仕事の評価=質×量÷?――「時は金なり」をメンバーに周知する:ITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(14)(2/2 ページ)
5人のメンバーで100分の会議をすれば、メンバー個々の分給×100分×5人分相当のコストが発生する。
時間に照らした仕事の評価
自分やスタッフには刻々と支払いが発生しています。会社の投資に見合う仕事は、どうすればできるでしょうか?
単純に仕事をこなす量を増やせば、通常その分、評価も上がります。しかし、量が増えても仕事が粗いと、成果に貢献できません。量だけではなく質の向上も重要です。メンバーがそれぞれの仕事を「質×量」で計算すると、互いに比較したり、自分の成長を評価したりできます。
ただし、仕事の評価は「質×量」だけでは足りません。あなたのチームには、丁寧な仕事をするあまり、あきれるくらい時間に無頓着なメンバーはいませんか? 質×量だけでなく、それをどれくらいの時間でやり遂げたかが、3つ目の要素として欠かせません。
業績を「パフォーマンス」と呼ぶことがあります。パフォーマンスとは効率であり、言い換えれば、成果物を費やした資源で割り算したものが評価の対象なのです。
ここまでをまとめると、仕事の評価を上げるには、次の3つの要素のうち、質と量を増やし、それに費やす資源を減らすよう工夫する必要があります。費やした資源の最も代表的な例が時間です。
時間以外にも、会社が支払うコストは全て「費やした資源」に含まれます。費やした資源が多くなればなるほど、分母が大きくなります。
わざわざ高い機材を買いそろえたり、アシスタントを大勢採用したりした場合も、経費をたくさん計上することになり、分母の「費やした資源」が増大することになります。
周りから特命を受けて、「それほど投下しても価値のある仕事だ!」と期待がかかるようなケースを除けば、分子と分母のバランスには常に敏感にならなければなりません。
「量÷時間」の考えを浸透させる
そうはいっても、あなたのチームに必死で仕事をしている若手メンバーがいれば、パフォーマンスが低いからといって、むげに冷たくはできません。ひたすら一生懸命努力しているさまは、評価すべきです。
ただし、褒めるばかりではなく、パフォーマンスの大切さを教え、正しい方向に軌道修正するのもリーダーの責任です。一生懸命やっても時間がかかれば組織の足を引っ張ることになるなら、本人にとっても組織にとっても、これほど不幸なことはありません。
特にメンバーには、仕事の評価は「量×質」だけではなく、3つ目の要素である「費やした資源」、特に時間が重要視されることを知らしめてください。「まず量、それから質、それから時間で割る」という考え方はやめて、「量÷時間」と「質」の2つの要素で捉えるべきです。
一定時間でどれだけの仕事量がこなせるか? リーダーがメンバーと話すときは、常に単位時間を含めて会話するようにしましょう。「指示されていた作業は、昨夜全て終わりました!」ではなく、「指示されていた作業は、昨夜全て終わりました。全部で4時間かかりました」と報告するように指導しましょう。そして、毎回何時間かかったかを記録することで、「今度は3時間半で終えられるように頑張ろうな!」と具体的な目標を与えられます。
若手メンバーには、最初のうちは欲張って「質」まで求めなくてももよいでしょう。しばらくは「量÷時間」に注目して、成長を後押しします。
次第に慣れてきたら、今度は「量÷時間」と「質」に考え方をシフトします。「指示されていた検証作業は、決められた時間内にテスト手順の標準化まで盛り込んで完了しました」などというように、いつもと同じ作業時間内で、プラスアルファの工夫が盛り込めるようなアプローチを考えていきましょう。
ポイント
作業時間込みで報告させる
次回は、「ライバル心」の扱い方を説明します。
- それは連帯責任ではありません――チームが助け合ってはならないとき
- 優秀なエンジニアと優秀なチーム、日本企業が欲しいのはどっち?
- 正しいライバルを持つべき理由
- 仕事の評価=質×量÷?――「時は金なり」をメンバーに周知する
- 演繹法を駆使してメンバーを納得させる
- 論理思考を会話に応用する
- 情報交換スキルを高めるテクニック
- チームの立ち位置を見える化する「関係マップ」
- 会議の質を高めるために、リーダーが仕掛けるポイント
- 5つのプロセスで進める、効果的な会議ファシリテート
- 思考の癖を把握して効果的に評価する(後編)
- 効果的に指示するためのタイプ分け法(前編)
- 自分の性格や思考の癖を把握しよう
- リーダーは、目的ではなく目標を示せ
- リーダーは「分かりやすい人」であれ
- チーム活性化のために、リーダーが果たすべき役割
- 「業界で生き残る」チームに必要な条件とは?
筆者プロフィール
上村有子
エディフィストラーニング インストラクター。外資SIer、証券会社を経て2000年に野村総合研究所入社。現在、情報化戦略、コンプライアンス、ビジネスコミュニケーション領域のコース開発、講師。専門分野はBA(ビジネスアナリシス)、コミュニケーション。
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