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@IT > なめらかなメッセージングを実現するSNS型RSSリーダーの開発 |
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ブロードバンドの普及とともに、インターネット上でやりとりされる情報の量は加速度的に増えている。ブログやSNSなどのコミュニティビジネスの隆盛を背景に、ネットのコミュニケーションのあり方も大きく広がってきた。
しかし開発者であるアーティキュレイト 副社長 鈴木貴晶氏によれば、ネットのコミュニケーションには3つの問題が起きているという。 (1)マスメディア化 (2)たこつぼ化 (3)スパム化 鈴木氏は「人間の認知能力に限界があるため、権威のあるメディアによってフィルター化された情報だけを読むマスメディア化と、自分の興味のある情報しか読まないたたこつぼ化が発生し、何もフィルタ化されていない情報はスパムとされてしまっている」と説明する。
この問題を解決するための考え方として、鈴木氏は「なめらかなメッセージング」というコンセプトを提唱している。これは知人の関係をベースにしたユーザーの間の共感度を、情報の価値判断に導入しようというものである。つまりユーザーはふだんの情報収集の際、その情報が自分のニーズに役立つかどうかという価値判断を自分自身で決める場合もあるけれども、しかし知人の感想や信頼できる口コミ情報などに基づいて判断することも少なくない。 あるラーメン店の情報を入手して、この店に食べに行こうかどうしようかと考えた際、自分の過去の経験から「おいしそうだ」と判断する場合もあるけれども、それ以上に、同じラーメン好きの知人が「あの店はおいしかったよ」と言っているのを聞いたり、あるいは自分が以前から読んでいて信用できるラーメンブログが「あの店は素晴らしい」と評価していれば、その評価をイコール自分の価値判断としてしまうというケースは少なくない。 今回の採択プロジェクトは、未踏ソフトウェア創造事業2004年下半期に採択された『ユーザ間の主観的センス共感度を用いたWeblog検索システムの開発』(開発者=須子善彦氏、佐藤毅氏)プロジェクトの第2期という位置付けになる。この第1期プロジェクトでは、ブログを評価し、その評価で人に対する信頼を設定。それを基にブログをランキング付けし、カスタマイズされるブログを表示するというシステムを開発した。つまりはSNS型のRSSリーダーとでも言うべきアプリケーションを実装したのである。 このSNS型RSSリーダーを使って実証実験を行った結果、自分の身の回りの情報だけでなく、3ホップ先までの情報は多く読まれ、たこつぼ化が防がれていることが判明。そして3ホップ先までの情報を読んだ結果、多くのユーザーが高い満足度を得ていることもわかった。 今回のプロジェクトでは、第1期をさらに進化させるかたちで、「共感度」をテーマ別に分けていく仕組みを実装しようとしている。共感度の高い知人であっても、「田中さんは確かに情報技術には詳しいけれど、音楽の趣味は合わないなあ」ということがありうる。情報技術というジャンルに関しては田中さんの共感度は高いが、音楽のジャンルについては田中さんの共感度は低いのである。このため、共感度のネットワークは趣味嗜好や興味対象ごとに分けるのが望ましいということになる。
興味対象別の共感度ネットワークを作りあげるためには、強力なテーマ別リコメンデーションの機能を実現する必要がある。この目的のために鈴木氏が提唱しているのは、TTCCという名称のアーキテクチャである。TTCCはTheme、Tag、Categoly、Communityの頭文字を取った言葉で、Tagという言葉が含まれているのを見れば分かるとおり、ソーシャルタギングの手法をリコメンデーション・システムに取り入れようとしている。
あるユーザーが「東京の醤油ラーメン」というテーマで検索するとする。その検索した先のコンテンツに「東京の醤油ラーメン」という言葉が含まれていないと、通常のリコメンデーション・エンジンでは結果に含まれない。しかしそのコンテンツに別のユーザーが「東京の醤油ラーメン」というタグを付けていると、TTCCではそのコンテンツもリコメンデーション結果に表示する。 ただ、ソーシャルタギングには問題点もある。ありとあらゆる人々が様々なコンテンツにどんどんタギングを行っていってしまうと、タグのインフレーションとでも言うべき現象が起き、不適切なタグが付けられていたり、あるいは質の低いコンテンツにタギングが行われてしまうようなことになってしまう。ノイズが増えてしまうのだ。 ところがここに「共感度」の仕組みを持ち込むと、信頼度の高いコンテンツや自分が気に入った人のコンテンツが優先的にリコメンデーション結果に表示されるようになり、ノイズを減らすことができるようになる。TTCCではソーシャルタギングと共感度を融合させることによって、きわめて精度の高いリコメンデーション・エンジンを実現しようとしているのである。
この方法を使うと、さまざまなメリットが生じる。同じ「apple」という言葉で検索すると、通常のリコメンデーション・エンジンでは果物のリンゴとコンピュータメーカーのアップルコンピュータの両方が表示されてしまう。しかしソーシャルタギングによって共感度ネットワークを形成する仕組みが実装されていれば、果物のリンゴに関心のある人たちと、アップルコンピュータに関心のある人で別の共感度ネットワークを形成することになる。つまりは結果的に、パーソナライズされたリコメンデーション・結果が表示されるようになるのである。 ◆「オープンソースによる開発実験プロジェクト」トップページに戻る 提供:IPA
2005年度未踏ソフトウェア創造事業
担当PM 酒井 裕司 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年3月31日 |
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