ここまで、ITエンジニアの残業の現実について見てきた。自分の意思によらない残業がほとんどとはいえ、会社の対応に頼っていてはいられないとなると、なんとか自分で工夫して減らすしかない。
アンケートでは全体の44.1%のITエンジニアが「残業をしないため/減らすための工夫をしている」と回答。それら工夫をしているITエンジニアに、内容と効果を具体的に教えてもらった。その回答をいくつかに分類したものが図4だ。
「スケジューリング」(28.6%)、「ツール・効率化」(13.2%)、「朝の時間の活用」(12.1%)、「業務に優先順位を付ける」(11.0%)、「業務/情報の共有」(8.8%)などが残業を減らすために行われているようだ。それぞれの回答を詳しく見てみよう。
「むちゃなスケジュールを立てない。最初は余裕を持ち過ぎぐらいのスケジュールにする」
「ネットで情報を調べる場合には、見切りの時間を決めて必要以上の時間をかけない。電話はすべて自分からかけ、相手からの折り返しを待つことを極力避ける。このようにして予定外の時間を減らすことで、残業を減らしている」
「常にスケジュールや締め切りを意識し、リスクになりそうなものを排除することを最優先で行う」
「1日は7時間半」「帰りたい時間の30分前には帰るつもりで」「1週間は4人日」など、とにかく余裕を持ったスケジュールを立てることが基本のようだ。そのうえで、割り込み作業が発生したときの対応をきちんと行えば、かなり効果は高い。
それでも残業になってしまった場合は、「残業時間に関しても時間割を作成、その時間だけ残業をする」などの工夫が有効だろう。
「手書き書類の電子データ化、ルーチンワークの自動化、保管資料およびデータ管理のための目次作成。トータルで工数3分の2減。保管スペース半減」
「同じような作業の繰り返しになる場合には、多少時間がかかってもツールを作って効率化」
「似たようなプログラムは使い回し、なるべく手で書く量を少なくする」
ルーチンワークの効率化、ツール作成による自動化は効果が高いようだ。開発ツールを作成し利用している例では、「高い品質で安定するので、手戻りの工数もなくなる」という利点も。
「夜遅く仕事するのではなく、朝早く来てする。結構朝ははかどります」
「土日や朝など、他者と違う時間に働く。余分なやりとりと雑音、雑用が減り、自分の作業に集中できる。効率的な作業が行える」
「通勤時間などに仕事内容に関する関連記事を読む。業務時間中に行う調べ物の量が減るため、作業効率が向上する」
「なるべく朝早く来て、その日のうちに終わらせるべき仕事の項目を整理する」
静かで効率も上がる朝の早い時間帯に集中して仕事を行う派と、通勤時間や始業前の時間を活用して雑用を済ませ、始業と同時に仕事をスタートする派、大きく2つに分かれた。前者では「夜残って仕事をするのではなく、朝の早い時間に仕事をする」という回答が多く、結果としてかなりの効率アップを実感しているようだ。
「その作業が、本当に今日やらないといけない作業かを考える。期日に余裕がある、もしくはあまり重要ではないと分かれば、残業しないで翌日以降に回す」
「付き合いのような社内仕事はなるべくかわす」
「すべきことは紙に書き出して、優先順位を意識しながら片っ端から片付けていく。残業できないと思っていた方が、業務時間中の集中力は上がる」
優先順位を確認し、「明日できることは今日やらない」という意見が多かった。その結果、不必要な残業がなくなる、次の日にすべきことを把握しておける、ほかのメンバーに影響する部分は優先的に対処するといったことが可能になるようだ。
「小まめにメモを取り、個人の固有知識にしない。上司に報告を怠らない。抱え込まない」
「業務のシェアリング」
業務内容やさまざまな情報を共有することによって、チーム全体で仕事ができるようにする。これによってチーム内の仕事量が均等になり、特定の人物に仕事が偏らないようになるという内容。また、「マニュアルを整備し、自分も含めて2度同じことで時間を使わないようにする」という意見もあった。
これら、残業を減らすための「ITエンジニアの5大工夫」のほかにも、「区切りがついたところで切り上げてしまう」「会社で夕食を食べない。おなかがすいたら帰宅する」「避けられない予定を定時後に入れる」とさまざま。中には「転職活動。職種自体を変えてしまう」という回答もあった。
これらの内容を参考に、小さなことからでも「残業減らせ減らせプロジェクト」を始めてみてほしい。
最後に、現状より残業が減ったとしたら、それでできた時間を何に使いたいか聞いた。それを分類した結果が図5だ。多いものから「趣味」(38.1%)、「勉強」(20.6%)、家族(14.4%)、休息(13.8%)と続いた。
工夫によって、もし少しでも残業を減らせたら……。あなたなら、その時間を何に使いますか。
趣味
勉強
家族
休息
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