AIエンジニア 安野たかひろさんに学ぶ「周囲を巻き込むコミュニケーション」仕事が「つまんない」ままでいいの?(115)(2/2 ページ)

» 2024年07月17日 05時00分 公開
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安野さんのプレゼンテーションの特徴

 安野さんがエンジニアであることにも、関心を持ちました。

 そこで、安野さんの話し方の特徴やマニフェストから「周囲から応援してもらう言動」を整理してみたくなりました。

 なお、繰り返しとなりますが、これからお話しする内容は、安野さんの話し方や表現の仕方についてです。政策の是非に触れたり、「○○さんを応援します!」といった私情を説いたりはしません。というより、そもそも僕は安野さんに面識がありません。あくまでも、コミュニケーションに関するお話です。

説明資料が論理的で分かりやすい

 安野さんはマニフェストを公開しています。率直に「シンプルで分かりやすいな」と思いました。まず現状の課題がデータで示され、次に「この問題を解決するために、○○をする」といった公約が書かれており、とても論理的です。

 スライドの表現も秀逸です。「1枚のスライドの情報が少な目」「大切なポイントは大きく」といった点も、とても分かりやすい。

 話す内容が事前に言語化されて、構造的、体系的になっているから、実際に話すときも論理的で分かりやすいのではないかと思いました。

 エンジニアの仕事でも、上司を説得したり、顧客に意見を主張したりする場面が多々あります。データに基づいて論理的に分かりやすく説明するために、参考になる部分が多くあるでしょう。シンプルで分かりやすいスライドの作り方もまねてもいいかもしれません。

言動が肯定的で嫌な気分にならない

 安野さんや応援されている方々のお話はなぜか、あまり嫌な気持ちにならずに最後まで聞けました。その理由は「言語表現が肯定的だから」だと思いました。

 一般的な選挙では、自分の正しさを主張するために、つい「○○さんの□□は問題だ。だから、△△はダメなんだ」のように否定的な言動をしがちです。でも、批判的な言動は嫌な気持ちを誘います。

 なお、冒頭に触れた、僕が「早く選挙、終わらないかなぁ」と思った理由がこれ。仕事上のプレゼンで「早く終わらないかなぁ」と相手に思われたら最悪ですよね。

 周囲の方々と気持ちよく仕事をしていく上でも、「肯定的な言動」は大切なポイントだと思います。自分を主張したいなら、周囲を否定する必要はなくて、「私はこうしたい!」を伝えるだけでいいですよね。

 また「類は友を呼ぶ」ではありませんが、批判的な言動に共感するのは、似たような資質を持っている人であることを考えると、「いい気分で仕事をするために、どんな人と関わりたいか」を考えて、それに合った言葉を使うことが大切なのかもしれません。

 安野さんの妻、安野里奈さんは応援演説で「安野たかひろは他人を貶(おとし)めることはしません。しかし、システムの欠陥は見抜きます」とおっしゃっていました。エンジニアたるもの、こうありたいものです(笑)。

友人から応援されている

 後はやはり、「友人から応援されている」のも信頼感を得られるプレゼンテーションの要因の一つだと思いました。一般の友人や知人がマイクを持って人前で話す。それは、なかなかできることではありません。

 それでも、友人がかって出てくれるのは、それだけ「信頼されている」からなのでしょう。

 また、友人の皆さんが話す内容も、「東京の未来のために」「未来の子どもたちのために」といった抽象度の高い(言い方を変えると、何を言っているのかよく分からない)話ではなく、ご自身の体験談や具体的な話だから身近に感じる。そういったことも、一般の人に伝わりやすかった要因の一つではないかと思います。

 だからといって、「いい人になろう」とか、「信頼される人になろう」というのは、ちょっと違う気がします(笑)。それでも「周囲から信頼されている」というのは、仕事の上の信頼関係を構築する上でも、大切なことではないかと感じました。

周囲と良好な関係を構築するために

 今回は都知事選に出られた、AIエンジニア 安野たかひろさんのコミュニケーションについてお話をしました。

 @ITの読者にはエンジニアが多いと思います。仕事柄、自分の考えを周囲に説明したり、プレゼンしたりするシーンも多いでしょう。

 仕事を円滑に進めるためには、分かりやすく説明したり、周囲と良好な関係を作ったりしていきたいもの。選挙は終わりましたが、安野たかひろさんの演説、もう少し聞いてみたいと思います。

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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