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@IT > 確率モデルに基づくCDNを応用した障害耐性サーバの開発 |
企画:アットマーク・アイティ
営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限:2005年9月30日 |
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「ユーザーの実際のニーズを考えると負荷分散のすべての機能を使っているのか疑問。そこそこの機能、そこそこの価格でよいという中間的なニーズがあるのではないか」(酒井裕司PM)
ネットワークコストやサーバの価格が下がったことで、自宅や中小企業のオフィスにWebサーバを設置して自ら運用するケースが増えてきた。ホスティングサービスなどと異なり、提供するサービスなどを自在にコントロールできるのが特徴だ。しかし、ミッションクリティカルな業務で利用することを想定し、フェイルオーバーや電源の2重化など耐障害性の機能を備える企業のサーバと異なり、自宅や中小企業に設置されるサーバは耐障害性の機能に乏しいことが多い。そのためハードウェアの故障やアクセスの急増、落雷による電源の故障などで動作が停止するケースが多い。
加藤崇氏(共同開発者:西村美由紀氏、佐々木和志氏、石井充氏)のプロジェクト「確率モデルに基づくCDNを応用した障害耐性サーバの開発」は、この自宅、中小企業のサーバの障害耐性を高める技術を開発する。ネットワーク上にある複数のWebサーバでファイルを同期し、特定のWebサーバに障害が発生した際には、別のサーバに処理を肩代わりさせる。それぞれのWebサーバは障害が発生した際にだけ連携しあう仕組みで、弱結合の分散環境を構築する。 弱結合の分散環境をつくるには各サーバ間でファイルを複製し合い、障害時の分散の処理を自動化する必要がある。加藤氏のプロジェクトではこれらの機能を持つ「Apache」のモジュールを開発し、弱結合の分散環境を構築できるようにする。Windows上で稼働するサーバを用意し、GUI環境で障害対策の設定などができるようにすることも計画している。 サーバに障害が発生した際に別にサーバにアクセスの処理を引き渡す技術は、特定のドメインに複数のIPアドレスを割り付けることで実現する。クライアントから問い合わせがあったDNSは、そのドメインに割り付けられたすべてのIPアドレスを返す。IPアドレスを受け取ったクライアントはメインのIPアドレスにアクセスを試みる。メインのIPアドレスを持つWebサーバに障害が発生していたり、ダウンしている場合は、別のIPアドレスに接続し、Webページを表示する。
プロジェクトでは、この仕組みを負荷分散に利用することも計画している。負荷分散はDNSラウンドロビンを利用。クライアントから問い合わせがあったDNSは、そのドメインに割り付けられた複数のIPアドレスを順に返す。DNSラウンドロビンは、返すIPアドレスをアクセスごとに変更する。クライアントはアクセスごとに異なるWebサーバに接続することになり、負荷分散を実現できるという。
この仕組みのポイントはWebサーバにどの程度の負荷がかかったときに別のサーバにクライアントを接続させるかの判断。プロジェクトでは確率モデルに基づく統計的な処理を行い、将来のアクセスを予測する手法を用いるという。 プロジェクトの共同開発者である石井充氏は負荷分散の用途として「企業の東京本社と大阪支社など複数拠点にWebサーバを設置し、Webサイトが必ず表示されるよう負荷を分散できる」と説明した。「複数のサーバ間でファイルを相互に複写する以上、信頼関係があるWebサイト間で使用されることが基本となる」という。 プロジェクト・マネージャの酒井裕司氏は、プロジェクトについて「注目したのは分散の弱結合」と語った。「タイトな連携ができない環境下で負荷を分散させる仕組みにニーズがある」として、実際のユーザーのニーズを反映した点を評価したと説明した。ミッションクリティカルな業務で利用するサーバではさまざまな負荷分散の技術が利用されているが、「ユーザーの実際のニーズを考えると、負荷分散のすべての機能を使っているのか疑問。そこそこの機能、そこそこの価格でよいという中間的なニーズがあるのではないか」と酒井氏は述べる。 ただ、加藤氏のプロジェクトが実際のネットワーク環境で利用できる技術として確立されるかは今後の開発にかかっている。酒井氏は「実際のネットワーク環境で使われないと、本当のニーズは見えてこない」と指摘したうえで、「ユーザーに配布してフィードバックをもらい、継続的に仕上げていくのが重要になる」と述べ、オープンソース開発の活用が欠かせないとの認識を示した。 ◆「オープンソースによる開発実験プロジェクト」トップページに戻る |
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