テストもデバッグもレビューも「AIエージェントとの協働」が標準に Anthropicが示す2026年の開発トレンド蓄積された技術的負債も解消? AIエージェントがもたらす8つの変化

Anthropicは「2026 Agentic Coding Trends Report」を公開した。コーディングエージェントの活用における主要な8つのトレンドを特定し、解説を加えたものだ。

» 2026年02月20日 13時00分 公開
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 Anthropicは2026年1月21日(米国時間)、「2026 Agentic Coding Trends Report」(2026年のエージェント型コーディングのトレンドレポート)を公開した。AI(人工知能)コーディングエージェントが2025年以来、ソフトウェア開発を変革していることを踏まえ、2026年のソフトウェア開発における主要な8つのトレンドを特定し、解説を加えたものだ。

 Anthropicは、ソフトウェア開発におけるAIの役割が根本的に変化しており、「エンジニアリングチームは2025年に、AIがテスト作成、バグ修正、複雑なコードベースのナビゲーションなど、実装ワークフローの全工程を処理できることに気付いた」との認識を示している。2026年にこの傾向はさらに加速し、本質的に、AIは開発者を支援するというよりも、開発者とコラボレーションするようになると予測している。

 こうした変化に伴い、開発者の役割も、自らコードを書くことから、コードを書くエージェントを指揮、調整することへとシフトしている。開発者は自らの専門知識・ノウハウを、アーキテクチャ設計、システム設計、戦略的判断に集中させている。

 さらにAnthropicは、同社の社会的影響調査チームによる「開発者は業務の約60%でAIを活用しているが、『完全に委任できる』タスクは0〜20%にとどまる」という調査結果を引用し、コラボレーター(協働者)としてのAIを効果的に活用するには、入念な設定とプロンプト作成、能動的な監視、検証、人間の判断が不可欠だとの見解を示す。

 「2026年にコーディングエージェントの活用を戦略的優先事項と位置付ける組織は、新たな可能性を切り開く。だが、単なる生産性向上ツールと捉える組織は、新たなルールが適用される競争環境で受け身で戦わざるを得なくなる。成功の鍵は、『AI活用の目的は、人間をプロセスから排除することではなく、人間の専門知識・ノウハウが最も重要な領域で、その力を最大限に引き出すことにある』という認識だ」(Anthropic)

 Anthropicは、コーディングエージェントが開発の在り方を変える「基盤トレンド」、エージェントの守備範囲を広げる「能力トレンド」、ビジネス成果に影響する「インパクトトレンド」に分類して8つの主要トレンドを次のように解説している。

基盤トレンド

ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の劇的な変化

 コードの記述やデバッグ、保守といった戦術的な作業の多くがAIに移行し、エンジニアはアーキテクチャやシステム設計、何を構築すべきかについての戦略的決定など、高レベルな業務にシフトする。コードを書くAIエージェントを指揮、調整する「オーケストレーター」としての役割を担うようになる。

 新しいコードベースやプロジェクトへのオンボーディングにかかる時間が、数週間から数時間へと劇的に短縮されることも予測されている。

コーディングエージェントがSDLCを変革させる(提供:Anthropic) コーディングエージェントがSDLCを変革させる(提供:Anthropic)

能力トレンド

単一エージェントから協調型チームへの進化

 2026年には、単一のエージェントではなく、複数のエージェントが連携して複雑なタスクを処理する「マルチエージェントシステム」が主流となる。

 この能力には、タスク分解、エージェントの専門化、調整プロトコルに関する新たなスキルに加え、複数の同時エージェントセッションのステータスを表示する開発環境、エージェントの出力を扱うバージョン管理ワークフローが必要となる。

長時間稼働するエージェントによるシステム構築

 エージェントは、数分で完了する個別のタスクを処理する段階から、数時間から数日にわたって自律的に稼働し、人間による定期的なチェックポイントを経て、アプリケーションやシステム全体を構築、テストする段階へと進化する。

 長時間稼働するエージェントは、数十回の作業セッションにわたり計画、反復、改良を実施し、発見に適応し、失敗から回復し、複雑なプロジェクト全体を通じて一貫した状態を維持するようになる。

 楽天のエンジニアは、コードベースが1250万行に上るオープンソースライブラリ「vLLM」に活性化ベクトル抽出手法を実装するタスクで、Anthropicの「Claude Code」を適用した。Claude Codeは1回の実行で自律的に7時間稼働し、作業を完了させた。実装結果は参照手法と比べて99.9%の数値精度を達成した事例がある。

インテリジェントコラボレーションを通じた人間による監視のスケーリング

 エージェントによる品質管理が標準化する。組織はAIエージェントを活用して大量のAI生成コードをレビューして、コードのセキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性やアーキテクチャの一貫性をチェックするようになる。

 高度なエージェントは、人間の判断が必要な場面を認識し、不確実な領域をフラグ付けし、ビジネスに影響を与える可能性がある意思決定をエスカレーションする。これにより、人間は全てを確認するのではなく、重要事項のレビューに集中できるようになる。

新たな領域とユーザーへの拡大

 COBOLやFortranといったレガシー言語や、あまり一般的でないドメイン固有言語にもコーディングエージェントの活用が拡大する。これにより、レガシーシステムの保守が容易になる。

 さらに、従来の開発者以外のサイバーセキュリティ、運用、データサイエンスといった分野の担当者も利用するようになり、適用の範囲は拡大する。

インパクトトレンド

生産性向上が変えるソフトウェア開発の経済性

 エージェントの活用により、プロジェクトのタイムラインが短縮され、ソフトウェア開発の経済性が根本から変化する。Time to Value(価値実現までの時間)が短縮されることでTCO(総所有コスト)が低下し、ROI(投資対効果)が向上する。

 かつてはコストを理由に実行不可能だったプロジェクトが実現可能となり、組織は市場機会により迅速に対応できるようになる。誰も対処する時間がなかったために蓄積されてきた技術的負債の解消も進むと予想される。

 通信大手TELUSのチームは1万3000以上のカスタムAIソリューションを作成し、エンジニアリングコードのリリース速度を30%向上させ、累計50万時間以上の業務時間を節約している。

非技術的ユースケースの組織全体での拡大

 営業、マーケティング、法務、オペレーションといった非技術部門が、エンジニアの手をほとんど、あるいは全く借りずに、独自のワークフロー自動化ツールを構築できるようになる。

 AIオーケストレーションプラットフォームを運用するZapierは、800以上のAIエージェントを社内に展開し、組織全体で89%の導入率を達成した。

エージェントの活用でセキュリティ防御も攻撃も進化

 AIエージェントは、セキュリティ対策の強化に役立つ一方で、攻撃者にとっても強力なツールとなる「デュアルユース」のリスクを持つ。攻撃の拡大や高度化に対抗するには、エンジニアが開発の初期段階からセキュリティを組み込むセキュア・バイ・デザインの重要性が増す。

2026年の優先事項

 Anthropicは、組織が計画すべき優先事項として以下を挙げている。

  • マルチエージェント調整の習得:単一エージェントでは対処できない複雑な課題に対応する
  • 人間によるエージェント監視のスケーリング:AIによる自動レビューシステムを活用し、人間の注意を最も重要な領域に集中させる
  • 非エンジニアを対象としたコーディングエージェントの導入拡大:エンジニアリング以外のドメインエキスパートにもコーディング能力を拡張させる
  • セキュリティアーキテクチャの組み込み:初期の設計段階からエージェントシステムにセキュリティを組み込む

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