同)や「親会社と対等な関係で折衝できない(下に見られる)」(42.9%)を挙げる企業が多かった。これらの点を挙げた企業の割合は前回(2021年)の調査でも40%を超えており、こうした状況は常態化しているようだ。
「自社の立ち位置と今後の在り方に関して親会社との対話を始める必要がある。この対話では、親会社の協力が不可欠で、親会社の事業でデジタル・ITが果たす役割や方向性を明確にしなければならない」(NRI)
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