Gartnerは、企業のCHROが取り組むべき「仕事の未来における主要トレンド」を発表した。AIへの期待先行による人員削減や生産性向上などが課題になるという。
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Gartnerは2026年1月12日(米国時間)、2026年以降に企業のCHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)が対処すべき「仕事の未来における主要トレンド」を発表した。
同社 シニア ディレクター アナリストのエミリー・ローズ・マクレー氏は、2026年のCHROが直面する重要な職場環境の変化として「人事の権限拡大」「AI(人工知能)対応の労働力」「成長への圧力」「雇用契約の変化」などを挙げている。
今回発表されたトレンドは以下の通り。
一部のCEOは、AI投資による生産性とイノベーションの向上を楽観視し、先行して人員削減に踏み切っている。現在の削減はAIの導入効果によるものではなく、2025年上半期のレイオフのうち、AIによる従業員の生産性向上が要因となったものはわずか1%だった。ビジネスリーダーは、まだ実現できていないAIの導入効果を見込んでチームの人員を削減するという困難な立場に置かれており、組織によっては削減した役割のために再雇用が必要になるケースもあるという。
一方で人材採用の現場では、採用候補者と企業の双方がAIを利用することで、採用プロセスが「軍拡競争」の様相を呈している。採用プロセスの負荷が過度に高まり、不正も横行しているという。Gartnerは、2026年には対面面接やスキル評価などの「ハイタッチ」なアプローチとAIツールを組み合わせ、採用における人間の価値を高める必要があると提言している。
幾つかの有名な企業・組織では、長時間労働や積極的なパフォーマンス管理を特徴とするスタートアップのような企業文化を取り入れている。しかし、報酬や柔軟性などの見返りを提供せずに従業員に多くを期待する傾向があり、これが「文化的不協和音」を引き起こしている。その結果、エンゲージメントの低い従業員が会社にとどまる「残念な定着(regrettable retention)」が発生し、雇用ブランドを毀損(きそん)しているという。
個人の生産性向上とAI導入への過度な期待は、AIによって作成された「迅速だが低品質な成果物」、いわゆる「ワークスロップ(workslop)」のまん延を招いている。従業員は品質や適合性を見極める時間や自律性を与えられないまま、多くのユースケースでAIを採用するよう圧力を受けているという。
Gartnerは、2026年のCHROには、単なる「時間」の節約ではなく、従業員の「労力」を節約することに焦点を当てることが求められるとしている。また、企業はAIツールの個別最適化ではなく、プロセス全体を再設計できる「ワークプロセスの専門家」を優先して採用すべきだと提言している。
キャリア形成においては、ソフトウェア開発や金融などの分野の労働者が、AIによる自動化の影響を受けにくい熟練技能職へのキャリア転換を模索する動きが見られる 。
一方で、従業員の知識や習慣を複製・再現するデジタルツインやAIアバターの技術が進化する中、従業員に支払う報酬の在り方も変化していくことが予想される。従業員はAIツールのトレーニングだけでなく、組織を去った後も自身のデジタルツインやAIアバターが継続的に使用されることへの対価を要求するようになるとGartnerでは予測している。
AI軍拡競争と経済ナショナリズムは、企業スパイという形でのインサイダーリスクを劇的に増大させている。Gartnerは、企業の人事部門はセキュリティ面における役割を拡大し、インサイダーリスク対策により多く投資する必要があるとしている。
AI時代において労働力の回復力と安全性を維持することは、2026年の人事における極めて重要になるという。CHROはAI利用がもたらすさまざまな問題や、AIが職場に浸透することで従業員が受ける心理的・行動的影響の兆候を発見できるよう、マネジャーやリーダーを支援する必要がある。
Gartnerでは、企業の人事部門が法務部門やIT部門と連携し、AIに関連する心理的損傷を予防、対応する計画を策定することがAI導入成功の鍵だとしている。
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