いらない広告をぶっこわーす! いらない本文もぶっこわーす!
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ようやく涼しくなってきて、長過ぎた夏の終わりが見えてきました。秋といえば新型「iPhone」の季節です。
2024年9月中旬にiPhone 16シリーズが発売され、iOSの最新版「18」も配信スタートしました。iOS 18には、Webコンテンツ業界を震撼(しんかん)させた機能が実装されています。
「気をそらす項目を非表示」という機能です。「Apple公式の広告ブロッカー」などと話題になったこの機能。「Safari」で閲覧中のWebページで、指定したコンテンツをワンタップで消してしまうことができます。
広告収入で成り立っているわれわれメディアの人間は、「ついに来たか」とおののきました。が、Appleはメディアに配慮して、手加減してくれたようです。
広告収入が食いぶちのわれわれでも、時々思うことがあります。「Web広告、邪魔だな」と……。
筆者の場合、シンプルなバナー広告や面白い記事広告には抵抗がありません。自分が広告記事を執筆する機会もありますし。
でも、ユーザーの意図に反した広告や、誤タップを誘う広告には、しばしば不快になります。例えば、下品な広告やブラウザバックで表示される広告、タップしても消えない広告、長い動画を最後まで見させられる広告など。
不適切なWeb広告への抵抗感は高まってきており、プラットフォーマー側も無視できなくなっているようです。iOS 18の「気をそらす項目を非表示」機能は、その表れでしょう。
「AppleがiOS 18向けに、広告ブロッカーを開発している」といううわさは、2024年上半期からありました。ただ実装されてみると、恐れていたものとは少し違いました。
うわさになっていた当初の機能は、Webページから消したいエリア(広告など)を選ぶとその設定は保存され、ページを移っても同じエリアが消え続ける、まさに広告ブロッカー的なものでした。
ですが、実装された「気をそらす項目を非表示」は、指定したページのみでコンテンツを削除でき、ページを移ると設定がリセットされます。遷移先のページで、前のページと同じコンテンツを消したい場合でも、もう一度削除メニューを選ぶ必要があり、手間がかかります。
また、この機能で広告を消すこともできますが、記事内のテキストや画像、表など、コンテンツ自身も消すことができます。つまり、広告に限定した削除機能ではなく、広告を含むあらゆるコンテンツを、閲覧中のページ限定で消せる、という機能に落ち着きました。
この機能が、「心配したほどには“便利”ではなかった」ことに、私を含むWebコンテンツ業界の人は少しホッとしています。
でも、安心している場合ではありません。悪質なWeb広告を多くの人が邪魔だと思っていることは事実です。たとえ悪質でなくても、記事内に突然差し込まれる広告は、読み手を混乱させがちです。
先日、小学生の息子に、筆者が書いた他のメディアの記事を読ませていたら、途中に挟まれていた広告の文章や画像も本文の一部だと思ったようで、つながりが分からなくなり混乱していたのを目の当たりにしたのです。
広告を飛ばして本文だけ読むことは、慣れている人にとっては当たり前ですが、慣れていない人にはとても分かりづらい。これだけコンテンツがあふれている現代ですから、分かりづらいコンテンツから読者は逃げてしまいます。
今の子どもたちはただでさえ動画世代ですから、テキストメディアを読むこと自体が今後、ますます敬遠されてしまうのではないか、と危機感を覚えました。
“邪魔な広告”に代わる、読者にもメディアにもメリットがあるマネタイズ手段を、テキストメディアは発明しなくてはならないのかもしれません。
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