組み立て型製造業、今後の要はサービスにあり味わい深いシステムを開発するための業界知識(3)(2/3 ページ)

» 2008年11月18日 00時00分 公開
[山本英仁アクセンチュア]

組み立て型製造業のシステム

 組み立て型製造業のシステムは、企画、開発から量産まで、すべての過程を包括的に管理するPLM(Product Life Cycle Management)、調達から販売までのプロセスを支援するSCM(Supply Chain Management)、マーケティングからリサイクルまで顧客との関係を支援するCRM(Customer Relationship Management)、そして、財務・会計やHRなどの管理系の4つに大別できます。ここでは、管理系を除いた3つの流域について簡単に説明します。

 ちなみにこの分類は便宜的な大くくりと考えるべきです。実際には各業務が複雑に関連しており、各分野の業務連携が弱いケースはしばしば課題となります。例えば、営業と生産の連携が悪ければ、売れない在庫を生み出す結果になるだろうし、設計と生産の連携が悪ければ、量産立ち上げがうまくいかないかもしれません。専門的な効率性を高めるための機能と、全体最適を高めるための機能間の連携でどうバランスを保つかが、システム設計においても重要な考慮点となります。

グローバル化で、高度な擦り合わせをサポートするPLM

 日本の製造業の強みの1つとして、擦り合わせ型の製品開発が挙げられます。これは、自社の組織内のみならず取引先とも固定的な責任範囲を定め、完全分業としないところに特徴があります。協力し合い、お互い責任範囲やプロセスを重ね合わせながら、シームレスに継続改善を進めていくのです。例えば、「購買部門が音頭を取り、製品エンジニアと生産エンジニアが協力して金型の原価低減を推進する」「サプライヤの生産エンジニアが試作初期段階で設計についてテストし問題を組み立て、OEM側にフィードバックする」などです。

 これらは、日本人同士の閉じた世界では非常に効率的に行われますが、暗黙知やコンテキストへの依存度が高いため、ひとたび外国人がコミュニケーションに加わると透明性が低いなどの不満が生じることが多くなります。今後、生産や販売のみならず、設計開発機能についてもグローバル化を進めていくためには、PLMによって、海外拠点も含めた情報共有を促進していくことが必要となるでしょう。

グローバル・サプライチェーンマネジメント

 SCMは組み立て型製造業の特徴ともいえる領域です。企業によって差はありますが、比較的完成度が高いといえます。ただし、システム刷新はあまり進んでいるとはいえません(これも企業によって差はありますが)。詳細なビジネス要件を長年にわたって反映させてきた結果、使い勝手のよいシステムとなった代わりに、メンテナンスが困難で、減価償却が完了しているにもかかわらず運用コストはさほど低下していないといった事態が多いのもこの業界の特徴です。

 そのため、システムの刷新を狙ってERPを導入する際、現場ユーザーから大きな反発の声が上がり、膨大な追加開発を必要として行き詰まることがあります。

 SCMの今後のチャレンジとして、グローバル相互供給ネットワークの推進が挙げられます。従来、自動車に代表される組み立て型製造業は、構成品の重量や体積から輸出入は船便とならざるを得ず、地域を超えた部品やコンポーネントの相互供給が活発には行われてきませんでした。これに対して、多極化する世界の環境下では、地域をまたいで各工場、各サプライヤ、各販売拠点を直結させ需給調整を行う、グローバル供給ネットワークの必要性が、いままで以上に高まっていくと考えられます。

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