壁をぶち破らなければ、人生は変わらない:転機をチャンスに変えた瞬間(18)〜プロ野球球団代表 米田純
39歳で初めての転職。野球への思いを断ち切り、マーケティングの分野で生きていくと決めた男に、とんでもないチャンスが舞い込んだ。
39歳まで勤めた西武百貨店を退職し、異業種への転職を決断した米田さん。選択したのは、躍進著しいIT関連企業の楽天だった。代表の三木谷浩史氏との出会いに感銘を受け、若い社員たちの中に飛び込むように入社。業績躍進の真っただ中で、顧客の分析などで力を発揮し、事業拡大化に貢献していった。
六本木ヒルズへ本社が移転した折に、野球好きを集めて野球部を創設。そんなとき、楽天がプロ野球に参入するというビッグニュースが飛び込んできた。その舵取役に抜てきされたのが、社内では珍しい「野球経験者」の米田さんだった──。
壁をぶち破らなければ、人生は変わらない
丸山 西武百貨店から異業種の楽天への転職を決断した経緯をお聞かせ願えますか。
米田 39歳になって「もう人生の折り返しだな」と思い、転職を思い立ちました。一番行きたかったのが、楽天でした。まだ有名な企業ではありませんでしたが、これからIT関連企業は必ず成長するという確信がありましたし、楽天の成長が著しかった。また、オーナーの三木谷さんと会ったら、予想外の突拍子もないことを発想する人で、一度会っただけなのに、この人について行きたいなと思ったのです。
転職は、周囲には大反対されました。父なんて、泣いて反対しました。もちろん、僕の中にも不安が無かったといえばウソになります。会社を辞めることや、新しい世界に飛び込むことには、恐怖が伴います。でも、壁をぶち破らなければ、人生は変わらない。西武百貨店にずっといた場合の人生の限界が見えてしまって、それならば別の世界で可能性を広げることに挑戦してみたかったのです。
丸山 転職を成功に導くには、転機をチャンスと捉える積極性が大切かと思います。
米田 楽天では戸惑いもありました。いかんせん若い企業で、39歳の僕がかなりの年配で、それなりの居づらい空気みたいなものもありました。最初の朝会議でメンバーに紹介されたとき、いきなり次の朝会議までに顧客の分析をして発表しろと言われました。
突然なので驚きましたが、それからの1週間、寝ないで数字とにらめっこしました(笑)。そして「過去1年間で、100回以上100万円以上も買い物したお客さまが5人いました」なんてデータを発表しました。
会社全体に勢いのようなものを感じましたし、躍進していく実感もありました。楽天ポイントというシステムを構築していく中で会社の成長を目の当たりにし、「さあ、これから面白くなるぞ」と前向きに考えていました。
丸山 そして突然、楽天がプロ野球に新規参入することになりました。米田さんの「野球を職業に」というひそかな夢が、目の前に現れた瞬間でもあったと思います。そのときの心境はいかがでしたか。
米田 楽天に転職したときに、「野球を職業に」という夢はもう諦めなければならないのだろうと思っていました。僕はマーケティングの分野で生きていく人間なんだろうなと。それでも、もしその後、自分で起業する機会があれば、キャリアを生かしつつ、野球関連の仕事をしたいとは思っていました。それに、やはり野球が好きだったので、社内の野球好きを集めて、野球部を作ったりもしました。どうしても、野球とは無縁ではいたくなかったのでしょうね。
楽天がサッカーへの参入を始めたときには、野球はやらないのかなとも思ったりもしました。そんなとき、プロ野球への新規参入の報に接して、その瞬間、「おお来たか」と。何の迷いもなく「僕がやるんだ」と。夢は持ち続けるものだなと思いました。
構成/平山譲
聞き手 丸山貴宏
クライス&カンパニー 代表取締役社長
リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「キャリアコンサルティング」(翔泳社)
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※この連載はWebサイト「転機をチャンスに変えた瞬間」を、サイト運営会社の許可の下、一部修正して転載するものです。データなどは取材時のものです。
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