本連載は、さまざまなキャリア理論を紹介する。何のため? もちろんあなたのエンジニア人生を豊かにするために。キャリア理論には、現在のところすべての理論を統一するような大統一理論は存在しない。あなたに適した、納得できる理論を適用して、人生を設計してみようではないか。
今回は、ジョン・L・ホランドの理論を紹介しましょう。ホランド理論は、ひと言でいえば「適職探し」に役立つ理論です。
ホランド理論では、あなた、つまり働く人のパーソナリティ(性格)の特徴を次の6つの「典型的なパターン」に分類しています。
上記のパターンのことを「パーソナリティタイプ」と呼びます。ホランドが開発したことから「ホランドタイプ」とも呼ばれます。
一方、働く人が従事する「仕事」については、4つの次元(データ、アイデア、ひと、もの)に基づいて分類されており、これを「キャリア・クラスター」と呼びます。キャリア・クラスターも以下のように6つあります。
キャリア・クラスターと呼ぶのは、世の中に多数存在するさまざまな職種を上記6つの固まり、すなわち「クラスター」として分類したからです。
そして、それぞれのパーソナリティタイプに対して、それに適した職業・職種と考えられるキャリア・クラスターが以下のように対応しています。
パーソナリティタイプ | キャリア・クラスター |
---|---|
現実的 (Realistic) | 技術 |
研究的 (Investigative) | サイエンス |
芸術的 (Artistic) | 芸術 |
社会的 (Social) | ソーシャル・サービス |
企業的 (Enterprising) | 管理的ビジネス |
慣習的 (Conventional) | ルーティン的ビジネス |
従って、あなたのパーソナリティタイプが分かれば、おのずからあなたの「適職」が分かるというわけです。
パーソナリティタイプは、生まれつきの気質や、子どものころからの環境、出会った人物、物事、受けた教育などによって形成されるもので、興味・関心、性格、能力や行動傾向(○○という行動をしがちという意味)を含みます。なお、このパーソナリティタイプは、前述したようにホランドによって開発された分類です。
では、6つのパーソナリティタイプのそれぞれの特徴を以下に示します。
● 現実的 (Realistic)
● 研究的 (Investigative)
● 芸術的 (Artistic)
● 社会的 (Social)
● 企業的 (Enterprising)
● 慣習的 (Conventional)
上記6つのパーソナリティタイプの相互の関係は、「ホランドの六角形」(図1)をご覧ください。隣り合わせのタイプは近い関係にあり、対向するタイプはまったく逆のタイプであることを意味しています。例えば、「慣習的」と「現実的」は同じようなパーソナリティを持っていますよね。一方、秩序を好む「慣習的」と自由を好む「芸術的」は明らかに正反対のパーソナリティです。
さて、あなたはどのタイプに該当するでしょうか? あなたがどのタイプになるのかを判定する方法にはいくつかあります。厳密に判定するには、当理論に基づいて設計されたアンケートスタイルの「適職診断テスト」である「CPS-J」(日本マンパワー)や「R-CAP」(リクルート)が有名です。
あるいは、厳密性にはやや欠けますが、自分自身の行動や興味・関心を振り返ってみて、上記どれに最も近いかを主観的に判断するのでもOKです。あなたをよく知っている友人に頼んで、どれに該当するかを教えてもらうことでも、多少は客観性が出ますよね。また、キャリア・アドバイザーに相談すれば、上記のタイプに関連したさまざまな質問に答えることによって、あなたがどのタイプかを専門的な視点で教えてくれるでしょう。
なお、あなたの特徴は、上記6つのパーソナリティタイプのどれか1つに完全に分類されるわけではありません。人はそれぞれのタイプの特徴を多かれ少なかれ持ち合わせていますから、あなたに該当するタイプとしては実際には2つから3つの組み合わせになるはずです。
例えば、あなたがIT系のエンジニアだったら、パーソナリティタイプ的には、現実的、研究的、芸術的の3つのタイプのどれか、または複数を強弱はあれ持ち合わせている可能性が高いです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.