仕事が苦しいこともある、嫌だと思うこともある。そんなときには、何を考えればよいのか――数々の苦難を乗り越えて、やりたい仕事をつかみ結果を出した、東北楽天ゴールデンイーグルス代表 米田純さんの仕事観とは。
真っ白なユニフォームでスタートしたチームを、わずか5年でクライマックスシリーズ出場も視野に入るところまで育て上げた楽天球団代表の米田さん。これからの目標は、もちろんチームを日本一にし、常勝軍団へと育て上げることだ。
それのみならず、自身のキャリアを客観視し、さらなる夢をも追いかけてみたいとも話す。転職を機にやりたい仕事にたどり付き、そして成功を勝ちとった米田さんからの、転職を考えている30代、40代へのメッセージとは──。
丸山 米田さんは「野球を職業に」という夢をかなえましたが、ここまでの半生で「これを欠かしたら夢を成し遂げられなかった」という要素として、どのようなことが挙げられますか?
米田 諦めない精神でしょうか。働き始めたころはビジネススキルがまったく無く、心の中ではいつもピンチを迎えていました。徹夜しても企画書を1行も書けなかったり、数字の世界に行って困惑したり、血尿を出しながら仕事をしていたこともありました。
でも、僕は「ピンチはチャンスだ」と捉えていました。これらの仕事を、途中で投げ出すことなく最後までやり遂げることで、自分のキャリアは構築されていくんだと。徹夜して1行も書けなければ、もう一晩徹夜してみようという勢い。
そして、諦めない姿勢を貫いていれば、周囲の人が手を差しのべてくれることもあります。そうした人の支えに感謝しつつ、努力して一つ一つの仕事を完成させてゆく。その連続が、いまの自分につながっているような気がします。
丸山 20代から30代にかけてと、40代に入ってからのキャリアの中で、精神的にどんな部分が変わり、どのように成長したと実感していますか。
米田 若いころは出世したいという気持ちが強かったです。等級を上げることにおいて、人には負けたくないと思っていました。でも今は、そういう個人的なことではないのです。
チームをゼロから作って、それをどうしたら勝ち続けるように育て上げられるか。スタッフの夢、ファンの夢、地元の夢、その期待にどうやって応えていけばいいのか。この仕事は、苦しいことや嫌になることは数え切れないほどあります。「いつ辞表を出してもいい」という覚悟を持って仕事に臨んでいます。
でも、「苦しいな」「嫌だな」と思ったときに考えるのは、「何でこの仕事をしているのか」ということです。皆さんの夢、「チームを日本一に」という夢のためには、「まだまだ一所懸命やらなければ駄目だ」と思えます。
丸山 最後に、今、転職を考えている30代、40代に、力強いメッセージをお願いします。
米田 小さくてもいいから夢を見つけて、それを大切に抱き続けること。目の前の仕事に忙殺されることもあるでしょうが、その夢に向かってチャンレンジする気持ちを失わないことも大切だと思います。
そして、キャリアを積み重ねるそのときどきで、自分の人生に影響を与えてくれる人を見つけること。いつでも人に憧れている謙虚さや、人に触発されて何かを成し遂げようとする柔軟性や、人を励まし、励まされて前進していく思いやりなど、大切なことはたくさんあります。僕は一緒に働いているメンバーが好きですし、いまは後輩に頼られている部分もあるので、自分が頑張らなければならないという責任感もあります。人は、人に支えられ、ときには人を支えながら、大きくなってゆくと思いますから。
構成/平山譲
クライス&カンパニー 代表取締役社長
リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「キャリアコンサルティング」(翔泳社)
※この連載はWebサイト「転機をチャンスに変えた瞬間」を、サイト運営会社の許可の下、一部修正して転載するものです。データなどは取材時のものです。
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