クラウドコンピューティングでも活用されている「ハイパーバイザー」の役割や種類をざっくり理解しようビジネスパーソンのためのIT用語基礎解説

IT用語の基礎の基礎を、初学者や非エンジニアにも分かりやすく解説する本連載、第26回は「ハイパーバイザー」です。ITエンジニアの学習、エンジニアと協業する業務部門の仲間や経営層への解説にご活用ください。

» 2024年12月20日 05時00分 公開

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1 ハイパーバイザーとは

 ハイパーバイザーは、物理マシン上に仮想マシンを作成したり、仮想マシンを管理したりするためのソフトウェアです。

 ハイパーバイザーは仮想化技術の中核を担う存在であり、ハードウェアリソースの有効活用やコスト削減を実現します。仮想化技術自体は古くから存在しますが、昨今のデジタル化やクラウド普及の影響で、企業がシステムを柔軟かつ効率的に運用する必要性が高まり、改めて注目を集めています。

2 ハイパーバイザーの役割

 ハイパーバイザーは、1台の物理サーバ上に複数の仮想マシンを配置し、それぞれの仮想マシンが独立して動作するように管理、制御します。物理サーバのCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークといったハードウェアリソースを仮想マシンに効率的に割り当てることで、複数の異なるOSの仮想マシンやアプリケーションを同時に稼働させられます。

図1:リソース活用イメージ

 仮想マシンが物理サーバのリソースにアクセスする際は、ハイパーバイザーがその役割を担い、やりとりを管理します。

3 ハイパーバイザーの種類

 ハイパーバイザーは、「ベアメタル型」と「ホスト型」の2種類に分類できます。

図2:ベアメタル型とホスト型の比較

3.1 ベアメタル型

 ベアメタル型ハイパーバイザーは、物理サーバに直接インストールされ、ハードウェアリソースへの直接アクセスが可能です。

 仮想マシンに対して柔軟にリソースを提供でき、高いパフォーマンスと安定性に特徴があります。導入や運用に当たっては専門的な知識が必要となるため、ホスト型ハイパーバイザーと比較すると運用の難易度は高いといえます。このような特徴から、信頼性が重視される商用システムで利用されることが多く、さまざまな規模の商用システムでベアメタル型が選択されています。

3.2 ホスト型

 ホスト型ハイパーバイザーは、ホストマシンのOS上でアプリケーションとして実行します。

 一般的なアプリケーションと同様に手軽に導入できる一方で、OSを介してハードウェアリソースを活用するため、ベアメタル型と比較するとパフォーマンス面で劣ります。このような特徴から、ホスト型ハイパーバイザーは、簡易的な検証など、主に開発環境で選択されています。

4 ハイパーバイザーの活用シーン

4.1 クラウドコンピューティング

 クラウドサービスプロバイダーは、ハイパーバイザーを活用して大量の仮想マシンを管理し、利用者に対してオンデマンドでリソースを提供しています。物理サーバの台数を削減することで、データセンターにおける物理的なスペースの確保や消費電力を削減しています。

4.2 開発環境

 ホスト型のハイパーバイザーを利用することで、開発者は複数のOSやソフトウェア環境を手軽に作成できます。また、ハードウェアを用意することなく、低コストで素早く開発を始められる点も大きなメリットです。

5 ハイパーバイザーのメリット

5.1 リソースの有効活用

 ハイパーバイザーは、CPU、メモリ、ストレージなどのハードウェアリソースを仮想化し、効率的かつ柔軟に活用することで、システムの安定稼働に貢献します。

 仮想マシン間でのリソース共有や、負荷の増加に対するリソースの追加など、柔軟で拡張性の高いIT基盤を実現します。仮想マシンのバックアップと復元も比較的容易です。

5.2 コスト削減

 ハイパーバイザーを利用することでサーバを集約できるため、物理サーバの台数を削減できます。これにより、機器の購入にかかる費用だけでなく、設置スペースや電力など、維持にかかるコストも削減できます。

6 ハイパーバイザー活用に伴う注意点

6.1 構成、管理の複雑化

 1台の物理サーバに仮想マシンを集約することで、管理が複雑化する場合があります。また、仮想マシンごとのリソース上限を適切に設定していない場合、特定の仮想マシンに過剰な負荷がかかると、同一サーバ上に存在する全ての仮想マシンのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。

 仮想マシン間でのリソース分離に注意を払い、干渉を防ぐことが重要です。なお、物理サーバの故障が発生すると、複数の仮想マシンに影響が及ぶ可能性があります。多くのハイパーバイザー製品では、物理サーバ間で仮想マシンを移動させることができるため、物理サーバを冗長構成にするなど、可用性を考慮した設計が求められます。

6.2 セキュリティリスク

 ハイパーバイザーは仮想化環境の中核を担うことから、サイバー攻撃の標的とされることがあります。

 ハイパーバイザーへの侵入を許すと、ハイパーバイザー上で動作する全ての仮想マシンを乗っ取られる可能性があります。ハイパーバイザーが稼働するサーバを標的としたランサムウェア攻撃やゼロデイ攻撃(※)などの事例も報告されています。このようなリスクに対応するため、セキュリティアップデートの迅速な適用や、アクセス制御の見直しなど、継続的な対策が必要です。

※ゼロデイ攻撃:ソフトウェアやシステムの未修正の脆弱(ぜいじゃく)性を標的としたサイバー攻撃のこと。脆弱性が公開された後、修正する前に攻撃されるため、防御が困難とされている

7 今後の展望

 クラウドコンピューティングの拡大に伴い、ハイパーバイザーなどの仮想化技術の需要が高まっています。また、IoT(Internet of Things)機器にハイパーバイザーを導入することで1つの機器で複数の機能を実現するケースも増えています。ハイパーバイザーが果たす役割は今後さらに多様化し、引き続きITインフラを支える重要な技術要素であり続けるものと思います。

古閑俊廣

BFT インフラエンジニア

主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。

現在はこれまでのエンジニア経験を生かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。

「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。

実践型ITインフラ研修 BFT道場


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