旧JISでプライバシーマークを取得した企業は、新JISに対応するために内部規定やルールの変更が必要となります。当然ながら、改正に伴い新JISが求める内部規定の整備や仕組みを満たしていることが必要です。また、個人情報保護法の概念を取り入れている部分もあり、すでに対応済みという部分もあると思います。しかし、個人情報保護法よりも厳しい要求事項もありますので、注意しましょう。
新JIS改正に当たり、重要と思われる項目を以下に抜粋します。
個人情報保護法の記述と同様に変更になっています。
個人情報を事業の用に供している
「個人情報を自社の事業のために利用(保有)している」、ということなので、倉庫業や運送業、データセンターなどは基本的には対象外といえます。ただし、対象外である企業でもプライバシーマーク取得自体は問題ありません。
個人情報保護法の記述と同様に変更になっています。実際の場では、例えば管理者や監査責任者が存在することが重要であり、新JIS改正に伴い、用語を対応させることが求められているわけではありません。
(旧JIS→新JIS)
新JIS改正で、独立した項目となりました。旧JISでもリスクの認識と対策は必要でしたが、理解の難しい記述であり、審査において指摘の多く出る部分でもありました。
新JISでは、「取扱いの各局面におけるリスク」とあるように、個人情報のライフサイクルに従いリスクを認識、評価し対策を取っているかが審査基準として明確になりました。
事業者は、3.3.1によって特定した個人情報について、目的外利用を行わないため、必要な対策を講じる手順を確立し、かつ、維持しなければならない。事業者は、3.3.1によって特定した個人情報について、その取扱いの各局面におけるリスク(個人情報の漏えい、滅失又はき損、関連する法令、国が定める指針その他の規範に対する違反、想定される経済的な不利益及び社会的な信用の失墜、本人への影響などのおそれ)を認識し、分析し、必要な対策を講じる手順を確立し、かつ、維持しなければならない。
旧JISでは6項目でしたが、新JISでは15項目となりました。赤字部分が追加された項目です。内部規定として、整備されていないものは策定する必要があります。
例えば「l. 点検に関する規定」は、旧JISの「個人情報保護に関する監査の規定」に相当しますが、「点検」とするにあたり、日々の運用の確認などを追加する必要があります。
また、文書管理ついては、「3.4.5.2 文書管理」「3.4.5.3 記録の管理」も追加されており、内部規定として、文書管理手順(発行・改訂・版数管理)を定める必要があります。
旧JISでは、「直接収集」と「間接収集」という区分けをしていましたが、新JISでは「直接書面によって取得」と「それ以外」という区分けになりました。
「直接書面によって取得」する場合は、書面によって本人に明示しなければならない項目が明確になっていますので、これらには対応しなくてはなりません。また、「明示」ですので、目立たないような記述は指摘の対象となります。
「直接書面によって取得」する以外の方法によって取得した場合ということで、新JISの解説では、以下の例が記されています。
本人から直接書面によって取得する場合以外は、本人の知らない間に取得する(監視カメラなど)、または取得に対する意識が低い(口頭によって取得など)といったケースも含まれていますので注意しましょう。この項目に当てはまる場合は、利用目的について本人の同意ではなく、公表または通知でよいとされています。
新たに追加された項目です。本人にアクセスする場合は、本人の同意が必要である、ということです。新JISの解説では、ダイレクトメールのケースについて、以下のように記しています。明示的な同意を求めていることに注意しましょう。
最初に出すDMに通知文書を同封して送付し、本人の同意が得られれば、継続して本人にアクセスできることになる。
ただし、回答が無い場合に黙示の同意があったものとみなすことは原則として不適切である。
利用と提供が分離されています。「第三者提供」「共同利用」についてもこの項目に含まれています。個人情報を第三者に提供する場合には、本人の同意を得ることが原則である、ということです。
注意すべき点として、「それに代わる同等の措置を講じているとき」というためには、「公表又は本人が容易に知り得る状態に置く」ことだけでは足りないと解釈できます。個人情報保護法第23条の第2項では、「次に掲げる項目」を示し、それらについては通知でも第三者への提供ができるとしており、新JISとは異なっているので注意しましょう。
b)大量の個人情報を広く一般に提供するため、本人の同意を得ることが困難な場合であって、次に示す事項又はそれと同等以上の内容の事項をあらかじめ、本人に通知し、又はそれに代わる同等の措置を講じているとき
新たに追加された項目です。個人情報保護法第21条とほぼ同意ですが、個人情報保護法は「個人データ」を対象としているのに対し、新JISでは「個人情報」を対象としている点が異なります。
事業者は、その従業者に個人情報を取り扱わせるに当たっては、当該個人情報の安全管理が図られるよう、当該従業者に対し必要、かつ、適切な監督を行わなければならない。
委託契約に求められる項目が、新JISでは7項目となりました。(旧JISでは4項目)
開示などの求めに応じるべき個人情報を、「開示対象個人情報」という表現を用いて表しています。「開示対象個人情報」は、「保有個人データ」とほぼ同意ですが、保有期間については限定していません。
また、「次のいずれかに該当する場合は、開示対象個人情報ではない」という部分については、「個人情報の保護に関する法律施行令」(平成15年政令第507号)第3条を踏まえて規定しており、例えば家庭内暴力や児童虐待などのケース、悪質なクレーマー、防衛に関する兵器などの開発に関するケース、警察からの捜査対象者などにかかわるものを指しています。
(保有個人データから除外されるもの)
第三条 法第二条第五項の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
(上記項目は個人情報の保護に関する法律施行令の第3条)
個人情報保護法第24条(保有個人データに関する事項の公表等)第1項に対応します。個人情報保護法にはない項目も追記されていますので注意しましょう。
事業者は、(中略)、次の事項を本人の知り得る状態に置かなければならない。
(個人情報保護法第24条に相当。以下は法にない項目)
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