厚労省、情報公開事務の迅速化に生成AI・RAG基盤を導入 どう構築したのか職員の文書要約や回答作成を支援

日本オラクルは、厚生労働省が同社のAIサービスを活用し、情報公開等事務の効率化に向けたAI活用基盤を構築していると発表した。第1段階として、前例や関連文書の意味検索システムの稼働を開始しているという。

» 2026年08月14日 13時00分 公開
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 日本オラクルは2026年7月7日、厚生労働省(大臣官房 総務課 公文書監理・情報公開室)が「Oracle Autonomous AI Database」や「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)などのAIサービスを活用し、情報公開等事務の効率化に向けたAI(人工知能)活用基盤「Ministry of Health, Labour and Welfare Organization AI」(MOA)を構築していると発表した。

 厚生労働省は、開示請求対応事務、審査請求対応事務、審理手続対応事務を対象に、前例や関連文書を効率的に検索できる意味検索システムと、職員の文書要約や回答作成を支援する対話型AI RAG(検索拡張生成)システムの構築を段階的に進めているという。

請求件数は年々増加、事務処理の早期化が課題に

 公文書監理・情報公開室には、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づく開示請求や、「行政不服審査法」に基づく審理手続などへの適切かつ迅速な事務処理が求められる。

 開示請求対応事務では、請求内容に応じた所管部署の選定、対象文書の選定、開示・不開示の判断に向けた前例確認、決定通知書の作成・審査など、複数の部署と手順をまたぐ業務が発生する。請求件数は年々増加傾向にあり、扱いが難しい案件も多いことから、事務処理の早期化が課題となっていた。

ベクトル検索で前例を探し、RAGで文書作成を支援

 MOAは、Oracle Autonomous AI Databaseを中核とするデータ基盤に多様な形式の文書データを格納し、ベクトル検索を活用した意味検索を実現する。職員は過去の事例や関連文書を自然言語に近い形で検索し、類似する前例や判断材料を迅速に参照できるようになる。生成AIサービス「OCI Enterprise AI」を活用した対話型AI RAGシステムは、文書要約や請求者への回答案の作成支援など、職員の知識活用と文書作成を支援する。

 ユーザーインタフェースにはローコード開発環境「Oracle APEX」を採用し、業務現場の利用に適したアプリケーションを効率的に実装する。「OCI Functions」「OCI Object Storage」などのOCIサービスも組み合わせた。文書データの蓄積、検索、生成AIとの連携、業務アプリケーションの実行を統合的に支える構成だ。

ISMAP登録のOCIに専用テナント構築 多層防御を実現

 セキュリティ面では、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度」(ISMAP)に登録されているOCIに、MOA専用のテナント環境を構築した。

 「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」に基づき、各レイヤーで対策を講じる多層防御の構成を採用した。利用時には多要素認証に加え、アクセス元IPアドレスの制限や権限分掌による認証・認可の制御を実装し、ネットワーク通信と保存データを暗号化している。

 厚生労働省は2026年1月から3月にかけてAI知識研修と設計・構築を進め、第1段階として意味検索システムを4月に稼働開始した。第2段階では対話型AI RAGシステムの実装を進めている。開示文書の墨消し作業を支援する機能の追加なども検討しているという。

 公文書監理・情報公開室長の渡邉一真氏は「当室では、オラクルのAI活用基盤を導入し、これまで人手に依存していた過去事例・関連文書の検索を効率化している。過去文書の調査や整理をAIが補助することで、職員は判断や説明責任といった本来業務に一層集中できる環境づくりを進めている」と述べている。最終的な判断や審査は、引き続き職員が担当するという。

 プロジェクトには、システムエグゼが導入パートナーとして参画し、日本オラクルのカスタマー・サクセス・サービス部門も設計・構築を支援している。

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