情報処理推進機構(IPA)はIT人材育成の取り組みを行うための予備調査として大学、大学院の情報系学部・学科を対象にした調査を実施し、2月18日に結果を発表した。IT業界への人材供給源となる情報系学部・学科だが、学生の人気や学生の質は低落傾向にあるようだ。
IPAはIT人材育成について5つのテーマを調査した。一般企業やIT企業の人材動向の調査結果は1月29日に公開した(参考記事: IT企業、新卒採用苦戦の理由は「仕事のイメージが悪い」)。今回は教育機関向け調査のほかに、オフショア開発、IT人材の派遣、個人事業主、転職などについての調査結果を発表した。本記事では教育機関向け調査について記載し、その他の調査結果は別記事でまとめる。
教育機関向け調査の対象は、国内大学、大学院の情報系学部学科・専攻。2007年10月にアンケートを配布し調査を実施した。対象は113の組織で、そのうち学部が61、大学院が52。国公立が79、私立が34となっている。全体のうち、有名大学・大学院の16校は「トップ校」として別扱いにした。
調査対象の情報系学部・学科の卒業生は2004年度から微増傾向。2006年度の卒業生は7479人。入学生は国公立では「ほぼ横ばい」との回答が約8割だが、私立では約4割。私立では「減少している」も3割あった。また、10年前と比較した情報系学部・学科の学生からの人気は、「変わらない」と「下がっている」が41.6%の同率。「上っている」との回答は5.3%で、10年前と比べると人気は低調のようだ。人気が特に下がっているとの答えは私立に多く、私立の52.9%が「下がっている」と回答。対して、国公立とトップ校では約半数の回答が「人気は変わらない」だった。
人気がいまいちなことを反映してか、入学生の質や水準も低調。調査対象の全体の66.4%が学生の水準や質が10年前と比べて「下がっている」と回答。「変わらない」は22.1%で、「上っている」は1.8%しかなかった。学生の水準が「下がっている」と答えたのは私立が最も多く、70.8%。国公立は 64.8%。トップ校は最も少ない37.5%。トップ校は学生の水準が「変わらない」も37.5%と同率。「上っている」は6.3%だった。入学生の水準や質で変化したのは「理数系の学力」が最多で、「国語力を含む基礎学力全般」「学問に対する興味・意欲」「コミュニケーション能力」が続く。
情報系学部・学科、専攻を出たからといって、全員がIT業界に入るわけではない。2006年度の卒業生のうち、「情報サービス・ソフトウェア企業」に進んだのは35.1%で前年度からほぼ横ばい。「その他企業・団体」が32.7%で伸びつつあるが、その他企業・団体に進んだ卒業生のうち、約60%が情報系部門に勤務していて、情報系学部・学科の卒業生の約55%がIT関連業務に就いていることになるという。
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