特に注意したいのが、既存システムの影響範囲と業務ロジックの把握です。
ROUTE06の調査では、モダナイゼーションで重視する点として「業務を止めずに移行できること」(59.1%)、「影響範囲・コスト・期間を事前に可視化できること」(57.7%)が上位を占めました。
プログラミング言語の変換においても、「変換時のバグ・不具合の発生」(62.2%)や「業務ロジックの再現性」(55.1%)が大きな懸念事項となっています。
COBOLのコードをAIがJavaに変換できたとしても、それだけで刷新が成功したとは言えません。「その処理がなぜ必要なのか」「新しいシステムでも同じ業務上の振る舞いを再現できているか」「変更によって他の機能に影響しないか」を確認する必要があります。システムが属人化し、設計資料も不足しているほど、その確認作業が難航します。
一方で、モダナイゼーションに成功している企業に共通する要因としては、「明確なロードマップ策定」(55.8%)、「影響範囲の事前可視化」(55.2%)が上位に挙げられました。
ROUTE06は、課題の根本は「影響範囲・コスト・品質が事前に見えないこと」にあると指摘します。判断材料の整備をAIで補いながら、影響範囲やコストを事前に可視化して段階的に移行できる仕組みを整えることが、前進の鍵になるとしています。
生成AIは、これまで行き詰まっていたレガシーシステム刷新を前進させる強力な手段になる可能性があります。
ブラックボックス化したコードの解析や仕様書の生成、プログラミング言語の変換、テストの自動化をAIで効率化できれば、技術者不足の中でもモダナイゼーションを進められる可能性は大きく高まります。
日立がAIエージェントをモダナイゼーションの各工程に組み込もうとしているように、今後の基幹システム刷新ではAI活用が重要な前提になっていくでしょう。
ただし、AIがあれば自動的に脱メインフレームを実現できるほど、現実のレガシーシステムは単純ではありません。
脱メインフレームが差し迫った課題となっている今こそ、「AIで何ができるか」だけではなく、「何を残し、何を変えるのか」「既存システムがどのように動いているのか」「変更によってどこに影響が及ぶのか」を事前に把握する重要性が増しています。
今後問われるのは、AIを使うか使わないかではありません。属人化し、ブラックボックス化した既存システムの仕様や業務ロジックをAIも駆使して正しく読み解き、限られた技術者でも長期的に維持、改善できる仕組みへどう移行するかです。
生成AIは「脱メインフレーム」の強力なエンジンになり得ます。しかし、移行先だけを急いで決めるのではなく、まず、現在地を正確に把握、可視化できるかどうかが、プロジェクトの成否を左右することになりそうです。
富士通も日立も去る、日本での「メインフレーム脱却」が一筋縄ではいかない理由
メインフレームに眠る「年代物のCOBOLコード」、AIでも苦戦する"読みにくさ"の正体
常石造船はなぜ「延命を続けたレガシーシステム」の刷新を“一気に”進められたのか?
COBOLも古いJavaももう“塩漬け”にしなくていい? AIを制御し「数年を数日まで」短縮できるレガシー刷新の今
「COBOL技術者いない」「仕様書ない」レガシー継承、AIベテランエンジニアでClaude Code連携も可能にCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.