AIが攻撃を自動化する今、防御側も人手だけでは追い付かない。Microsoftは、複数のAIエージェントが役割を分担しながら継続的に監視、調査、対処する新たなセキュリティ基盤「Project Perception」を発表した。“Mythos超え”のAIモデルを搭載した同基盤の全体像を探る。
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Microsoftは2026年7月28日(現地時間、以下同)、AIエージェントを悪用したサイバー攻撃に対抗する新たなセキュリティ基盤「Project Perception」を発表した。2026年8月3日にパブリックプレビューを開始する予定だ。
生成AIやAIエージェントの普及によって、自律的に推論しながら攻撃を実行する仕組みが現実味を帯びる中、攻撃の生成コストは下がる一方、防御側は保護すべき資産やシステムの増加、環境の複雑化への対応を迫られている。Microsoftは、人間同士の攻防を前提とした従来のセキュリティ運用では、AIエージェントが高速に展開する攻撃に十分対応できなくなるとして、新たな防御アーキテクチャを開発したとしている。
Project Perceptionはデジタル環境全体のリスクを継続的に把握し、膨大なコンテキストを基に推論しながら機械速度で対応することを目指したAIネイティブのセキュリティ基盤だという。
従来のAIアシスタントが担当者の判断や作業を支援することを主な役割としていたのに対し、Project Perceptionでは複数のAIエージェントが役割を分担しながら環境を監視、分析、改善する点が特徴となる。Microsoftは、アラートを増やすのではなく、状況把握、推論、対応を継続的に繰り返すことで、防御側が主導権を維持できる設計だとしている。
中核となるのは「Red team」「Blue team」「Green team」の3種類の専門エージェントだ。
Red teamエージェントは、攻撃者に悪用される前に侵害経路や潜在的な弱点を発見する。Blue teamエージェントは、発生したイベントを調査し、環境全体の文脈を踏まえて実質的なリスクを判断する。Green teamエージェントは、設定変更や是正措置を実施し、防御態勢を継続的に改善する。これら3種類のエージェントが連携し、組織全体のセキュリティ態勢を継続的に把握、評価、改善する。
Project Perceptionはシグナルとセンサー、セキュリティコンテキスト、モデル、ハーネス、エージェント、アクチュエーターの6層で構成される。
シグナルとセンサーがIDやエンドポイント、クラウドなどから情報収集し、セキュリティコンテキストがそれらをAIが利用しやすい文脈に変換する。モデルが推論を実行し、ハーネスが複数のモデルやエージェントを連携させる。エージェントが判断結果を各業務に適用し、アクチュエーターが実際の防御措置に反映する。
Microsoftは、自社が保有するIDやエンドポイント、アプリケーション、データ、クラウド、AIシステムなどの幅広いテレメトリーや脅威インテリジェンスをProject Perceptionに取り込み、推論や優先順位付け、対応に活用する。
セキュリティコンテキストでは、環境内の資産やID、リスク、活動履歴などの関係性をグラフ構造で保持し、Microsoftはこれを「環境全体の見取り図」と表現する。複数のエージェントはこの共通のコンテキストを利用することで、それぞれが情報を一から収集・整理する必要がなくなり、ほぼリアルタイムで同じ状況認識を共有できる。
Microsoftは、この仕組みによって推論の正確性や一貫性を高めるとともに、大規模運用に必要な計算資源や処理時間を抑えられるとしている。
Project Perceptionでは、フロンティアモデルとサイバーセキュリティ特化型モデルを組み合わせるマルチモデルアーキテクチャを採用している。
Microsoftは、全ての業務に最適な単一のAIモデルは存在しないとの考えから、品質や応答速度、コストなどを基準に、タスクごとに最適なモデルを選択する設計を採った。これによって特定モデルへの依存を避けながら、AIの進化を柔軟に取り込めるとしている。
併せて、自社開発モデルの第一弾となるソフトウェア脆弱(ぜいじゃく)性管理向けモデル「MAI-Cyber-1-Flash」も公開した。同モデルは、脆弱性対応を支援するマルチモデルエージェント群「MDASH」に組み込まれる。
Microsoftによると、両者を組み合わせた構成は、サイバーセキュリティAIの性能を評価するベンチマーク「CyberGym」で96%を記録した。比較対象として示した「Claude Mythos Preview」を12ポイント上回り、現在提供しているMDASH構成と比べてAI推論コストを約50%削減したという。Microsoftは、豊富な学習データとマルチモデル構成を最適化した成果だと説明している。
今後はソフトウェア脆弱性管理だけでなく、他のセキュリティ業務にもMAI-Cyber-1-Flashの適用範囲を広げる計画だ。
Project Perceptionは「Microsoft Security」製品群と連携し、AIエージェントが得た洞察を実際の防御措置に反映する。各層には責任あるAIの考え方や既存のセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスの仕組みを組み込み、人間が最終的な統制を維持する設計としている。
AIが攻撃と防御の速度や規模を大きく変えつつある中、防御側もAIエージェントを前提とした運用へ移行できるかが今後の焦点となる。Project Perceptionが掲げる「複数のAIエージェントが自律的に役割分担しながら防御する」という構想が、実際の運用現場でどこまで有効性を示せるかが注目されそうだ。
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