中東紛争の激化は、世界のIT支出にどのような影響を及ぼすのか。今後のITインフラの運用や構築にもたらす変化とは。IDCの分析レポートを基に、これらを整理する。
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2026年2月末の米国・イスラエルによるイランへの攻撃をきっかけに、中東の紛争は激化している。こうした動きは、世界のIT支出にどのような影響を及ぼすのか。この点についてIDCは同年3月2日(米国時間)、分析レポートを公開した。エネルギー価格やサプライチェーン、サイバーセキュリティなど複数の観点から影響を整理している。
情勢が短期間で変化していることを踏まえて、IDCはレポートで「3カ月未満で収束する中東限定の紛争」を想定したシナリオを中心に分析した。このシナリオに基づくと、2026年の世界のIT支出は、従来の約10%成長という予測から、約9%成長へと伸びが鈍化する見通しだ。
中東・アフリカ(MEA)地域のIT支出は、2025年には約1550億ドルと世界全体の約4%を占めた。IDCは、MEA地域の2026年の年間成長率を当初5%だと見込んでいたものの、今回のシナリオでは3〜4%程度に縮小すると予測する。
中東紛争が2026年のIT支出に与える最大の影響は、エネルギー価格の変動だとIDCは指摘する。実際に2026年2月末以降の紛争拡大を受けて、原油価格は一時的に急上昇した。エネルギー価格の上昇により、世界全体でデータセンター運用や半導体製造などのコスト増につながると同社はみる。
世界のサプライチェーンにおいて、中東はエネルギー供給に加えて、物流の拠点としても重要な役割を担う。ホルムズ海峡を巡る緊張や物流の混乱が長期化すれば、世界のIT市場に深刻な影響が及ぶ可能性がある。世界のメモリ市場は紛争激化前から需給が逼迫(ひっぱく)しており、紛争によって状況がさらに悪化する恐れがあるとIDCは指摘する。
今回の紛争を受けて、クラウドサービスやデータセンターのレジリエンス(復元力)強化が一段と重要になると、IDCは指摘する。紛争に伴ってITインフラ停止リスクへの懸念が高まる中、クラウドサービスのユーザー企業やSaaS(Software as a Service)ベンダーにとっては、複数のアベイラビリティゾーン(AZ:地域データセンター群)によるマルチAZが事実上の前提となるとの見方を示す。
マルチAZなどの分散アーキテクチャを実現するには、それを支えるデータセンターの整備が不可欠となる。ただしデータセンター建設はコスト増加やサプライチェーン混乱の影響を受けやすく、短期的には投資やプロジェクトの進行が鈍化する可能性があると、IDCは指摘する。
IDCによると、今回の紛争を受けてセキュリティ予算は拡大する可能性が高い。同社は、中東では政府主導のセキュリティ施策が拡大し、同地域で事業を展開する多国籍企業の間でもセキュリティ対策投資を増やす動きが強まるとみる。
紛争が比較的短期にとどまれば、企業のIT支出計画に大きな影響は及ばないというのが、IDCの見方だ。近年は関税措置や地政学リスクといった外部ショックに直面しても、IT需要は堅調に推移してきた。特にAIへの投資は優先度が高くなる傾向があり、企業は関連投資を進めている。他に大きな外部要因が生じない限り、AI投資が大幅に縮小する可能性は低いと同社は予測する。
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