「出社しないとつながりが薄れる」は誤解? 約7700人の追跡調査が示す実態米コロラド大の調査研究(2/2 ページ)

» 2026年08月22日 13時00分 公開
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離職率を左右するのは勤務場所そのものではなく「ウェルビーイング」

 研究チームは、2023年に実施したアンケート調査の回答データと、その1年後における実際の離職記録を照合し、働き方と離職率の関連性についても追跡検証した。

 その結果、ウェルビーイングのスコアが高い従業員ほど、1年後に組織を離職する可能性が低いことが分かった。一方で、出社勤務か在宅勤務かという勤務場所の区分そのものは、離職を直接予測する強力な要因にはなっていなかった。つまり、データが示したのは、「テレワーク勤務形態が高いウェルビーイングをもたらし、その向上したウェルビーイングが結果として離職率の低下につながる」という間接的な相関関係だ。

 ジョンソン氏は「高いウェルビーイングを実感している従業員は仕事を辞める可能性が低くなる。これは極めて理にかなった結果だ」と指摘。従業員の定着率を高める目的でオフィス勤務を義務付けたとしても、それが従業員のウェルビーイングを損なう形になれば、離職防止という本来の目的とは逆の結果を招くリスクがあるとしている。

自律性と柔軟性がストレスを低減させる

 同研究では、テレワーク勤務者がなぜ高いウェルビーイングを報告したのかという詳細な心理的理由までは直接調査されていない。ジョンソン氏は、自律性と柔軟性についての近年の研究成果を基に、その要因を分析している。

 要因の一つは、テレワーカーが自身の作業環境や日々のスケジュールで高い裁量権を持っている点だ。ジョンソン氏は「自らの環境を自己決定できる裁量権を持っている場合、人はより前向きな成果や心理状態を得る傾向がある」と述べている。

 もう一つの大きな要因は、オフィス出社に伴う日常的な細かなストレス要因の排除だ。

 「長時間の通勤や交通渋滞に時間を費やすことは、ウェルビーイングに明確な悪影響を与える。それに加えて、オフィス勤務には日常の『細かなストレス要因』が伴うものだ」(ジョンソン氏)

 在宅勤務は付随的な調整ストレスを低減させ、従業員が限られた時間とエネルギーを本来の業務や生活の質向上に振り分ける余力を生み出す効果を持つという。

 ジョンソン氏は、調査結果が従業員のオフィス回帰方針を巡って議論を続ける企業のリーダー層に対し、重要な示唆を与えていると主張している。

 「研究データは、一律の出社回帰命令を出すよりも、テレワークやハイブリッドワークを認める方が組織にとって優れた成果をもたらすことを示している。しかし現在のリーダー層の多くは、データに基づいて合理的な判断を下しているとは言えない。過去に慣れ近しんだ従来のやり方に単に戻ろうとしている側面が強い」(ジョンソン氏)

 同氏は「テレワーク勤務を希望する従業員がいるのなら、その選択を認めることが推奨される。働き方の選択肢を一方的に奪うことは、ウェルビーイングの観点からおそらくプラスには働かない」と指摘した上で、「柔軟な働き方という潮流は、一時的な流行ではなく今後も定着し続ける」と結論付けている。

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