PDFファイルには、作成したアプリケーションが保存したプロパティ情報がそのまま保持される。そのため、注意しないと「作成者」欄にアプリケーションのアカウント名などが入力された状態となってしまう。気付かないうちに個人情報が漏えいしてしまう危険性もある。そこで、PDFファイルからプロパティ情報を削除する方法を紹介しよう。
対象:PDFファイル(Windows 10/11)
最近では、Webサイトに製品マニュアルや企業の財務状況などをPDFファイルで公開しているところも多いようだ。こうしたPDFファイルのプロパティには、作成者やPDFの作成に使用したアプリケーションなどが埋め込まれたままのものが見つかる。場合によっては、「作成者」欄に個人情報が含まれているケースもあるようだ。
また、作成日時点でサポートの切れたアプリケーションが使われていることが分かると、そのアプリケーションの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用した攻撃が仕掛けられる危険性もある。
こうした危険性を回避するためにも、公開するPDFファイルではプロパティ情報の不要な項目は空にしておくとよい。その方法を幾つか紹介しよう。
PDFファイルのプロパティとは、メタデータとも呼ばれ、ドキュメントのタイトルや作成者、キーワード、作成に使用したアプリケーションなどが記録されている情報である。PDFビュワーでPDFファイルを開いて、「ドキュメントのプロパティ」や「文書のプロパティ」を開くと確認できる。
例えば、Microsoft Excelの場合、新規のXLSXファイルを作成すると、自動的にXLSXファイルのプロパティにユーザー名([ファイル]−[アカウント]で確認可能)が「作成者」欄に記録される。このプロパティ情報は、PDFファイルにした際にも引き継がれ、PDFファイルのプロパティに記録される。
PDFファイルのプロパティを確認するには、Microsoft EdgeでPDFファイルを開いてPDFビュワーのツールバーにある[歯車]アイコンをクリックし、表示されるメニューの[ドキュメントプロパティの表示]を選択する。
Google ChromeでPDFファイルを開いた場合は、ブラウザペイン右上隅の[︙]アイコンをタップし、開いたメニューで[ドキュメントプロパティ]を選択すればよい。
同様に、Adobe Acrobat Readerの場合は、[≡メニュー]アイコンをクリックし、表示されたメニューの[文書のプロパティ]を選択すると、[文書のプロパティ]ダイアログが開く。この[文書のプロパティ]ダイアログの[概要]タブを見ると、作成者などの情報が確認可能だ。
このようにPDFファイルには、作成者や作成に使用したアプリケーション名などがプロパティに引き継がれてしまう。こうした仕組みを理解せずに、PDFファイルを公開すると、プロパティから作成者などの情報が分かってしまう。万一、アプリケーションのユーザー名をメールアドレスに設定していると、プロパティからメールアドレスが分かってしまう。
前述の通り、PDFファイルのプロパティに記録される情報は、ドキュメントの作成に使用したアプリケーションによって埋め込まれるものだ。そこで、ドキュメントをPDFファイルに出力する前に、アプリケーションでプロパティ情報を削除してしまえば、PDFファイルのプロパティにも情報が残らなくなる。
Excelならば、[ファイル]タブで[情報]を開き、[プロパティ]をクリック、[詳細のプロパティ]を選択する。[<ファイル名>のプロパティ]ダイアログが開くので、ここの[ファイルの概要]タブを開き、公開したくない情報を削除して、[OK]ボタンをクリックすればよい。これで、プロパティ情報が削除できる。あとは、通常通り、PDFファイルとして出力すればよい。
また、同じ[情報]にある[ブックの検査]−[ドキュメント検査]を選択して、[ドキュメントの検査]を実行するという方法もある。[ドキュメントの検査]ダイアログが開いたら、「ドキュメントのプロパティと個人情報」のみにチェックを入れて、[検査]ボタンをクリックする。ドキュメント内のチェックが実行され、「ドキュメントのプロパティと個人情報」という項目が表示されるので、この右側にある[すべて削除]ボタンをクリックすればよい。これで自動的にプロパティ情報が削除できる。手動による削除よりも確実にプロパティ情報の削除が可能だ。
ただし、プロパティ情報を削除してしまうと元に戻せなくなる。ドキュメントの管理上、プロパティ情報を保持しておきたい場合は、ドキュメントをコピーしてからプロパティ情報を削除するなどしてほしい。
また、検索エンジン対策(SEO)には、プロパティ情報を完全に空にするのではなく、「タイトル」欄や「キーワード」欄をきちんと埋めるのが望ましい。
なお、Microsoft Office製品であれば、同じ方法でプロパティ情報の削除が可能だ。
Microsoft Office製品のようにプロパティ情報の削除が簡単にできる場合はいいが、アプリケーションによってはどうすれば削除できるのかが分からないものもある。また、オリジナルのドキュメントが存在せず、PDFファイルしか残っていない場合もあるだろう。
このような場合、無料のオンラインツール(Webサービス)を使うことで、プロパティ情報の削除が可能だ。ただ、PDFファイルの編集などを提供するオンラインツールは多いが、プロパティ情報の削除をサポートするものは少ないようだ。
編集部で調べたところ、GroupDocsの「PDFからメタデータを削除する」がプロパティ情報(メタデータ)の削除が可能であった。
GroupDocsの「PDFからメタデータを削除する」ページを開き、プロパティ情報を削除したいPDFファイルをドラッグ&ドロップし、プロパティ情報が削除されたPDFファイルをダウンロードするだけだ。ただし、PDFファイルの作成に使用したアプリケーション名が「Aspose Pty Ltd.」に変更されるので注意してほしい。
GroupDocsの「PDFメタデータエディタ」ページを使えば、プロパティ情報を編集できる。不要な項目を選択し、[ごみ箱]アイコンをクリックすると、その項目が削除可能だ。「タイトル」などを残したい場合は、こちらのページを使うとよい。
ただ注意が必要なのは、プロパティ情報を編集後、[保存]アイコンをクリックしなければならない、という点だ。これをうっかり忘れると、編集結果が反映されたPDFファイルがダウンロードできない。
PDFファイルの結合などをサポートするフリーソフトウェアの「PDFsam Basic」をインストールすると、同時にインストールされる「PDFsam Enhanced Free」を使うことで、プロファイル情報の削除が可能だ。Webブラウザで「Download PDFsam Basic」ページを開き、「Download PDFsam Basic」欄の「Windows downloader (.exe)」リンクをクリックすると、インストーラーがダウンロードできるので、これを実行する。
デスクトップに[PDFsam Basic]と[PDFsam Enhanced 7]の2つのアイコンが登録されるので、[PDFsam Enhanced 7]アイコンをクリックして、起動する。
PDFファイルをドラッグ&ドロップで読み込ませ、メニューバーの[≡]アイコンをクリックし、メニューの[プロパティ]を選択する。右ペインに「ドキュメントの説明」が表示されるので、これをスクロールして、「高度」欄を表示する。ここに「タイトル」や「作成者」などのプロパティ情報が表示されるので、各項目の右側にある[×]をクリックして情報を削除する。
削除が終了したら、左メニューの[名前を付けて保存]を選択して、名前を付けて保存すればよい。これでプロパティ情報の削除が可能だ。ただし、PDFファイルの作成に使用したアプリケーション名が「PDFsam Enhanced 7」に変更される点に注意してほしい。
Adobe Acrobatを使っているのであれば、Adobe Acrobatを使ってプロパティ情報を編集、削除可能だ。残念ながら無償のAdobe Acrobat Readerでは、プロパティ情報の確認は可能でも、削除はできない。
Adobe AcrobatでPDFファイルを開き、[≡ メニュー]をクリックし、メニューにある[文書のプロパティ]を選択する。[文書のプロパティ]ダイアログが開くので、ここで「作成者」などの情報を削除し、[OK]ボタンをクリックする。これでプロパティ情報が削除できるので、これを[≡ メニュー]をクリックして、メニューの[別名で保存]を選択して、名前を付けて保存すればよい。これでプロパティ情報を削除したPDFファイルが作成できる。
注意が必要なのは、「キーワード」欄は単純に削除しただけではPDFファイルのプロパティから消えないことがある、という点だ。情報を削除した後、全角スペースなどを入力しておくとよい。
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