「ロールモデルがいない」と悩んでいる人の、本当の悩み仕事が「つまんない」ままでいいの?(132)(2/2 ページ)

» 2025年12月17日 05時00分 公開
前のページへ 1|2       

「情報」という名のロールモデル

 「情報」という観点では、いまはインターネットがない時代に比べて圧倒的にロールモデルを見つけやすくなっていますよね。

 インターネットがなかった時代は、ロールモデルといえる存在の情報を得るのは、本かテレビか、身近にいる人ぐらい。それ以外の情報に触れるすべがありませんでした。

 でも、インターネットがある現代は、「あの人はすごいな〜」「○○さんって、すてきだな〜」と思える人と出会いやすい。自分と似たような境遇の人や、自分と同じ世界を目指していそうな人を探したければ、検索すればいいからです。直接会話をしたことがなくても、情報としてのロールモデルを見つけることなら、すごく簡単。

 加えて、以前と比較すると、いまは多様な働き方も増えています。

 にもかかわらず、なぜ「ロールモデルがいない」と悩み、ロールモデルを探したくなるんだろう? 本や情報上の「憧れの人」じゃだめなのか?

 ひょっとしたら、「ロールモデルがいない」と悩んでいる人が探しているのは、「ロールモデル」ではなく、「あの人みたいになりたい」と感じる、自分の中における目標や理想、あるいは自我。そういったものなのではないでしょうか

 自分の中に「○○になりたい」「××をしたい」「△△でありたい」といった目標や理想、在り方みたいなものがあれば、それと照らし合わせて、自分にとってのロールモデルたる人を見つけることができる。それが、身近な人ではなくても。

 だけど、そもそも「○○になりたい」「××をしたい」「△△でありたい」といった、自分なりの目標や理想、在り方みたいなものがなければ、比較になる人が見つからない。だから、将来が不安だし、お手本となる人が欲しい――。

 「ロールモデルがいない」と悩んでいる人の本当の悩みは、「ロールモデルがいないこと」ではなく、「○○になりたい」「××をしたい」「△△でありたい」といった、自分なりの目標や理想、在り方がないこと。そのために、「自分の将来が見えない」ことなのかもしれません。

 それならば、ロールモデル探しはやめて、「○○になりたい」「××をしたい」「△△でありたい」といった自我を芽生えさせる方が手っ取り早いのではないか……という気がしてきました。

 ここでいう「自我」とは、過去の経験や失敗から導かれる「自分にとって譲れない価値観」であり、「行動指針」です。

自分の“外”ではなく“内”に意識を向ける

 では、「○○になりたい」「××をしたい」「△△でありたい」という自我を芽生えさせるためにはどうすればいいのでしょうか。

 結局、行動するしかないのかな、と思います。行動して、失敗して、「こうじゃない!」といった悔しい思いをして。そういった数多くの経験を重ねていく中で、「自分にとって大事なのは、こういうことだ!」といった、自我を形成していく。

 それは、自分の“外”に「私のロールモデルはこういう人」と見つけに行くのではなく、自分の“中”に「私が大切なのはこういうこと」を見つける作業。それができれば、身近にロールモデルなどいなくてもいい。遠い「あこがれの人」がいればいい。そんな感じがするのです。

 くよくよ悩んでいないで、「とにかく動け」ってことでしょうかね。

これからの時代はますます「ロールモデルがいない」と悩む人が増えるかも

 ただね……これからの時代は、ますます「ロールモデルがいない」と悩む人が増えるんだろうな〜と、個人的には思っています。その理由は「AI(人工知能)の台頭」です。

 先日、こんな相談を受けました。「将来のことを考えると、いまのままでいいのか不安です。何か、新たなことをやらないといけないんじゃないかと思っています。そこで、AIと壁打ちしています」

 詳しく話を聞いてみたら、「AIと壁打ちするのもいいけれど、取りあえず行動してみたらいいのではないか」と思える内容でした。

 AIって便利ですよね。ボクも毎日使っています。情報を整理したり、分析したり、アイデア出しをしたりするときには本当に便利。

 だけど、AIには人格がありません。何となく上っ面というか。人格がないAIとどんなに対話をしても、自分の中に「○○になりたい」「××をしたい」「△△でありたい」といった自我は芽生えない。

 自我が芽生えるためには、答えを“外”に見つけにいこうとするのではなく、“中”に見つけに行こうとすること。自分と対話をすること。そして、自我を強固にするために、取りあえずやってみること。

 これからのAI時代は、人間だけが持つ「行動から得る経験」が価値になっていくのだろうと思います。

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

人に頼れない今こそ、本音で語るセキュリティ「モダナイズ」
4AI by @IT - AIを作り、動かし、守り、生かす
Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。