仮想化というと、サーバの統合による台数削減がまず頭に浮かぶ。しかしこの技術の利用シーンはそれだけでに留まらない。より広い意味でのITコスト削減とITサービスの向上につながるさまざまな用途がある
これまでの連載で紹介してきたように、仮想化は物理マシンの台数削減以外にもさまざまなメリットをユーザーにもたらしてくれる。今回は仮想化によってどのような世界がもたらされるのか、サーバ統合以外にどのような活用方法があるのか、といった点について紹介する。
連載第3回の内容を思い出していただきたい。VMotion、DRS、VMware HAというVMware Infrastructure 3の特長的な機能を紹介したが、これらの機能を併用したシステムは、物理マシンで構築していたシステムと比較すると、インフラというもののとらえ方が様変わりしてしまうということをお分かりいただけるかと思う。
仮想マシンを利用していない環境では、ハードウェアとOS、そしてOSとアプリケーションは極めて密に結合しており、分離してとらえることが難しかった。しかし、仮想化するとこの関係は大きく変化することになる。VMotionは無停止での物理マシン間の移動を可能にする。DRSではそれを自動的に行い、各物理マシンの資源利用率を平準化する。そしてVMware HAでは物理マシンの故障を検出、仮想マシンを別の物理マシン上で迅速に再起動する。仮想マシンはハードウェアに非依存であるため、物理マシンの機種、あるいは製造ベンダさえもまたがってこのインフラを構築することが可能である。
つまりVMware Infrastructure 3の世界では、物理マシン群はプール化された資源として見なすことができるといえる。もはや、どの仮想マシンがどの物理マシン上で動作しているのかといったことは問題ではなくなってしまう。仮想化レイヤが情報資源(=仮想マシン)と計算資源(=物理マシン)を分離してくれる、という言い方もできる。物理マシンが故障したときはVMware HAが回復処理をハンドルするし、全体としての計算資源が不足したときは、新規に物理マシンを準備して追加するだけで後は自動的にワークロードの分散が図られる。
まるで夢のようなシステムだが、すべてVMware Infrastructure 3の機能で現実に構築することが可能である。本連載の以前の回でも記述したが、VMotionは2003年から、DRSとVMware HAは2006年から提供している機能であり、すでに十分に安定したテクノロジーとなっている。
情報資源と計算資源を分離できるということは、設備投資を行う側にとってもさまざまなメリットをもたらす。必要なときに必要なだけシステムを配備していけばよいからだ。最初は小規模で仮想マシンの利用を開始したとしよう。必要に応じて仮想マシンの数をどんどん増やしていくことができる。クローンやテンプレートといった機能を使えば非常に手軽に仮想マシンを増やすことができる。そして物理マシンの、つまり計算資源のキャパシティが限界に近づいたとき、あらためて設備投資を行って物理マシンを追加すればよいのである。
ストレージについても同様の考え方を適用できる。VMware Infrastructure 3はネットワーク化された共有ストレージ装置の活用を強く意識しており、必要なときに必要なだけのストレージ資源を追加していくことができる。最新版であるVMware ESX 3.5では、Storage VMotionと呼ばれる無停止でのストレージ間移動機能も提供しており、より柔軟なストレージ再配置が可能となっている。
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