第19回 NetBIOS over TCP/IPプロトコル(その2):基礎から学ぶWindowsネットワーク(1/4 ページ)
コンピュータが見えない、アクセスできないなど、ネットワーク・トラブルの多くが名前解決に起因している。そのしくみを理解しよう。
■連載目次
第1回 Windowsネットワークの舞台裏
第2回 レイヤ・モデルとファイル共有
第3回 NetBIOSを理解する(1)
第4回 NetBIOSを理解する(2)
第5回 NetBIOSの通信の実際
第6回 TCP/IP始めの一歩
第7回 IPアドレスとネットマスク
第8回 アドレス・クラスとIPアドレス
第9回 IPルーティング
第10回 IPパケットの構造
第11回 MACアドレスを解決するARP
第12回 TCP/IPを支えるICMP
第13回 データグラム通信を実現 UDP
第14回 信頼性を実現するTCP(1)
第15回 信頼性を実現するTCP(2)
第16回 信頼性を実現するTCP(3)
第17回 LLCとNetBEUI
第18回 NetBIOS over TCP/IP(1)
第19回 NetBIOS over TCP/IP(2)
第20回 ファイル共有SMB/CIFS(1)
第21回 ファイル共有SMB/CIFS(2)
第22回 ファイル共有SMB/CIFS(3)
第23回 ブラウザ・サービス
前回はNetBIOS over TCP/IP(以下NBT)の概略とパケットの構造について解説した。今回は、実際のWindowsマシンが送受信するNBTパケットの例を取り上げ、どのようなパケットがやりとりされているかを見てみよう。ネットワーク・プロトコルを理解するには、プロトコルの仕様を理解するのも大事だが、実際のネットワーク・パケットをキャプチャして解析することも大事である。仕様書だけでは分かりづらいネットワーク・パケットがどのように利用されているのかが分かるし、また仕様には記述されていないようなネットワーク・プロトコルの実装パラメータなど(例えばリトライの間隔や回数など)も知ることができるだろう。このような知識は、ネットワークのトラブルシューティングなどにも大いに役立てることができる。
Windowsネットワークにおいて、NBTプロトコルが利用される場面は数多くあるが、その動作が理解しやすい例として、システムの起動時におけるNetBIOSマシン名の登録と、名前の検索、そしてシステムの終了時における名前の解放などを見てみる。これらはいずれも1回パケットが往復する程度の、非常にシンプルなプロトコルである。ネットワークへのログオンや共有リソースへのアクセスなどについては、上位プロトコル(SMBプロトコル)についての理解が必要になるので、次回以降で解説する。
NBTプロトコルの基本的な動作は、すでに前回述べたように、NetBEUIの機能をそのままTCP/IP上へ移植したものであり、いままでのNetBEUIと機能的には大きな違いはない。唯一違うのは、TCP/IPという、ルーティング可能で、スケーラブルなプロトコル上に実装されたことで、単一のネットワークだけではない、より大きなネットワーク上でも利用できるようになったということである。NetBEUIではローカルのネットワーク上でのみ利用可能であったが、NBTならば、ネットワークを越えて広くNetBIOSサービスを提供することができる。またTCP/IPという、現在主流のプロトコルの上に実装されているため、ルータやファイアウォールといった既存の資産だけでなく、ネットワーク管理のためのノウハウなども活用することができる。
NBT環境における名前解決プロトコルの例
NBT環境では、名前解決の手段として、ローカル・ネットワークへのブロードキャストだけでなく、WINSサーバへ問い合わせるという方法がある。また、hosts(やlmhosts)ファイル、DNSサーバといった、TCP/IPで一般的な名前解決手段も組み合わせて利用することができる。これにより、複数のネットワークをまたがった巨大なWindowsネットワーク環境を構築することができる。
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