NTTグループと富士通グループの1Finity、三菱ケミカルは、60GHz帯の無線LAN技術などの大容量・低遅延の通信技術を用いて、700キロの遠隔から自律型ロボットなどを制御する設備点検を成功させた。どのような手法が取られたのか。
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石油化学コンビナートのような大規模な生産拠点の点検を、遠隔から自律型ロボットとAI(人工知能)に任せられれば、危険を伴う作業現場の負担を大きく減らせる。だがそれには、映像を遅延なく送り、リアルタイムでAIが解析できる大容量かつ低遅延の通信が欠かせない。
岡山県の水島臨海工業地帯(水島コンビナート)では大容量・低遅延の通信を介し、約700キロ離れた東京都内の拠点から遠隔で操作・監視し、設備の異常やコンクリートのひび割れを検知できることが確認された。
NTT東日本、NTTドコモビジネス、NTTドコモソリューションズ、NTTデータグループの4社(以下、NTTグループ)と、富士通グループの1Finity、三菱ケミカルが、コンビナート屋外設備点検の高度化として取り組んでいるものだ。
約700キロもの距離を隔てながら、走行するロボットが撮影する映像をほぼ遅延なく送り、リアルタイムでAI解析する――。これを実現するために、60GHz帯の無線LAN技術や、遠隔の拠点を低遅延でつなぐための通信技術が使われている。
NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルの3者は、大容量・低遅延の通信技術とフィジカルAI技術を用いて、水島コンビナートに配置した四足歩行ロボットと四輪駆動ロボットを、約700キロ離れた東京都内の拠点から遠隔で操作・監視した。カメラとマイクで取得したデータを低遅延で送り、AIによる振動・音の異常検知やデジタルツインでのひび割れ検知を行った。
フィジカルAIとは、映像やセンサーで捉えた現実世界の情報をAIが認識し、ロボットなどの物理的な動作に結び付ける技術を指す。
通信技術としては、「IOWN APN」(オールフォトニクスネットワーク)と、IEEE 802.11ad規格に基づく60GHz帯の無線LAN技術である「WiGig」(Wireless Gigabit)を使用。水島コンビナートにおいて、両者を組み合わせた大容量・低遅延通信環境を構築した。2026年2月に、リアルタイムで大量のデータ収集が可能であることを確認。IOWN APN環境には、NTTドコモビジネスの「docomo business APN Plus powered by IOWN」を使用している。
IOWN APNは、NTTが提唱する次世代ネットワーク構想の中核技術で、電気信号ではなく光信号を用いることで超低遅延かつ大容量の通信を実現する。
岡山事業所構内には、複数のWiGigアクセスポイントを配置し、約150×150メートルのエリアで広域無線通信環境を構築した。さらに、NTTアクセスサービスシステム研究所が開発を進める「端末主導動的サイトダイバーシティ制御技術」を採用。WiGig装置を搭載したロボットがエリア外周を走行する際、最適なアクセスポイントを瞬時に選択・切り替えることで、ロボットが動き続けられる安定した環境を実現した。
東京都内ビルのオペレーターは、岡山事業所の四足歩行ロボットを遠隔操作し、人の補助なく150×150メートルの外周を一周させた。通信が遮断された際にロボットが安全に停止することも確認した。自律走行では、ロボットがセンサーのみで地図を生成しながら自己位置を見失うことなく走行し、障害物(人や物)を認識して回避できた。四輪駆動ロボットも同じ環境で自律走行できることを確認した。
ロボットが取得した映像データは、約700キロのIOWN APNを介して岡山から東京へ送信した。ロボットが走行中でも、映像の遅延時間は目標の500ミリ秒以内を達成。映像ストリーミングを維持したままロボットの安定的な自律走行が可能であることを確認し、遠隔監視・制御を支える大容量・低遅延通信環境の有効性を実証した。
振動と音に関する異常検知では、異音(水撃音)のするポンプ機と配管を対象にした。四足歩行ロボットに搭載した非接触のカメラとマイクで映像・音響データを同時に取得し、AI解析で異常を検知できることを確認した。ロボットが近くで撮影・集音したデータをAI解析したところ、普段とは異なる異常の発生を検知でき、その結果は配管に取り付けたセンサーの数値と目立った差はなかったという。
ひび割れ点検では、四輪駆動ロボットを外周に一周させて3D空間マップを作成し、現実の設備を仮想空間に再現する「デジタルツイン」の基礎とした。ロボットが取得した高精細な映像をIOWN APN経由で東京へ送り、画像認識AIで解析してデジタルツインへ反映した。コンクリートのひび割れ情報が即時可視化され、画像を押下すると詳細を確認できた。映像取得からAI解析、反映までの一連の流れは500ミリ秒以下、映像伝送のパケット損失も0.1%以下という安定性で、将来ひび割れに進展し得る微細なひびの検出も確認できたとしている。
現場作業員の負担軽減を本格的に進めるには、映像、音響、臭気、温度など多様なデータを統合した「人に代わる認知機能」をさらに高める必要がある。3者は今後、複数種類のデータを統合的に扱うマルチモーダルAIに対応したコンピューティング基盤の高度化に向けて、さらなる実証を進めるとしている。
本検証はNTTグループ、1Finity、三菱ケミカルの3者が2026年6月1日に発表したもの。
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