通信の高速化や安定性の向上は、これまで難しかった業務を実現することにもつながります。その一例が、建設現場における重機の遠隔操作です。
NTT、NTT東日本、大成建設は2026年4月10日、1人の作業員が1台の操作卓から3台の重機を遠隔操作・自動制御する実証実験に成功したと発表しました。
実験では、三重県内の2拠点を次世代光通信基盤「IOWN APN」(オールフォトニクスネットワーク)でつなぎ、現場には「ローカル5G」と60GHz帯の無線LAN技術「WiGig」を組み合わせたネットワークを構築しています。
重機の遠隔操作には、作業現場の高精細映像を大量に伝送するとともに、操作信号を遅延や揺らぎの少ない状態で届ける通信環境が必要です。今回の実証では、ローカル5Gによって広域の自動制御用ネットワークを構築し、WiGigによって映像や制御信号を低遅延で伝送しました。その結果、通常は3人で実施する土砂の掘削から運搬、敷きならしまでの一連の工程を、1人の作業員が3台の重機の遠隔操作と自動制御で完結できることを確認しています。
NTT、NTT東日本、大成建設の3社は、2026年度に大型造成工事などの現場で実証を行い、2027年度にはダムの堆砂(たいしゃ)対策への適用を目指すとしています。
無線通信の進化は、通信速度そのものについても新たな段階に進んでいます。
NTTは2026年9月14日、屋外で100メートル離れた地点に、毎秒2テラビット(2Tbps)のデータを無線伝送する実証実験に成功したと発表しました。
2Tbpsは、実用化に向けた開発が進む800Gbpsや1.6Tbpsといった次世代の光通信に匹敵する速度です。NTTによると、ミリ波・サブテラヘルツ帯の無線伝送として世界最高速だといいます。
この超高速伝送を実現するために利用したのが、100〜300GHzの周波数帯を指す「サブテラヘルツ帯」です。広い周波数帯域を利用でき、大容量のデータ伝送に適している一方、高い周波数の電波には伝送距離を延ばしにくいという課題があります。
NTTが取り組んできたのは、電波の「軌道角運動量」(OAM)を使う「OAM-MIMO多重伝送方式」です。OAMを持つ電波は波面がらせん状に回転し、異なるモードの電波同士は干渉しにくくなります。このため、複数のデータを同じ時間、同じ周波数帯で並行して送れます。今回は最大22の信号を空間的に多重し、合計2Tbpsを実現しました。
NTTは2023年に1.4Tbpsの無線伝送に成功していましたが、伝送距離は1メートルでした。今回は、反射鏡でアンテナの拡大像を作り電波を特定方向に強く送受信する「イメージングリフレクタ技術」と、アンテナの向きのずれを補正する「軸ずれ補正技術」を開発し、100メートルまで延ばしています。
光ファイバーではなく無線を使用している理由の一つは、ケーブルを敷設する必要がないことです。AIの普及でデータセンターの通信量が増大する中、ネットワークにも一層の大容量化が求められています。しかし、光ファイバーなどの有線ネットワークには、ケーブルの敷設や配線といった物理的な制約があります。
無線で光通信に匹敵する大容量伝送が可能になれば、ケーブルを敷設しにくい場所でも通信経路を構築でき、ネットワークの移設や構成変更にも柔軟に対応できます。
5Gの実効速度の向上から、Wi-Fi 8による通信品質の改善、重機の遠隔操作への応用、そして2Tbpsの超高速伝送まで、無線通信の進化はさまざまな形で進んでいます。
こうした進化がもたらすのは、単なる通信速度の向上だけではありません。利用者が集中する環境でも安定した通信を維持できること、離れた場所から機器を操作できること、物理的な配線の制約を受けずに大容量ネットワークを構築できることなど、通信技術の進歩によって新たな可能性が広がっています。
無線通信の進化を考える際には、「どれだけ速くなったか」だけでなく、「何ができるようになるのか」という視点も重要になるでしょう。
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