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@IT > オープンソースによる開発実験プロジェクト > 酒井プロジェクト・マネージャ インタビュー |
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すぐれた開発能力と卓越した独創性を持つスーパークリエイターの発掘と支援を目指し、独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)が2000年から続けている未踏ソフトウェア創造事業。 IT系ベンチャーキャピタルの草分け的存在として知られるイグナイト・ジャパンのジェネラル・パートナーで、未踏ソフトウェア創造事業のプロジェクト・マネージャ(PM)を2004年から務める酒井裕司氏は、2005年度上半期の公募で2件のプロジェクトを採択した。酒井PMに採択したプロジェクトへの期待を聞いた。 ――2005年度上期の採択の方針を教えてください。どのようなプロジェクトを採択しようと思いましたか 開発者の着眼点に、奇抜であることよりは、利用者ニーズを考慮することを求めている点では昨年から変わっていません。実際、奇抜なアイディアは制約条件が少ないためより容易であり、大学や研究期間でやれることでもあります。反面、国内ソフトウェア開発者に欠けているのは、ニーズを見極める力であると考えているからです。 また、実用にたるソフトウェアに仕上げるまでの”作り込み”が出来るかどうかを開発者に対して特に求めました。それは、こだわる能力であったり、チームをまとめる力であったり、1人の制作者であれば、数カ月間、開発以外のことを忘れて没頭する力を持っているかどうかです。 「思いつきより作り込み」 世界的に有名なソフトウェア作品の多くは、作り込みが徹底しているものであると思います。 ――これまでの採択の経験から、今回お考えを変更した点はありますか 昨年度の反省を踏まえて、採択前の面談の実施と方針の合意をするようにしました。 PMの立場からは、助言や提案と若干の管理を行うことは可能ですが、開発者そのものの考え/信念のようなものは変えられません。この点、最初からユーザー指向を持っていない人の考え方は変えられないと分かりました。また、かなり作り込んでしまったものを土台として持っている開発者の場合、広範囲なユーザーに機能を提供するために基本アーキテクチャをいじらなければならないことがあります。 これに対して、作り込んでしまった開発者は小さな改良や修正を重ねることを好みます。既に理解されているモデルをあれこれいじるのは楽しいことだからです。採択にあたっては開発者が抱える大きな問題に関しては事前に指摘を行い、修正方針に関する了解を必ず取るようにしました。開発者の合意と理解がなければ、未踏で与えられた期間でこうした修正を行うことも困難だからです。 ――今回、採択したプロジェクトについて、それぞれについて期待するところを教えてください。また、開発者は開発全般でどのようなところが苦労しそうですか? 「3Dファクスの開発」 「3Dファクスの開発」は、基本コンセプトとして、パソコンプロジェクターとPCカメラ、ソフトウェアを組み合わせて簡単に3Dキャプチャを行おうというものです。身近に存在する様々なもの、顔であったり、使っている携帯電話であったり、ぬいぐるみであったりを、3Dデータとして、表面のテクスチャとともに簡単に取り込む。従来は専門家しか扱えなかった3D入力をパソコンユーザーのお財布で可能なレベルでできれば、パソコンの大衆化がインターネットのブームを起こしたようなおもしろい使い方の展開もあり得るかもしれません。 一方、初期ユーザーは、高価な3Dキャプチャー機材に手が出ないプロシューマーになりますから、こうした方々が満足する精度、扱いやすさ、セットアップの容易さ、そして出力されるデータが、ユーザーが使うアプリケーションに適合しなければなりません。このような細かい修正要件をいかに作り込んでいけるか、ここが課題になると思います。 「マルチメディアコンテンツの配信とそのコミュニティ支援システムの開発」 ブログの流行は、トラックバックという手法が、個人コンテンツの作成に動機を与え、同時に有用なコンテンツの手繰り出しに、確かに有効な手法として機能したから、と思います。この先には、当然ながら、マルチメディア系コンテンツに関して、面白いものを手繰りだす方法に、ブログ的な手法が使えないかと考えるわけで、「マルチメディアコンテンツの配信とそのコミュニティ支援システムの開発」では、そうした着想をぜひ広げていって欲しいと思います。 課題としては、現在、多くの人が見たがるようなマルチメディアコンテンツは、権利関係の入り組んだ複合著作物になります。このため、放送事業者やGoogle Videoのような大規模コンテンツ提供者が使える信頼性を実現して、コンシューマー向けに使ってもらえるようにする、またはコンテンツ制作者自身が、自分たちのコンテンツを管理するためのツールとして位置づけ、必要な機能を加える、という両建ての機能拡張を考えなければなりません。この点が課題となります。 「オープンソースによる開発実験プロジェクト」トップページに戻る 提供:IPA
2005年度未踏ソフトウェア創造事業
担当PM 酒井 裕司 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年3月31日 |
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