理不尽の衝撃を受け流し、心を保護した後は、状況をより良い方向に改善し、長期的な「いい気分」を確保するための戦略を立てましょう。
自然災害のような「事実としてどうにもできないこと」以外で、仕事上で起こる理不尽の多くは、感情的な要求や批判など、相手にとっての「都合のいい勝手な解釈」によってもたらされることがほとんどです。
理不尽な解釈には感情で返さず、客観的な事実やデータ、ロジックを「盾」にします。
例えば顧客から理不尽な要求があったとき、「なるほど、○○だとお考えなのですね」のように相手の言い分をいったん受け取った上で、「具体的には、どういったことがあったのでしょうか?」「それは、いつ、どこでのお話でしょうか?」「何回ぐらい起こっているのですか?」のように質問をしながら、事実ベースの会話に切り替えていきます。
このように、解釈による感情的な会話を、事実ベースの会話に切り替えていくことで、感情論の力を弱めることができます。また、解釈は人それぞれですが、事実は一つです。事実ベースの会話に移行することで、交渉のテーブルを論理の場に戻しつつ、共通の認識を得られる可能性が生まれます。
鋼の心の持ち主は「バチバチの正面突破」が得意ですが、豆腐メンタルのわれわれは「防御こそが最も得意な戦い方」です。「逃げるが勝ち」を戦略として採用することを恐れないでください。
理不尽な相手に対しては無理に戦いを挑まず、短期的な和を保つため表面的に合わせたり、いったんその場を離れたりすることで、エネルギーを過度に消耗しないようにすることも大切な戦略です。
その分、心の中で「今に見てろよ」と内なる炎を燃やします。そして、次なる手段の模索を始めます。部署移動、転職の検討、信頼できる相談相手の確保など、新たな選択肢を増やしましょう。新たな選択肢が形になるまでには長期的な視点が必要かもしれません。ですが、「回避ルート」を静かに準備しておくことで、理不尽な状況に対する心の余裕が生まれます。
こんなことを書いていたら、過去に理不尽な扱いを受け、すごく悔しい思いをさせられた最低なやつの顔が脳裏に浮かんできました。「あの野郎、いまに見てろよ!」(笑)。
もし、あらゆる対策を講じても理不尽な状況が変わらない場合、最終的な選択として「諦める力」を使います。
既にお話ししましたが、理不尽な状況とはつまるところ「自分の意思だけではコントロールできないもの」です。そこで「これは、自分の力だけではどうにもならないのだ」「まぁ、仕方がないか」のように、いい意味で「諦める」ことも、無駄な抵抗による消耗戦を防ぐコツです。
相手と程よい距離を保ったり、「適切なタイミングはそのうち来る」と自分の意識を「長期的な視点」に切り替えたりしてもいいでしょう。
これは「投げやりになる」ことではありません。いい意味で「諦める」ことで、あなたの心は理不尽な状況から解放され、感情をニュートラルな状態に移行することに役立ちます。この心の状態こそが、長期的に「いい気分」で仕事を続けるための最も大切な土台となるのです。
現代社会において、理不尽な出来事はゼロにはなりません。私たちは、理不尽と共存し、自分の心を守りながら生きていくすべを学ぶ必要があります。
大切なのは、周囲のネガティブな要素に引っ張られずに「いい気分でいること」「いい気分で仕事をすること」です。これを最優先事項としましょう。
ガツガツ挑む鋼の心よりも、消耗しない熱量弱め、豆腐メンタルの方が、長く、しなやかに戦い続けられます。
「受け流し」と「しなやかな対処」を組み合わせることで、理不尽を回避し、受け流し、そして静かに勝利を収めることができるでしょう。緩やかに、でも着実に、自分の「人生の主導権」を握り続けてください。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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