あなたのライバルは誰ですか――同期? 同じ部署のメンバー? それも自分自身?
人が集まれば、もめ事の1つや2つは起こるものです。しかしリーダーが視点をうまく変えるように工夫すれば、メンバーの成長を促せます。
キーワードは「目を外に向けること」です。自社内やIT業界内といった狭い視点にとらわれ過ぎず、リーダー自らも向上しましょう。
※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
同期入社の仲間は、会社の中でも特別な存在です。新人研修など人生の特別な時期を共に過ごしたこともあり、いつ会ってもすぐに昔の関係に戻って話が弾みます。
ところが何年かたつと、リーダーになっている人とそうでない人、順調に技術力を付けている人とそうでない人、といろいろな差が出てきます。そのような状況でライバル意識が生じるのは、ごく自然なことです。
同期入社でなくても、昇進・昇格やプロジェクトの成否、技術的な優劣、人望など、いろいろな面で社員同士にライバル意識は芽生えます。
ライバル意識がうまく作用すると、モチベーションが上がり、その結果生産性が上がり、組織にもプラスに働きます。しかし一歩間違うと、ライバル同士の足の引っ張り合いになりかねません。
皆さんのチームのメンバーはどうでしょうか? 間違ったライバル意識を持ち、ぶつかり合っている人はいませんか?
狭い範囲に意識を限定すると、相対的な上下関係に注意が向いてしまいます。勝ち負けにこだわりが強い人、あるいは序列に敏感な人は、どうしても「人を追い抜いたり蹴落としたりせねば」という考えに陥りがちです。
しかし、そこから少し目を転じて、会社全体で「ライバル」を探すとどうでしょうか? そもそも環境や条件に相違点が多く、実は比較の対象にならないことが多いはずです。
開発1課に配属された同期のA君は、金融機関向けのビッグプロジェクトを担当し、着実に名前を上げているが、いまだに上流工程を一から担当したことはない。カバーできる業務の範囲もそれほど多くない。最近、協力会社のスタッフを含む大所帯のチームのリーダーになったけれど、リーダー経験もそう長くはない。
それに比べると自分は、物流向けのシステム開発部署で、短期案件の担当が多いけど、設計・開発から納品・運用フェイズまで一通り経験し、割と早くからリーダーを経験している……
このように、どちらのキャリアやポジションにも一長一短があり、優劣を付け難いと冷静に判断できます。
比較するモノサシがいろいろあれば、勝ち負けに白黒付けること自体が意味のないことだと気付きます。もし、うまく考え方を切り替えられないメンバーがいたら、リーダーが手を差し伸べましょう。
チーム内など狭い範囲に視野が固定されると、どうしてもトラブルが起こりがちです。ねたみなど人間関係の問題に発展すると、後に尾をひくことになりかねません。また、メンバーの気持ちにも、大きな影を落とします。ライバルの活躍が面白くなく悶々とする→自分の不遇を嘆いてやる気をなくす→覇気のない人には仕事のチャンスがめぐりにくい、というように悪循環に陥ってしまいます。
リーダーはチームの中にこの種の問題が潜んでいないか、十分に目を光らせる必要があります。
メンバーのライバル意識に気付く
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