ガートナージャパンは、国内のIT子会社の実情に関する調査結果を発表した。IT子会社を設立している主な理由は、人件費の抑制やシステム開発コストの抑制、システム運用コストの抑制などだった。
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ガートナージャパンは2023年10月5日、国内のIT子会社の実情に関する調査結果を発表した。調査対象は、国内の従業員500人以上、売り上げ規模1000億円以上の企業に勤める役職者(CIO<最高情報責任者>、CTO<最高技術責任者>、IT担当役員、最高デジタル責任者、最高データ&アナリティクス責任者、デジタルビジネス推進担当役員など)。それによると、IT子会社を設立している主な理由は「コスト抑制」だった。
IT子会社を持つ企業に「IT子会社を設立している理由」を聞くと「人件費の抑制」(16.9%、複数回答、以下同)、「システム開発コストの抑制」(13.8%)、「システム運用コストの抑制」(12.3%)が上位を占めた。ガートナージャパンは「給与水準を親会社より低く抑えることによって、親会社がやるよりもコストを抑えられる(だろう)という考えが根底にある」と推察している。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)のために新たなIT子会社を設立する例もあるが、今回の結果では、その割合はまだ限定的だったという。
ガートナージャパンの一志達也氏(シニアディレクター アナリスト)は、「世界的に見ても、ITに携わる人材、特にAI(人工知能)、データアナリティクス(D&A)やデジタルプロダクトなどのリーダーは貴重だ。その給与水準はあらゆる職種の中でも高く、人材を確保するには、相応の待遇を用意する必要がある。これまでのITに対する見方とは区別し、ITを経営戦略の実現に重要なものとして位置付け、IT子会社を戦略的に活用するために、将来どのようにITを扱っていくかを考えるべき時が来ている」と述べている。
IT子会社に委託している業務の遂行と目的達成についての評価を見ると、評価は分かれており、「期待通り」と回答した割合と「期待未満」は、どちらも49.2%だった。
IT子会社に関する喫緊の課題については、「親会社の経営課題、戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」と回答した人の割合が最も高く、16.2%だった。他には「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」「スピード感が不足している」の3項目がどれも12.3%だった。
一志氏は、「IT子会社は、どのような形態で、どのような業務への貢献が親会社から期待されているかを確認し、それに適した策を講じる必要がある。一方、親会社は、これまでの業務システムだけがITではないという点を理解し、中長期的な経営戦略に対し、近代的なIT戦略で応えることが重要だ」と述べている。
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