業務で目的を達成するためには、活力あるチームを作り、運営していくことが重要だ。本連載では、ITエンジニアのリーダーシップスキルの向上に役立つツールや考え方を詳しく紹介する。今回は個人よりもチームが企業に評価される理由を解説する。
本連載のテーマは「チームリーダーシップスキルの向上」です。では、そもそも、なぜチームで仕事をしなければならないのでしょうか? 今回は経営者の視点に立って、企業にとってのチームの有用性を考えます。
※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
ITエンジニアの仕事は、設計やプログラミング作業を始める時点でモジュール分割がきちんとなされ、自分の分担が明確になっていることが多いものです。スケジュールがはっきりして仕様もしっかりしているので(例外もありますが……)、きちんと計画的にこなしていけば、仕事は一人でやれるという認識が強くなりがちです。そうなると、「仕事の成果は自分の成果」で、自分の成果を上げるためには人に邪魔されないようにバリアーを張らねば、といった極端な考えに陥る人も出てきます。
しかし、メンバーが個性を発揮し、自主的に生き生きと仕事をするためには、チームを活性化させることが必要です。そのために重要なポイントは、次の2点です。
せっかくチームで仕事をしているのに、個人の成果を優先して人に邪魔されないように自分を守るメンバーがいたらどうなるでしょう。メンバー同士の風通しどころか、メンバー同士が高い防御壁を作ってしまうことになりかねません。
そもそも企業というものは、長期的には個人の業績よりもチームの成果を優先します。短期的にはメンバーおのおののパフォーマンスが会社の収益に貢献しますが、社員はいつかは退職するものです。たとえ中の人が入れ替わってもチーム力が発揮できるような仕組みや組織風土を作る方が、企業が長く存続するためには重要なのです。
リーダーはそれぞれのメンバーに、個人の業績よりもチーム全体の成果を伸ばすことを目標にするよう自覚してもらう必要があります。そのためには、チームでないと成し遂げられない仕事になぜ価値があるのかを、メンバーに理解してもらわなければなりません。
チームならではの強みを生かす仕事とは、具体的にはどういうものでしょうか? 一人では請け負い切れない大規模な仕事、一人ではカバーし切れないような専門技術を数種類も駆使する仕事、優秀な先輩の仕事ぶりにじかに接しながらの仕事、などが挙げられます。
企業にとって「成果を伸ばす」とは、他社に差をつけ、競争で優位に立つことを意味します。競合他社とよく似た仕事の形態をとるSIのような業界では、規模や総合的技術力が競争に勝ち残るための最低要件です。これは個人の力で成し遂げられるものではありません。
チームで仕事をするためには、個々人の評価指標の設定の問題もありますが、リーダーの皆さんは、チームで仕事をする意味を身近な環境で再認識しましょう。またチームのメンバーに「個人の成果よりチームの成果が重要」という考えが浸透しているか、確認しましょう。
「チームワーク」の意識を育てる
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