AIインフラには、もう一つ考えなければならない問題があります。それが継続的なコストです。
高性能なGPUサーバを導入すれば、それで投資が終わるわけではありません。GPUを動かすには大量の電力が必要です。さらに、その熱を処理するための冷却設備、データセンターの設置スペース、ネットワーク、保守・運用などにも継続的な費用がかかります。
生成AI用のコンピュータは従来のコンピュータと比較して、同じ床面積当たり10倍以上の電力を消費すると言われています。
つまり、GPUは使われていなくてもコストを生みます。これは、AIインフラの価値を「どれだけGPUを保有しているか」という設備規模だけで評価してはいけない理由でもあります。
例えば、1000基のGPUを持っている企業と500基のGPUを持っている企業があったとして、後者がGPUを高い稼働率でサービスに利用し、顧客価値や収益を生み出しているのであれば、単純に前者の方が優れたAI基盤を持っているとは言えません。
AIインフラへは「どれだけ整備したか」だけではなく、「どれだけ使われているか」「その結果として何を生み出したか」を見る必要があります。
ここまで述べてきたように、日本のAIインフラ整備は着実に前進しています。
国内にGPUを確保し、大規模なAIデータセンターを整備することは、AI時代の産業競争力を考える上で欠かせません。計算資源を海外に全面的に依存せず、日本国内でAIを開発・運用できる選択肢が増えていることは、大きな前進です。
一方で、ここから先はインフラ投資の評価軸そのものを変える必要があります。重要なのは、GPUの保有台数やデータセンターの床面積ではありません。その計算資源から、どれだけのAIサービスや事業価値を生み出せたのか。この視点が必要です。「何を導入するか」だけでなく、「何を実現するために使うのか」を考える必要があるのです。
こうした具体的な「出口」とインフラ投資を結び付けて初めて、AI計算基盤は産業競争力に変わります。
日本はこれまで、国の支援も活用しながら「計算資源という箱」を整えるフェーズを大きく前進させてきました。次に必要なのは、「箱を増やす」ことから、「箱の上で動くサービスを増やす」ことへの転換です。
ただし、ここで一つ疑問が残ります。
なぜ日本では、インフラ整備に比べて、その上で動くソフトウェアやサービスの開発が遅れやすいのでしょうか。単に「企業がAIを使いこなせていない」という話ではなく、その背景には、日本のIT産業が長年築いてきた構造も関係しています。
次回は、日本で「出口」を生み出しにくくしている構造を掘り下げながら、AIインフラに求められるソフトウェアと運用、そしてネオクラウドが示す新たなサービス提供モデルについて考えます。
富士通、シトリックス・システムズ・ジャパンで開発、サポート、ソリューションエンジニア業務に従事し、デル株式会社(現:デル・テクノロジーズ株式会社)の事業部長を経て現職に至る。米国シリコンバレーを中心とした海外スタートアップ企業の日本法人立ち上げも複数経験しており、日本市場への製品展開に豊富な経験を持つ。トゥモロー・ネットでは、ITエンジニアとしての経験を生かして企業経営全般に関与している。
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