演繹法を駆使してメンバーを納得させる:ITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(13)(3/3 ページ)
演繹法や帰納法などの論理思考を活用すれば、メンバー間の話し合いや家族への小遣いアップ交渉もうまくいく(かもしれない)。
論理思考を超えて
論理思考は万能ではありません。「論理思考だけに頼ると奇抜なアイデアが出にくい」「理詰めが過ぎると人間味に欠けた策になる」などの弊害が指摘されています。
また、論理思考は難しい問題や課題を分解してさまざまなアプローチを考えるのには有効ですが、事象のつながりや複雑な因果関係を解き明かすことには向いていません。この領域を得意とする「システム思考(Systems Thinking)」も併せて活用することが必要です。
システム思考は、論理思考の弱点を補完するものです。論理思考がテーマを要素分解して詳細を洗い出す思考、つまり「詳細かつ多岐にわたる問題(detail complexity)」を「静的」に捉えて分析するのに向くのに対して、システム思考は「時間の経過を考慮すべき動的な問題(dynamic complexity)」の仕組みを理解するのに向きます。「詳細な部分」よりも「全体としてのつながり(Systems)」に着目します。また、「分解」ではなく「相互作用」に着目する思考方法です。
とはいえ、あまりにもたくさんのルールやチェックを一度に全て取り入れるのは大変なので、まずはチーム全体に論理思考を定着させることから始めましょう。
話し合いがうまくまとまったら、論理思考での結論に偏りがないか(実現性はどうか? 人間味はあるか? 革新性はどうか?)チェックします。また、話し合いの途中で論理思考では扱いにくいテーマだと気付いたときには、論理思考に固執せず、他のアプローチを考えてみるというように、段階的かつ柔軟に活用してください。
次回は、時間の価値をチームで共有する必要性を説明します。
- それは連帯責任ではありません――チームが助け合ってはならないとき
- 優秀なエンジニアと優秀なチーム、日本企業が欲しいのはどっち?
- 正しいライバルを持つべき理由
- 仕事の評価=質×量÷?――「時は金なり」をメンバーに周知する
- 演繹法を駆使してメンバーを納得させる
- 論理思考を会話に応用する
- 情報交換スキルを高めるテクニック
- チームの立ち位置を見える化する「関係マップ」
- 会議の質を高めるために、リーダーが仕掛けるポイント
- 5つのプロセスで進める、効果的な会議ファシリテート
- 思考の癖を把握して効果的に評価する(後編)
- 効果的に指示するためのタイプ分け法(前編)
- 自分の性格や思考の癖を把握しよう
- リーダーは、目的ではなく目標を示せ
- リーダーは「分かりやすい人」であれ
- チーム活性化のために、リーダーが果たすべき役割
- 「業界で生き残る」チームに必要な条件とは?
筆者プロフィール
上村有子
エディフィストラーニング インストラクター。外資SIer、証券会社を経て2000年に野村総合研究所入社。現在、情報化戦略、コンプライアンス、ビジネスコミュニケーション領域のコース開発、講師。専門分野はBA(ビジネスアナリシス)、コミュニケーション。
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多様な価値観のメンバーを率いるためには、まずリーダーが自分の性格や思考の癖を把握するとよいだろう。己を知ることによって、異なる価値観の集合体をまとめられるようになるからだ。