サーブレットとEJBの連携Java Servlet徹底解説(後編)(3/7 ページ)

» 2000年12月19日 00時00分 公開
[米持幸寿日本アイ・ビー・エム]

作成するアプリケーションのデザイン

 前編で扱ったデータは、「ユーザーID」と「パスワード」だった。今回の仕様は、これとまったく同じ画面で、後ろ側にRDBがいることを前提にしてみよう。

前編のプログラムに追加する仕様

前編とまったく同じ機能にしてしまうとEJBを使うにしてもつまらないので、次のような要件を追加してみる。

  • 初めて入力したユーザーID、パスワードは、そのままのデータでRDB「USERINFOENTITY」表に書き込まれ、「ユーザーIDを追加しました」を表示する
  • 次回、そのユーザーIDを入力したときは、パスワードの検査をし、同じパスワードでなければ「パスワードが違っています」を表示し、ユーザ情報表示画面を表示する
  • ユーザ情報表示画面には、[ユーザを削除する]ボタンがあり、それを押すことにより、そのユーザを削除できる
  • パスワード入力フィールドを備え、入力して「パスワード変更」ボタンを押すことにより、パスワードを変更できる

 さて、EJBのデザインには、いろいろなアプローチ方法があると思うが、今回は、前回と同じように画面構成からアプローチしてみよう。便宜上、今回のコンテンツはatmarkit2というフォルダに入れることとする。

図1 画面構成と関連するサーブレットとJSP 図1 画面構成と関連するサーブレットとJSP

 図1をご覧いただいてお分かりのように、前回のプログラムより若干複雑である。EJBは、このUserinfoBean3クラスの後ろに隠ぺいされることになる。ここで、UserinfoBean3クラスに必要なメソッドと例外を考えておこう。これは、この後EJBをデザインするときに必要になる。

メソッド 機能
1 login ログイン
2 modPass パスワードの変更
3 delUser ユーザーの削除
4 setMsg/getMsg メッセージを受け渡しするために使う
必要なメソッド

メソッド 機能
1 InvPassException ログインのときに、ユーザーIDが既存し、パスワードが違ったとき
2 UserAdded ユーザーが追加されたとき
例外

 入力されるユーザーID、パスワードは、null値などが含まれないよう、JavaScriptで検査してから送信されるようにする。この方法でBean上で検査するロジックを省くことにする。

 さて、ここまでデザインできたら、EnterpriseBeanのデザインをしよう。EnterpriseBeanへのアクセスは、JNDIのコンテキストの取得、ホーム・インターフェイスの取得、EnterpriseBeanインスタンスの生成や検索、ビジネスメソッドの呼び出し、そして破棄(remove)といったコーディングが必要だ。しかし、これらをサーブレットに記述すると、サーブレットを記述するプログラマの負担が増えてしまうし、サーブレットがEJBに依存したものになってしまう。そこで、これらの処理はBean(ここではUserinfoBean)に記述することにする。このような前面にアクセスするようなBeanを作ることで、MVCモデルに沿った開発がより明確化される。

 今回作成するEnterpriseBeanの全体像は図2のようになっている。

図2 今回のEnterpriseBeanのデザイン 図2 今回のEnterpriseBeanのデザイン

 作成するEnterpriseBeanは2種類である。

リモート I/F ホーム I/F 実装
セッションBean UserinfoSession UserinfoSessionHome UserinfoSessionBean
エンティティBean UserinfoEntity UserinfoEntityHome UserinfoEntityBean
作成するEnterpriseBean

 1つのデータだけなのでエンティティBeanだけでもよさそうな気がしないでもないが、「ユーザーIDがなかったら追加する」といったビジネスロジック的なものはセッションBeanに実装すべきだろう。そういった意味でセッションBeanを作ることにする。また、今回はセッションBeanとエンティティBeanが1対1になっているが、通常は1対nあるいはn対nになることが多いだろう。エンティティBeanとセッションBeanをどのように組み合わせるかは、デザインする人の経験と感性でその良しあしが決まる。今回の要件では複数のエンティティを扱うわけではないが、エンティティやDB(=リソース・マネージャ)が複数に及ぶトランザクションを記述する場合には、この形態がより望ましい。

 UserinfoSessionBeanには、login、modPass、delUserなどのUserinfoBeanに実装するのとほぼ同じメソッドを実装することにする。このセッションBeanは、サーブレットのセッションにおいて繰り返しアクセスされ、UserinfoEntityBeanも同じものにアクセスする必要があるのでステートフル・セッションBeanを使う。メソッドは、ほとんどが一度で更新処理が終わるようなものなのでCMT(Container Managed Transaction)でいいだろう。UserinfoEntityBeanにはuserid、passwordの2つのフィールドを持たせ、RDBに保存する。JDBCのコーディングをしなくても済むようにCMP(Container Managed Persistence)を使ってみよう。

 EnterpriseBeanを入れるパッケージはatmarkit2.ejbとする。

どう作業分担して開発を進めるか

  さて、ここまでデザインできたら、複数の人間が参加することを念頭において開発の計画を立てよう。

 まず分担だが、HTMLデザイナー、JavaScriptプログラマー、Javaプログラマー、EJBプログラマー、というふうに分けることができる。人数が少なければ兼任することになる。

役割 作業内容
HTMLデザイナー HTML、JSP、画像ファイルなど
JavaScriptプログラマー JavaScriptファイル
Javaプログラマー JavaServlet、JSP、テスト用Bean
EJBプログラマー EnterpriseBean、アクセス用Bean
作業の分担

 上記のように分担を分ける場合、HTMLの中にJavaScriptを基本的に記述しないようにする。前編では取り上げなかったが、JavaScriptファイルは、HTML内に次のように記述することで別ファイルにすることができる。

<script language="JavaScript" src="/atmarkit2/Login.js">
</script>

 この場合、スクリプトを記述する人は、フォームやフィールドの名前を正確に知っている必要があるので、ページのデザインをする際には明確に決める必要がある。例えば、ログインページに含まれるのは、最初のフォームのフィールド「userid」、「password」であり、双方が入力されないとサブミットできず、「入力してください」といったアラートを表示する、といった具合である。

 HTMLデザイナーとJavaScriptプログラマーは、連絡を密に取りながら作業を進める必要があるだろう。Javaプログラマーは、Java Servlet、JSP、テスト用Beanなどを作る。テスト用Beanとは、外見上きちんと動くが、実際にはEJBなどにアクセスしないBeanで、開発中に一時的に使うものであると考えたらよい。今回の開発でも、ユーザーIDとパスワードが同じだったときのみにログインが成功、ユーザーID「new」のみを新規に追加でき、パスワード変更、削除も問題なく成功する、というBeanをまず作成し、画面関連(JavaServlet、JSP、テスト用Bean)を作成していくことにする。

 EJBプログラマーは、後ろ側で動作するEnterpriseBeanとテスト用に作成したのと同じインターフェイスを持ったBeanをコーディングする。こちらのBeanにはEJB特有のコードが入ることになる。

注:今回はこのような方法をとったが、この方法では、同じ名前のソースコードが2つになるので、あまり良い方法ではない。UserinfoBeanは、インターフェイス定義として、それを継承する「UserinfoBeanTest」、「UserinfoBeanProd」を作り、Instantiateにてインスタンス化するのが、本来の方法である。

 開発手順を表にまとめると次のようになる。

HTMLデザイナー JavaScriptプログラマー Javaプログラマー EJBプログラマー
テスト用Beanの作成 アクセス用Beanのインターフェイスの定義
HTML、およびJSPファイルの作成 スクリプトの作成 サーブレットの作成 EnterpriseBeanの作成、アクセス用Beanの作成
スクリプトとの連携テスト HTMLからサーブレットの呼び出しテスト アクセス用BeanからのEnterpriseBeanテスト
全体のテスト
開発手順

 上記は1つの例であるが、参考にしていただきたい。

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