「Wi-Fi 8」で何が変わる? 「Wi-Fi 7」と“速さ勝負”はしない、無線LANの新たな進化早くも次世代ルーターが登場

「Wi-Fi 8」に対応する製品が早くも姿を現し始めた。無線LAN規格がWi-Fi 8になることで、家庭やオフィスの無線LANは何が変わるのか。次世代規格の特徴を見てみよう。

» 2026年09月08日 13時00分 公開
[@IT]

 「Wi-Fi 7」の普及もこれからという中、早くも無線LANの次世代規格「Wi-Fi 8」(IEEE 802.11bn)に対応する製品が出てきた。Wi-Fi 7からWi-Fi 8になることで、無線LANの通信はどう変わるのか。従来、無線LAN利用時に生じがちだった“つながりにくさ”などの課題は、どう解消されるのか。

 ネットワーク機器ベンダーのTP-Link Systemsは2026年9月1日、Wi-Fi 8対応の無線LAN製品群を発表した。Wi-Fi 8で導入が進む技術と併せて参照しつつ、その変化を見てみよう。

Wi-Fi 7と何が違う? 次世代規格「Wi-Fi 8」の進化とは

 無線LANの新しい規格というと、「最大○Gbps」といった通信速度の向上に目が向きがちだ。しかし実際の利用環境では、ルーターからの距離や接続端末数、他通信との干渉など、さまざまな要因が影響する。

 Wi-Fi 8でも焦点の一つになるのは、そうした実際の利用環境における通信品質が改善できるのかどうかだ。どのような進化が盛り込まれているのか。

 TP-Linkは、Wi-Fi 8が対処する通信上の問題として3点を挙げ、それに対応する複数の技術を紹介している。

 課題の1つ目は家の端などで電波が弱くなること。2つ目は多数の端末が帯域幅を取り合うことで発生する混雑。3つ目は電波の干渉によって通信が不安定になることだ。

家の端でもつながりやすくする「ELR」「DRU」

 電波が弱くなりやすい場所での通信を改善する技術として挙げられているのが「ELR」(Enhanced Long Range)と「DRU」(Distributed Resource Unit)だ。

 TP-Linkによると、ELRとDRUは部屋の端などでの通信範囲を広げるとともに、ルーターから離れた端末や、低消費電力の端末からデータを送る際の通信性能を高めるという。「ルーターの近くでは速いのに、離れると遅くなる」といった問題の改善につながる技術といえる。

多数の端末による混雑に対処する「NPCA」

 2つ目の混雑への対策として挙げられているのが、「NPCA」(Non-Primary Channel Access)だ。

 TP-Linkによれば、NPCAによって、多数の端末が同時に接続する場合でもネットワークの応答性を維持しやすくなる。

 現在ではPCやスマートフォンだけでなく、テレビやゲーム機、家電など、家庭でも多数の機器が無線LANにつながる。こうした端末が同時に通信する状況での安定性を改善する狙いがある。

電波の干渉があっても安定させる「UEQM」と新しいMCS

 3つ目が、電波の干渉によって通信が不安定になる問題への対策だ。

 TP-Linkは、このための技術として「UEQM」(Unequal Modulation)と新しい「MCS」(Modulation and Coding Scheme)を挙げている。これらによって、電波の干渉が大きい厳しい通信環境でも、安定したスループットを維持しやすくするという。

 例えば集合住宅やオフィスのように、多数の無線LANが存在する環境での通信を安定化させる効果が見込まれる。

Wi-Fi 8が目指すのは「最高速度」より「安定性」?

 TP-LinkはWi-Fi 8に対応する製品として、無線LANルーター「Archer 8 Ultra」や無線LANメッシュシステム「Deco 8 Ultra」などをラインアップする。Archer 8 Ultraは、2.4GHz、5GHz、6GHzの3つの周波数帯を利用するトライバンドに対応し、データ転送速度は最大19Gbps。2026年9月30日から一部地域で予約受付を開始する予定だ。

TP-Linkが発表したWi-Fi 8製品群 TP-Linkが発表したWi-Fi 8製品群(提供:TP-Link)

 Wi-Fi 8のベースとなるIEEE 802.11bnの標準化は、IEEE(米国電気電子学会)のスケジュールでは2028年ごろの策定完了が見込まれている。現時点で想定される規格上の最大速度は46Gbpsで、Wi-Fi 7と同等だ。

 TP-Linkが挙げた3つの問題と技術を見ると、Wi-Fi 8が目指している方向性が見えてくる。

 ルーターの近くだけではなく家の端でも、多数の端末がつながっていても、周囲からの干渉があっても、できるだけ安定した通信を維持することだ。つまり、条件が良い場合の最高速度だけではなく、実際に使うさまざまな状況で通信品質を高めようとしている。

 「最大何Gbpsなのか」だけではなく、安定性やつながりやすさなども考慮して新規格の進化を見ることが重要になってくるといえそうだ。

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