ネットワーク設計やトラブルシュートを行うには、ネットワーク内部への理解が不可欠である。基礎の基礎から学ぼう。
「コンピュータを何に使っているか?」と質問されたら、多くの人が真っ先に電子メールやWebを挙げるだろう。いまやコンピュータとインターネットやLANなどのネットワークは、切っても切れない間柄となった。
■連載目次
第1回 Windowsネットワークの舞台裏
第2回 レイヤ・モデルとファイル共有
第3回 NetBIOSを理解する(1)
第4回 NetBIOSを理解する(2)
第5回 NetBIOSの通信の実際
第6回 TCP/IP始めの一歩
第7回 IPアドレスとネットマスク
第8回 アドレス・クラスとIPアドレス
第9回 IPルーティング
第10回 IPパケットの構造
第11回 MACアドレスを解決するARP
第12回 TCP/IPを支えるICMP
第13回 データグラム通信を実現 UDP
第14回 信頼性を実現するTCP(1)
第15回 信頼性を実現するTCP(2)
第16回 信頼性を実現するTCP(3)
第17回 LLCとNetBEUI
第18回 NetBIOS over TCP/IP(1)
第19回 NetBIOS over TCP/IP(2)
第20回 ファイル共有SMB/CIFS(1)
第21回 ファイル共有SMB/CIFS(2)
第22回 ファイル共有SMB/CIFS(3)
第23回 ブラウザ・サービス
これだけネットワークが身近な存在になった原動力の1つは、間違いなくWindowsにある。Windowsは、それまでは専門的な知識がなければ不可能だったネットワークの設定などを可能な限りユーザーから隠蔽し、ネットワークに関する深い知識を持たないユーザーでも、気軽にネットワークを使えるようにした。実際、一般的な環境では、ネットワーク・カード(イーサネット・カード)をWindowsマシンに装着して、ネットワーク・ケーブルでPCとLANを接続すれば、とりたてて設定を行わなくても、ネットワークが使えるようになる可能性が高い。
しかしネットワーク設定に限らず、複雑なものが簡単に使える背景には、なるべく当たり障りのない設定を自動的に行ったり、簡単に使えない機能を削除したりという事情がある。こうすると、確かに表面上は複雑なシステムがユーザーから見えなくなるが、この場合でもシステム自体が単純化されたわけではないので、ユーザーから見えない深層部分では、本来の複雑なシステムが稼働することになる。
一利用者として、とにかくネットワークの基本機能が使えればよいというなら、わざわざ複雑なシステムの内部を知る必要はないだろう。しかし読者がネットワーク管理者となれば話は別だ。
ネットワーク管理者は、業務やユーザーの要求に応じて、適切なネットワーク構成を設計できなければならない。しかも多くの場合、業務内容やユーザーの要求は時間とともに変化し、ネットワークを構成するハードウェアやソフトウェアも進化を続けている。あらゆる要因が変化する中で、臨機応変に、そのときどきに適切な判断を下すためには、システムの内部に精通するしか方法がない。
また残念ながら、どれだけ慎重に設計したものであってもシステムにトラブルは付き物である。このとき素早くトラブルの原因を特定し、被害を最小限に食い留めるには、やはりシステムに対する理解が欠かせない。
本稿の目的は、これからWindowsネットワークの管理を勉強するという初心者管理者に対して、その第一歩となるステップを提供し、Windowsネットワークのさまざまな現象に対して、少なくとも内部的な挙動に見当が付くというところまでをゴールに据える。この過程で、Windowsネットワークが発展して現在に至るまでの歴史的な背景や、基礎的なプロトコルの解説、Windowsのネットワーク設計や管理を容易にするためのさまざまな自動化処理がどのように実現されているのかなどについて解説する予定である。
もちろんこの程度では、奥深いネットワーク管理の入り口に到達できるかどうかでしかない。しかし、本格的なネットワーク管理の勉強を始めるウォーミングアップにはなるはずだ。まずは気軽な気持ちで、Windowsネットワーク管理者への第1歩を踏み出してみよう。
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