人口減少により、全国的に人材不足が課題となる中、府中市はGovTech東京と連携し、今後起こり得る職員不足を見越し、住民状況の見える化やデータを活用した業務効率化を進めている。専門家とタッグを組み、「自分たちでやる」価値を追求する同市の取り組みを紹介する。
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行政機関の業務と言えば「紙でのやりとりが多い」というイメージがある。職員の皆さんの中には「もっとデジタル化を」と思っている方も多いかもしれないが、日常的に関わっている老若男女、多様な市民に寄り添うためには「紙でのやりとりをなくせない」といった事情があるのも事実だろう。
一方、全国的に人口減少が進み、職員不足が避けられない今、行政サービスの維持は待ったなしの課題だ。しかし、どこから手を付ければいいか分からない。そんな中、東京都府中市は、画期的な取り組みを始めた。それが、GovTech東京との協働だ。
府中市は東京都のちょうど真ん中にある人口26万人の都市だ。「東京」というと都会をイメージするが、府中市は緑が豊かで多くの史跡があり、歴史と現代的な文化がミックスされた、ファミリー層が多いベッドタウンである。
府中駅を降りると目の前に欅(けやき)並木が広がっている。道沿いに歩いていくと、年に1回大きな盛り上がりを見せる「くらやみ祭」が行われる大國魂(おおくにたま)神社がある。府中市役所はその隣にある。
府中市にはデジタル化の基本指針として、令和4年度から令和7年度を計画期間とする「デジタル化推進計画」がある。その中には官民データ活用推進基本法に基づく「市町村官民データ活用推進計画」および「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が提示されている。それに沿って現在、市の業務におけるデジタル化を推進している。
デジタル化を推進するに当たり、担当課である政策経営部 情報戦略課にはどんな課題認識があったのか。課長の島田朋子さんは次のように話す。
「私はもともと、民間でSE(システムエンジニア)として働いていました。府中市役所へ入庁したのは令和4年です。与えられたミッションは、デジタル化やDXの推進。でも、取り組み始めたときはDXの定義もあいまいでしたし、何から手を付ければいいのかもよく分かりませんでした。そもそも、DXのゴールを考えたとき『何のためのDXなんだっけ?』と。
大きな課題認識としてあったのは15〜64歳の「生産年齢人口の減少」でした。生産年齢人口が減ると職員も減ります。職員が減って行政サービスが維持できなければ市民が困ってしまいます。職員が減っても行政サービスが維持できること。これが、行政におけるDXのミッションだと捉えました」
DXのゴールを設定するとき、人口の統計を基に将来の職員数や行政サービスの業務量を予測し、必要な工数削減がどの程度なのかを試算することも、一つの方法として考えられる。
そこで島田さんは、「今できる範囲で、将来の粗い見立てを立てられないか?」と考えた。
しかし、人口統計に必要な住民データの取り扱いには慎重さが求められる上、さまざまな技術的課題を解決しなければならず、一筋縄には行かないことがすぐに分かった。
「将来の職員数や行政サービスの業務量を予測するためには、自分たちでできること/できないことの境界線を見極め、整理する必要がありました」
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