デジタル化やDXといえば、仕事の「見える化」や「効率化」など、目に見えて分かりやすい効果を期待することが多い。だが、変革の本質は「想定していなかったこと」にあるのかもしれない。
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デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)といえば、仕事の「見える化」や「効率化」など、目に見えて分かりやすい効果を期待することが多い。
一方、デジタル化やDXの本質は、見えなかったものが見えることによって起きる「まったく想像し得なかったこと」にあるのかもしれない。
大阪のある製造業は、人による「カンとコツ」で商品を生産していた。だが、計画と実績の間で大きな違いが生じることが多く、繁忙期には100時間近い残業が発生することもあった。そこで、生産管理システムを導入することになった。
しかし生産管理システムの導入で得られたのは、効率化以上に「でかいこと」だった。それはいったい何なのか? 今回は、大阪の製造業における「うれしい想定外」の事例を紹介する。
大阪府堺市にある岸産業は、防熱扉の設計、製造、販売、施工を行っている企業だ。以前は、生産に関する情報を人手で管理していた。そのため、計画と実績の間で大きな違いが生じることが多かった。
「1つの製品を作ることに対して、どれだけ時間がかかるのか? 僕の頭の中では、おおよその時間と工程は分かっていました。けれども、そのイメージと実際が違うときがありました。また、繁忙期は頭の中がいっぱいになり、何が何だか分からない状況になることもあります。その結果、特定の部署の負荷が増えたり、負担をなすり付け合って社内がギクシャクしたりすることがありました」と、工場長の濱口大志(はまぐちたいし)さんは話す。
製造部としては「この仕事は利益が出たのか、それとも出ていないのか」といった実績を知りたい。だが、工数や工程のデータが管理されていないから分からない。その状況にモヤモヤする日々を過ごしていた。
代表取締役 社長の岸晃広(きしあきひろ)さんも共通の課題感を持っていた。
「うちの製品の多くはオーダー品です。いままで作ったことのない製品や、年に1回生産するかしないかといったものもあります。こうした製品の場合、生産にどれだけの工数がかかり、どれだけの利益が得られるのか、その見極めが難しいと感じていました」(岸さん)
大枠の工数は、製造部のメンバーへのヒアリングで把握していた。だが、同じ工程でも人によるばらつきがある。実際に製品ができてみると、見積もっていた工数と大幅に違うこともあった。受注金額より多く経費がかかっていたケースもあり、経営課題にもなっていた。
さらに問題だったのは、正確な生産計画が立てられないことだ。
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