ネットワーク分離の悩ましい“データ受け渡し問題”をゼロトラストで解消 公立校はどう実現?2万人が利用するネットワークインフラと認証システムを刷新

分離したネットワーク間でのデータ受け渡しは、運用負荷の増大や情報漏えいのリスクを招く。府中市教育委員会はゼロトラストを具現化するネットワークインフラにより、課題の解消を図った。どのような仕組みなのか。

» 2026年07月09日 13時00分 公開
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 府中市教育委員会は、約2万1000人が利用するネットワークインフラや認証システムを構築した。利用者は、同市立の小中学校33校における教職員約2000人と、児童生徒約1万9000人だ。2026年1月に教職員向けの運用を開始し、同年4月には児童生徒向けを含めて全面展開した。

 従来は校務系と学習系のネットワークが分離していたことから、教職員は利用するシステムに応じてデバイスを使い分ける必要があった。成績処理などの校務の際は、主に職員室に固定設置した校務用デバイスを使うことが前提だった。他のデバイスとの間でデータの受け渡しが必要になることがあり、その際の運用負荷や情報漏えいリスクが課題となっていた。

悩ましい“データ受け渡し”が不要な仕組みを「ゼロトラスト」でどう実現?

 こうした課題を解消するために、府中市教育委員会は通信のたびにユーザーやデバイスを確認する「ゼロトラスト」の考え方を取り入れて、システムの利用形態を見直した(図)。具体的な取り組みを整理する。

画像 図 府中市教育委員会が構築したネットワークインフラと認証システムの全体像(出典:内田洋行のプレスリリース)《クリックで拡大》

 ゼロトラストを具現化する手段として、府中市教育委員会はFortinetのSASE(Secure Access Service Edge)サービス「FortiSASE」を採用した。FortiSASEにより、教職員は1台のデバイスで校務系と学習系のシステムを利用でき、校内外を問わず業務ができるようになった。

 校務関連のキーワードを含むデータについては、USBメモリなどの外部記録媒体への書き込みを制限する仕組みを導入した。教職員がこうしたデータをメールで送信する際には警告を表示する他、添付ファイルを自動的に共有リンク経由での送信に切り替えて、ファイル閲覧時にワンタイムパスワードによる認証を求めるようにした。

 教職員向けには、システムへのアクセスを登録済みデバイスに限定するデバイス認証に加えて、顔認証とPIN(個人識別番号)を組み合わせた多要素認証を導入した。児童生徒向けには、デバイスごとの証明書認証を採用し、セキュリティと利便性を両立させた。

 HENNGEの統合ID管理サービス「HENNGE One」を採用し、「Microsoft 365 Education A5」「Google Workspace for Education」といったクラウドサービスのアカウント情報や権限を一元管理した。利用者は1組のID/パスワードで、複数のクラウドサービスを利用できるようになった。

校務での「Copilot」活用を試行、運用支援体制も整備

 府中市教育委員会は今回のネットワークインフラと認証システムの構築に合わせて、教職員用デバイスも刷新し、富士通のノートPC「LIFEBOOK U9314X/S」を約2000台導入した。LIFEBOOK U9314X/Sは、IntelのPC管理/セキュリティ支援技術群「Intel vProプラットフォーム」を採用し、OS起動前の段階から不審な挙動を検知する仕組みを備える。

 今回の取り組みの一環として、府中市教育委員会は市立小中学校を対象に、Microsoftの生成AIツール「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)を活用した校務支援も開始した。校長や副校長、主幹教諭、ICT担当教員など、学校運営の中核を担う教職員を中心に、各校7人がCopilotを利用。保護者向け案内文の作成や会議資料の整理、議事録の要約などに生かす。

 府中市教育委員会は、ネットワークインフラの運用保守やヘルプデスク、デバイスのキッティング、ICT支援員による活用支援などを内田洋行グループに委託した。同グループは専任の巡回要員を配置し、障害発生時にはシステムエンジニアがリモートで対処する体制も整えた。内田洋行は2026年6月1日、本事例を発表した。

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