適職探しに役立つホランド理論エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門(3)(2/2 ページ)

» 2008年06月23日 00時00分 公開
[松尾順シャープマインド]
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ワーク・タスク・ディメンションで仕事を分類

 前述したように、さまざまな職業・職種を6つの固まり=クラスターに分けたものを「キャリア・クラスター」と呼びますが、この分類の基礎となる4つの次元(データ、アイデア、ひと、もの)は、「ワーク・タスク・ディメンション」と名付けられています。4つの次元(ディメンション)で、あらゆる職業・職種を分類できるということです。

 では、この4つの次元のそれぞれにはどんな仕事の内容や職種が該当するかを示しましょう。

● データ

 事実、記録、ファイル、数字、規則的な手順、商品やサービスに関する事実やデータの記録、確認、伝達、整理などの、「データ的活動」。例えば、購買係、会計係、航空管制官など。

● アイデア

 抽象的概念、理論、知識、洞察、何かを新しい方法で表現すること。創作、発見、解釈、抽象的な考えをまとめるなどの、「アイデア的活動」。科学者や音楽家、哲学者など。

● ひと

 ひとを援助する、知識を伝える、奉仕する、説得する、もてなす、動機づける、指導するなどの、「対人的活動」。販売員や、教師、看護婦など。

● もの

 機会、メカニズム、材料、道具、物理的プロセスや生物学的プロセス。生産、輸送、整備、修理などの「対物的活動」。エンジニアなど。

 そして、この4つの次元と6つのキャリア・クラスターは次のように対応しています。

ワーク・タスク・ディメンション キャリア・クラスター
「ひと」 ソーシャル・サービス
「ひと」と「データ」 管理的ビジネス
「データ」と「もの」 ルーティン的ビジネス
「もの」 技術
「もの」と「アイデア」 サイエンス
「アイデア」と「ひと」 芸術

 例えば、「ひと」を扱うことが主体となる仕事が、ソーシャル・サービスであり、「ひと」と「データ」の両方を主に扱うのが「管理的ビジネス」ということになります。管理的ビジネスについていえば、管理職の仕事を思い浮かべてください。担当部署の部下という「人」を使いつつ、業績などをデータでチェックしコントロールする仕事が、まさに管理職の仕事ですよね。エンジニア、つまり技術職は、もちろん「もの」を扱うのがメインの仕事。ただし、ITの場合、ハードだけでなく、ソフトも対象としますが。

 なお、上記のワーク・タスク・ディメンションとキャリア・クラスター、およびパーソナリティタイプの関係を示したものが図2です。

キャリア・クラスターとワーク・タスク・ディメンションとパーソナリティタイプの関係 図2 キャリア・クラスターとワーク・タスク・ディメンションとパーソナリティタイプの関係

キャリア・クラスターにはどんな仕事が含まれるか

 次に、キャリア・クラスターには、具体的にはどんな職業・職種が含まれているのかを簡単にご紹介しましょう。

● ソーシャル・サービス

  • 「ひと」にかかわる分野、社会・行政サービス、教育、医療、保険、介護などにかかわる職種

● 管理的ビジネス

  • 「ひと」と「データ」にかかわる分野、例えばマーケティング・販売、経営管理・企画などにかかわる職種

● ルーティン的ビジネス

  • 「データ」と「もの」にかかわる分野、例えば、金融取引、保管・輸送、OA機器操作などにかかわる職種

● 技術

  • 「もの」にかかわる分野、例えば、エンジニアリング、建設・保守、農業、産業機械操作、修理など

● サイエンス

  • 「もの」と「アイデア」にかかわる分野、例えば、自然科学・数学などにかかわる職種

● 芸術

  • 「アイデア」と「ひと」にかかわる分野、例えば創造・舞台芸術、文学、社会科学などにかかわる職種

 現在、世の中に存在する職業・職種は1万種類以上あるそうですが、上記6つのキャリア・クラスターにすべて分類されています。ただ、単純に1万種類を分類するのでは分かりづらいので、23個の「ジョブファミリー」にまとめて、キャリア・クラスターに対応させています。これを示したのがワールド・オブ・ワークマップです。

 円の周囲には、「ワーク・タスク・ディメンション」の3つの次元が示され、その内側に対応する「キャリア・クラスター」が置かれています。また、30度ごとに書かれているアルファベット(C、R、I、A、S、E)は、パーソナリティタイプの頭文字です。そして、円内に、23のジョブファミリーが置かれています。例えば、“M.エンジニアリング、および関連技術”というジョブファミリーは、右下あたりにあります。「アイデア」と「もの」を扱う仕事であり、「技術」と「サイエンス」の2つのキャリア・クラスターにまたがる位置。パーソナリティタイプとしては、R:Realistic=現実的とI:Investigative=研究的の2つのタイプを持ち合わせている人が向いているということが分かります。

 このように、あなたのパーソナリティタイプに適した職業・職種が明快に対応されているのがホランド理論です。正確にいえば、ホランドが勤務していた「ACT社」がホランド理論を発展させて、ご説明したような一連の体系化を完成させています。

 さて、ホランド理論に照らし合わせたとき、あなたのタイプと現在の職業・職種はマッチしていますか? マッチしていたら幸いですが、もしそうでなければ、今後のキャリア設計を再検討した方がいいかもしれません。

参考文献
▼Making Vocational Choices (third edition)
A Theory of Vocational Personalities and Work Environments
John L. Holland
Psychological Assessment Resources, Inc.
▼キャリア・カウンセラー養成講座 テキスト(日本マンパワー)
▼キャリア・カウンセラー「伯楽」養成講座 テキスト(社会開発研究センター)

筆者紹介

松尾 順(まつお じゅん)

 1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける一方、キャリア理論や心理カウンセリング、コーチングを学び、主に個人を対象とするキャリアアドバイザーとしての仕事を増やしてきている。顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。



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