企業向けメール・サーバとして利用が広がるExchange Server。Exchangeメール・サーバ構築、運用管理の初歩を学ぶ。
Exchange Serverは、電子メール機能をベースにした総合メッセージング・プラットフォームである。いわゆる電子メールはもとより、スケジュール管理やコミュニケーション機能、ToDo管理、ドキュメント共有などの機能を持ち、デスクトップPCやノートPCのほか、インターネットなどを経由したモバイル・アクセスやリモート・アクセス、携帯電話からのアクセスなども可能となっている。特にOffice Outlookと組み合わせた場合にその能力を発揮する。
2007年に出荷が開始されたExchange Server 2007は、従来のExchange Server 2003などと比較すると大幅に機能が強化されている。具体的には、64bit対応によるパフォーマンスの向上やウイルス/スパム対策などのセキュリティ機能の強化、信頼性の向上、コマンドラインベースでの管理を可能にする管理シェルの装備、メールだけでなく、音声やFAXなども統合したユニファイド・メッセージング機能など、多岐にわたる。
Exchange Serverが提供する機能や従来からの強化点などの詳細については以下の記事や、Exchange Serverの製品ページなどをご覧いただきたい。
さてこのような多くの新機能を持つExchange Server 2007であるが、内部的なアーキテクチャも大幅に変更されている。特に「役割ベースの管理モデル」という、いままでのExchange Serverが持つ多くの役割を分割して提供するアーキテクチャは、管理者にとって大きな意味を持つ変更ではないだろうか。
Exchange Serverは非常に多くの機能を持つメッセージング・プラットフォームであるが、これが逆に、システムの複雑性、管理の困難さを招いているともいえる。SMTPやPOP、IMAP、DNSといった比較的シンプルなプロトコルさえ分かっていれば理解/管理できた(UNIXやLinux上などの)インターネット・メール・システムなどと比べると、Exchange Serverシステムは非常に複雑で理解するのが難しいプラットフォームであることは間違いない。電子メールだけでなく、スケジュールやToDo、共有フォルダなど多くの機能を併せ持つシステムなので、複雑になるのは仕方ないだろうが、インターネット・メールを中心的に利用するためのプラットフォームとしてみると、かなり“機能過剰に”感じる管理者は多いだろうし、管理も複雑だと感じる人は少なくないだろう。
だが複雑で高度な機能の集合体であった従来のExchange Serverも、Exchange Server 2007ではその役割をいくつかに分割し、必要な機能を個々のサーバで動作させるといったアーキテクチャになった。図にすると次のようになる。
いくつかのサーバがあるが、それらの機能は次のようになっている。
役割 | 機能 |
---|---|
メールボックス・サーバ | ユーザーのメールボックスを管理する(メールボックス・データベースを管理する) |
クライアント・アクセス・サーバ | POPやIMAP、Webベースのアクセス(OWA:Outlook Web Access)、Exchange ActiveSyncなど、クライアント・コンピュータに対するアクセス機能を提供する |
ハブ・トランスポート・サーバ | Active Directoryのフォレスト間でのメッセージのルーティング(配信、転送)を担当する |
エッジ・トランスポート・サーバ | 組織の境界領域(インターネットとの境など)に配置され、セキュリティを最大限確保しつつ、境界領域間でのメッセージのルーティングを担当する |
ユニファイド・メッセージング・サーバ | ボイス・メッセージングやFAXなど、テフォニー・ネットワークと電子メールなどを統合して扱うようにする |
Exchange Server 2007サーバの担当する5つの役割 Exchange Server 2007の新しいアーキテクチャでは、サーバの機能をこの5つに分け、必要な役割だけをインストールできる。また64bit化することにより、より多くのメモリを使って、大規模なシステムでもパフォーマンスが向上している。 |
従来のExchange Serverでは、これらの機能がすべて1つになっていたといえば、その複雑さ、管理の大変さが理解できよう。Exchange Server 2007では、必要な機能だけを取り出して、個々のサーバに配置することができる。必要な機能だけをインストールしてシステムを運用できるため、システムが複雑になりすぎるのを避けることができるし、管理やトラブルシューティングなどでも余計なトラブルを抑えることができる。また64bit専用アプリケーションとすることにより、パフォーマンスも向上している(32bit版では4Gbytes程度のメモリしか利用できなかったが、64bit版では16Gbytesとか32Gbytesものメモリを利用できる)。
本連載では、新しいExchange Server 2007が持つ数々の機能のうち、主に(メール系の)システム管理者から見た機能/管理方法をメインに解説していく予定である。Exchange Server 2007を総合メッセージング・プラットフォームとして最大限に活用し、業務の効率を上げたいという要望もあるだろうが、まずはインターネット電子メールのプラットフォームとして活用したいという組織も少なくないだろう。クライアントは必ずしもOffice Outlookばかりというわけではなく、例えば、取りあえずはPOPやSMTP、IMAPなどのプロトコルで接続できれば十分というケースだ(OutlookはExchange Server独自のプロトコルをサポートするが、一般的なPOP/SMTPもサポートするので、どちらのプロトコルでもメール・クライアントとして利用できる)。このような運用の場合、Exchange Server 2007の管理者がしなければいけない作業は何か、日常の管理業務はどうするのか、などについて数回に渡って解説する。今回はExchange Server 2007をインストールしてみる。メールボックスの管理や基本的なルーティングの設定、バックアップやリストア、PowerShellによる管理作業などは次回以降で解説する。
もちろんOutlookやOWAなどを活用するための方法も解説するが、ユーザーの側から見たExchange Server 2007の機能については別の機会に譲るので、あらかじめご了承願いたい。またExchange Server 2007の持つさまざまな新機能や高度な使い方についても(あまり)触れないので、先ほどの記事やExchange Server 2007の製品紹介ページなどを参照していただきたい。
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