「AIに仕事を奪われる」を考え直す 労働はAIが担い、人間はFIREできるかも?人類は「貴族」になる?

「AIに仕事を奪われる」というニュースに、誰もが戦々恐々とする現代。しかし、視点を変えればそれは「つらい労働からの解放」を意味しているのかもしれません。洗濯機や自動車がそうであったように、AIもまた、私たちの代わりに汗をかいてくれる存在だとしたら?

» 2026年02月26日 05時00分 公開

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「仕事がなくなる」は、本当に不幸か?

 AI(人工知能)に仕事を奪われる――ホワイトカラーにとって耳が痛いこの話題。できるだけ目をそらしていたいけれど、逃げられそうにありません。

 筆者は2025年末、AIに1つの仕事を取って代わられました。エンジニアの方々も、AI時代に生き残れるかどうか戦々恐々としていると聞きます。

 40代後半の筆者ですら“AI失業”が怖いのですから、キャリアの浅い若い人の不安はさらに大きいようです。その不安は学生にも波及し、中高生は「将来AIに奪われない仕事」を探して必死になっていると聞きます。

 でも、怖がって絶望するだけではつまらない。あえて前を向くために、「AIに仕事を奪われて起きる“いいこと”」を考えてみます。

仕事を奪われる←AIが仕事してくれている

 思い出してみてください。AIが現れて、“これまでと同じ仕事”がどれぐらいラクになったかを。AIに仕事を奪われる前に、「AIが仕事してくれている」のは事実です。

 ライター業では、“脳の負担”が劇的に減りました。資料をAIに要約してもらうことで、読み込む疲れが軽減されたし、下書きまでAIに任せることで、1行目を書き始めるつらさから解放されました。未経験の分野もAIに聞きながら書けるので、チャレンジしやすくなりました。

 そろそろ確定申告の季節ですが、毎年憂鬱(ゆううつ)だった記帳、申告作業も、AIのおかげでかなりラクになっています。「この数字の処理はどうすれば」とか、「会計SaaS(Software as a Service)の使い方が分からない」など困って手が止まったとき、「ChatGPT」や「Gemini」に聞けば、ほとんどの疑問をサラッと解決してくれるからです。

 最近、「『Claude Code』を使えば確定申告は一瞬で終わる」という投稿を「X」(旧:Twitter)で見ました。Claude CodeなどプログラミングAIを使いこなせる人ならば、確定申告などのルールが決まった作業は、簡単に自動化できるようです。いいなあ!

AIが奪うのは「仕事」であって「お金」ではない

 そもそも人類は、ラクになるために新しいものを発明してきました。洗濯機も自動車も表計算ソフトウェアも、つらい作業から人間を解放したり、人間には無理な作業を代行したりしてくれるツールです。

 AIも同じです。脳や指先(タイピング)を使う労働をある程度肩代わりしてくれ、人間以上の精度で“労働”をしてくれる。人間の脳や指先を酷使しなくても、情報の整理やツール開発といった労働を、AIがサラッとやってくれます。

 半面、「仕事」というレイヤーで考えて人間が不安になるのは、「仕事」=「お金」と考えているからです。私たちは「つらい労働の対価」としてお金をもらい、そのお金で生活を維持してきた、という認識があります。

 でもAIは、私たちから直接給料を奪っているわけではなく、労働を肩代わりしてくれているだけです。月額費用は取られますが、給料全部には相当しませんよね。

 AIがつらい労働を肩代わりしてくれるならば、人間は「労働のストレス」とは無縁になるはず。そもそも、全員が「労働」しなくてはならない社会の方が煩わしい。いまの社会で多くの人が憧れているのは「FIRE」(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)、働かないで食べられる世界です。

 つらい労働の大半をAIが担ってくれれば、人間は生産活動をせず、指示と消費だけする貴族のような生活ができるかもしれません。究極、人間が働かなくてもAIやロボットが付加価値を生み出してくれるなら、人間はただ「幸せに生きること」に専念すればいいはずです。

 「オーストラリアの緩和ケア病院で働く看護師が、患者に死ぬ直前に後悔したことを聞いたら、2位が『あんなに仕事しなければよかった』だった」、というブログが話題になりました。AIに仕事を任せられれば、「仕事をしなくていい」人生が、多くの人に開かれていくのではないでしょうか。

でも結局、仕事は増える気がする

 とはいえ歴史を振り返ると、技術革新のたびに「これで人間はラクになる!」と言われながら、なぜかどんどん忙しくなってきた、という皮肉な事実もあります。

 PCやインターネットがなく、紙と電話で仕事していた昭和の時代の方が、いまよりものんびり仕事していた気がします。メールやチャットができ、即レスの文化が生まれ、オンラインで仕事できるようになり、自宅や出先での作業が当たり前になり……。結局トータルの負担は減るどころか増えているような……。

 ラクになるために発明しているのに、仕事の効率が上がって求められる作業量も増え、むしろしんどくなる。結局AIも、同じ轍(てつ)を踏むような気がします。便利になった分だけ、新しい「やるべきこと」が増えて、結果、もっと忙しくなるような……。

 それに、「AIの仕事は完璧ではない」と、AIを使いこなしている人こそ感じているのではないでしょうか。AIは全自動ではありません。人間が指示し、人間がチェックしないといけないし、ハルシネーション(幻覚)の問題もまだまだ解決しそうにありません。AIに作業を任せたとしても、結局「AIに指示する」「AIのアウトプットをチェックする」という新しい仕事が生まれている状態です。

 そう考えると、AIのおかげでFIRE、という夢の世界はまだまだ来ないかも。AIが普及するとまた、AIがある世界を前提にした、新しい仕事が生まれるからです。そうやって新しく生まれた仕事でも、あなたがこれまでのキャリアで必死に身に付けてきたスキルや人間力が、きっと生きるはずです。

富士山が見える南国のリゾート(どこ?)で、憧れのFIRE(Nano Banana Proで作成)

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